POLICY COLUMN ・ LEGISLATIVE BRANCH GOVERNANCE

「国立国会図書館は国家一種相当」は本当か — 城山英明の本が見ていなかった角度と、実在しない「両院合同図書館運営委員会」

行政学者・城山英明が編んだ『中央省庁の政策形成過程―日本官僚制の解剖』(1999年)とその続編(2002年)は、通産省・大蔵省・外務省など日本の主要な省庁が実際にどう政策を作っているかを、章ごとの実証研究として積み上げた本として知られています。この2冊はNDLにも触れていますが、扱いは「立法補佐機関」という括りの中の一機能にとどまり、NDL独自の採用倍率や組織としての特異性という角度からは論じていません。NDLは独自の採用試験を実施しており、総合職の倍率は近年70倍前後——「旧国家公務員採用I種試験(現・国家総合職)相当」という見方が浮かんでもおかしくない数字です。省庁の分析対象になっていないのに、入り口だけは省庁並みに狭い。ならばNDLにも固有の「政策形成過程」があるはずではないか。一次資料に当たって見えてきたのは、この直感の一部が裏付けられ、一部が倍率の分母を取り違えた数字のトリックだったという結果と、NDL自身が2020年代に入って実際にくぐった、権利者団体との調整を伴う政策形成の実例でした。

本記事は、城山英明・鈴木寛・細野助博編著『中央省庁の政策形成過程―日本官僚制の解剖』(中央大学出版部、1999年、第11章「国会の政策形成過程と立法補佐機関」を含む)・城山英明・細野助博編著『続・中央省庁の政策形成過程―その持続と変容』(同、2002年)、国立国会図書館法・国家行政組織法・財政法の条文、国立国会図書館・文化庁・人事院の公表資料、国会会議録検索システムなどを基に、当サイト編集部が整理したものです。日付・数値は2026年8月10日時点。

0件 「NDL総合職は旧国家一種相当」と明言したNDL自身・人事院・主要予備校の資料の件数(2026年8月時点で確認できた範囲)
68.75倍 NDL総合職試験の倍率(2025年度、対第1次受験者)。国家総合職(6.2倍、合格者数ベース)とは倍率の分母の定義が異なる
30.3万人 個人向けデジタル化資料送信サービスの累計登録利用者数(2024年度末)。開始から2年半余りで到達
AT A GLANCE

先に判定

01 · THE SERIES

城山英明の「中央省庁の政策形成過程」とは何か

「城山英明の中央省庁の政策形成過程シリーズ」は、正確には2冊の書籍を指します。正編『中央省庁の政策形成過程―日本官僚制の解剖』(城山英明・鈴木寛・細野助博編著、中央大学出版部、1999年1月、365ページ)と、続編『続・中央省庁の政策形成過程―その持続と変容』(城山英明・細野助博編著、同、2002年5月、397ページ)です。出版元は東京大学出版会ではなく中央大学出版部で、日本計画行政学会の「計画行政叢書」の1冊として刊行されました。

正編の4類型による分析枠組みは、序章「本書の目的と方法」(序‑7〜11頁)で著者ら自身が説明しています。行動が能動的か受動的か、官房系統組織による定期的な統制が効くかアドホックな調整で決まるかという2つの軸から、企画型・現場型・査定型・渉外型の4類型を導き、第2部以降で各省庁をこの類型に沿って配置する構成です。

類型扱う章
第1部理論的視角第1〜3章(政治学・経済学・行政学からみた官僚制の意思決定)
第2部企画型第4章 通産省/第5章 国土庁
第3部現場型第6章 建設省/第7章 厚生省
第4部査定型第8章 総務庁・行革審議機関/第9章 大蔵省
第5部渉外型第10章 外務省
第6部非省庁第11章 国会の政策形成過程と立法補佐機関

出典: 城山英明・鈴木寛・細野助博編著『中央省庁の政策形成過程―日本官僚制の解剖』(中央大学出版部、1999年)序章「本書の目的と方法」序‑7〜11頁。目次の概要は学術書評誌『公共選択の研究』第33号(1999年)掲載の和田淳一郎氏の書評でも確認できます。

国立国会図書館という章タイトルは、正編のどこにもありません。ただし最も近い第6部・第11章「国会の政策形成過程と立法補佐機関」(284頁〜)を実際に確認すると、第2節(4)「国立国会図書館調査及び立法考査局」という独立した項があり、国立国会図書館法第15条に定められた調査局の3つの法定職務——①両院委員会への法案の分析・進言、②立法資料の収集・分類・提供、③議案起草の補佐——を具体的に説明しています。「立法補佐機関」は制度上、衆議院法制局・参議院法制局・国立国会図書館調査及び立法考査局の3機関を指すのが通例で、この章は実際にその3機関を並べて扱っており、NDLはそのうちの1つとして相対化される構成です。つまり城山らの本は、NDLを完全に見落としているわけではなく、立法補佐機関という括りの中の一機能として具体的に論じています——ただし本記事がこの後検証する採用倍率の異常や組織としての独自性という角度には触れていません。

続編(2002年)は科学技術庁・環境庁・運輸省・郵政省・農林水産省・文部省・自治省・法務省・防衛庁という9省庁を扱う構成で(原典の目次で確認)、いずれも内閣の統轄下にある行政機関です。国立国会図書館を扱う章が追加されている形跡はありません。

02 · THE DEFINITION

なぜNDLはそもそも対象になりえないのか

NDLが城山らの分析対象に入っていないのは、取材や執筆の見落としというより、「省庁」という言葉の法的な定義そのものの問題です。国家行政組織法第1条は、同法が適用される「国の行政機関」を「内閣の統轄の下における行政機関」と定めています。第3条2項・3項も「行政組織のため置かれる国の行政機関は、省、委員会及び庁とし」「省は、内閣の統轄の下に」置かれると規定します。城山らの本が扱う通産省・国土庁・建設省・厚生省・総務庁・大蔵省・外務省、続編の科学技術庁以下9省庁は、いずれもこの定義に当てはまる、内閣の統轄下の機関です。

一方、国立国会図書館は国会法第130条・国立国会図書館法に基づいて設置される、国会に属する機関です。館長の任命権者は内閣ではなく両議院の議長(後述)。行政学が「中央省庁の政策形成過程」という枠組みで分析する際、NDLがそこに含まれないのは、対象の選定基準そのものがNDLを最初から除外する形で引かれているためです。

03 · ORIGINS

設立の経緯 — GHQ、二つの前身、モットー

国立国会図書館法は1948年2月9日に公布・即日施行(法律第5号)。同法は附則で、その前年に制定されていた別の「国会図書館法」(昭和22年法律第84号)を廃止すると定めています。つまりNDLには、1897年発足の帝国図書館の系統と、1947年に衆参各院が個別に持っていた「国会図書館」の系統という、二つの前身があり、1948年の法律でこれらが統合されました。開館は同年6月5日、当時の赤坂離宮(現・迎賓館)です。

設計には占領期のGHQが深く関与しています。1947年12月14日、米国議会図書館(Library of Congress)副館長のヴァーナー・W・クラップと、米国図書館協会東洋部委員長のチャールズ・H・ブラウンが来日し、参議院図書館運営委員長・羽仁五郎らと新図書館の基本構想を協議。1948年1月6日にはクラップ・ブラウンによる勧告が出され、同年7月にはGHQ特別顧問のロバート・B・ダウンズ(イリノイ大学図書館長)が来日し、9月に組織運営や蔵書構築の方針を示す報告書を提出しています。米国議会図書館をモデルにした設計だったことは、NDL自身の沿革ページでも一貫して説明されています。

東京本館の中央出納台に刻まれた「真理がわれらを自由にする」は、新約聖書ヨハネによる福音書8章32節が出典です。発案者はクラップ・ブラウンと直接協議した羽仁五郎で、設置は本館第一期工事の1961年、日本語部分の筆跡は初代館長・金森徳次郎(元法制局長官、憲法担当国務大臣も務めた憲法学者)によるものです(国立国会図書館レファレンス協同データベースで確認)。

04 · GOVERNANCE

統治の内側 — 館長人事と、実在しない「合同委員会」

NDLの館長人事は、行政省庁の事務次官人事とは制度の作りが根本的に異なります。国立国会図書館法第4条は「館長は、両議院の議長が、両議院の議院運営委員会と協議の後、国会の承認を得て、これを任命する」「館長は、職務の執行上過失がない限り在職する」「政治的理由により罷免されることはない」と定めます。任期の定めがない、事実上の終身制に近い身分保障です。歴代館長は、初代・金森徳次郎から続く時期は衆参の事務総長経験者が中心でしたが、2007年就任の第14代・長尾真氏(前京都大学総長)以降、学識経験者の登用が続いています。現館長・倉田敬子氏(第18代、2024年4月1日就任)は前職が慶應義塾大学文学部教授で、NDL自身の発表で確認できます。

NDLの監督機関としてしばしば「両院合同図書館運営委員会」という呼び方を見かけますが、この名称の単一の機関は、1948年の制定時から現在に至るまで法令のどこにも存在しません。1948年原始法第11条は「両議院の図書館運営委員会は、少くとも六箇月に一回以上これを開会し……各議院の図書館運営委員長は前項の審査の結果をその院に報告する」と定めており、「合同して」という文言はなく、各院が別々に開き、別々に自院へ報告する規定です。この各院別個の委員会は1955年に議院運営委員会へ統合され、現在は「図書館運営小委員会」として存置されています。

「両院合同図書館運営委員会」という名前の機関は、法令のどこにも存在しない。

国立国会図書館法 第11条(1948年原始法・現行条文の対照)より

これとは別に、NDL法第12条・第13条は、真に「合同」と呼べる機関を規定しています。連絡調整委員会——委員は衆議院議院運営委員長・参議院議院運営委員長・最高裁判所長官が任命する最高裁判所裁判官1名・内閣総理大臣が任命する国務大臣1名の4名で、国会・行政・司法の三権の代表がそろう唯一の機関です。権限は「国会並びに行政及び司法の各部門に対する国立国会図書館の奉仕の改善につき勧告する」こと。ただし、公開されている記録の範囲では、この委員会がNDLの「草創期を過ぎた」とされる1961年を最後に、勧告を行った記録が見当たりません。三権の代表による合同機関という制度上の建てつけは1948年から変わっていない一方、その勧告権が実際に行使された記録は、少なくとも本記事の調査範囲では65年間確認できないということです(この点はWikipediaの記述に基づくもので、NDL自身の一次資料や学術論文での直接の裏付けには至っておらず、確度は中程度として扱います。詳しくは留意点を参照)。

05 · THE BUDGET

財務省の査定を経ない予算

NDL法第28条は「国立国会図書館の予算は、館長がこれを調製し、両議院の議院運営委員会に提出する。委員会はこの予算を審査して勧告を附し、又は勧告を附さないで、両議院の議長に送付する」と定めます。館長が予算案を作り、まず国会内部の手続きを通す——この点も、各省庁が財務省へ概算要求を出し査定を受ける通常の予算編成とは経路が異なります。

根拠は財政法第19条の、いわゆる「二重予算」制度です。条文はこう定めています。

「内閣は、国会、裁判所及び会計検査院の歳出見積を減額した場合においては、国会、裁判所又は会計検査院の送付に係る歳出見積について、その詳細を歳入歳出予算に附記するとともに、国会が、国会、裁判所又は会計検査院に係る歳出額を修正する場合における必要な財源についても明記しなければならない。」

財政法(昭和22年法律第34号)第19条

日本国憲法第86条により予算は内閣が作成し国会に提出する建前ですが、国会(NDLはその一部である「国会所管」に含まれます)・裁判所・会計検査院の3機関の見積りに限っては、内閣が査定で金額を削っても、削った事実と金額を予算書に明記しなければならず、国会側は不足する財源さえ示せば元の金額に戻す修正ができます。行政各省庁の概算要求が財務省査定でそのまま圧縮されていくのとは、扱いが異なるということです。

令和8年度(2026年度)予算金額
総額20,808,767千円(約208.1億円)
うち国立国会図書館費19,984,808千円
 うち人件費10,582,766千円
 うち資料費2,227,527千円
うち施設費823,959千円

出典: 国立国会図書館「令和8年度国立国会図書館予算」(ndl.go.jp)。人件費が図書館費の過半(約53%)を占める。

06 · THE EXAM

「国家一種相当」を検証する

NDLの職員採用試験は、現行では総合職・一般職など複数の区分に分かれていますが、NDL公式Q&Aは「総合職又は一般職に限定された業務はありません……どちらの採用試験で採用された場合も調査業務・司書業務・一般事務の様々な業務に携わります」と明言しています。違いは配属業務ではなく、入口の俸給の級だけです。

NDLは2011年度以前、この区分を人事院試験と同じ「一種・二種・三種」と呼んでいました。人事院が2012年度に「総合職・一般職」へ改称したのと同じタイミングで、NDLも追随して改称しています。分類ラベルの物差しを国家公務員試験に合わせてきた形跡はこの通りありますが、これは名称の模倣であって、難易度が同格だと明言した記録ではありません。

NDLは統計ページで直近3年分しか公表しないため、Wayback Machineで過去のアーカイブを遡り、総合職の倍率(対第1次受験者)の推移を復元しました。

年度区分申込者第1次受験者採用者倍率(対受験者)
平成23(2011)一種755人627人3人209.0倍
平成24(2012)総合職
(名称変更)
755人585人4人146.3倍
平成28(2016)総合職531人452人3人150.7倍
令和3(2021)総合職363人295人3人98.3倍
令和7(2025)総合職373人275人4人68.75倍

出典: 国立国会図書館「職員採用試験実施結果」現行版・Wayback Machine保存版(2014・2018・2019・2022年採取分)。一般職の倍率は同期間に61.9倍(2015年度)→32.1倍(2025年度)程度まで低下傾向。申込者数自体が2011年度の約2,000人(旧一種+二種)から2025年度の984人へほぼ半減しており、倍率低下の一因は応募者側の減少とみられる。

倍率だけを見ると、NDL総合職(直近70倍前後)は国家総合職(6〜7倍)の10倍以上に見えます。ただし、この2つの倍率は分母の定義が違います。人事院が発表する国家総合職の倍率は「合格者数」を分母とし、この「合格者」はまだゴールではなく、この後さらに各府省庁への官庁訪問という別の選考を経て初めて採用に至ります。一方NDLの倍率は「採用者数」——選考が完全に終わった最終確定人数を分母にしています。

試験倍率の分母計算倍率
NDL総合職(2025年度)採用者数(最終確定人数)275人÷4人68.75倍
国家総合職(2026年度春・受験倍率)合格者数
(官庁訪問による選考はこの後)
9,940人÷2,021人4.9倍
国家総合職(同・申込倍率)合格者数12,486人÷2,021人6.2倍
国家総合職(概算)採用予定数
(約740人。NDLと同じ「最終枠」に近づけた概算)
12,486人÷740人約16.9倍

出典: 人事院「令和8年度国家公務員採用総合職試験」発表資料。採用予定数は法文系・理工系・農学系の合計値で、公式統計にある「合格者数」の対応物として使う編集部による概算(両者を直接並べた公式資料はない)。

分母を同じ土俵に揃えても、NDL総合職はなお国家総合職の4倍前後狭い。ただし「100倍だから7倍の14倍」ではない。

NDL・人事院の公表データより編集部算出

採用予定数を分母にした概算(約16.9倍)と比べても、NDL総合職(68.75倍)は約4倍狭い計算になります。「入り口の狭さ」自体は数字として本物ですが、「旧国家一種相当」と明言した一次資料・大手予備校資料は、NDL自身・人事院・伊藤塾など複数の情報源を確認した限り見当たりませんでした。伊藤塾は「見過ごされやすい試験の一つ。倍率は高く、試験の難易度は決して低くはありません」と評していますが、国家一種(現・国家総合職)との同格を述べたものではありません。

07 · THE CASE STUDY

NDL自身の政策形成過程 — 個人向けデジタル化資料送信サービス

省庁を対象にした城山らの分析枠組みをそのままNDLに当てはめることはできません。ただし、NDL自身が近年くぐった意思決定のうち、複数の利害関係者の調整を経て制度が変わったという意味で、政策形成過程と呼べる実例が見つかりました。個人向けデジタル化資料送信サービス(通称「個人送信」)——NDLが所蔵する絶版等資料をデジタル化し、登録さえすれば全国どこからでも個人の端末で閲覧・複写できるサービスです。

FIG. 01 — 個人送信サービスに至る政策形成過程(2020〜2022年)
  1. 2020年5月6日時点新型コロナウイルスの影響で全国の図書館の92%が休館(saveMLAK調査)。日本出版者協議会(4月28日)・「図書館休館対策プロジェクト」(5月7日)・日本歴史学協会(5月23日)から、デジタル化資料の公開範囲拡大を求める要望が相次ぐ
  2. 2020年5月20日衆議院文部科学委員会で中川正春委員が質疑。文化庁が「制度的な対応についても検討していく必要がある」と答弁
  3. 2020年5月27日政府知的財産戦略本部「知的財産推進計画2020」に、図書館の権利制限規定のデジタル・ネットワーク対応が明記される
  4. 2020年8〜11月文化審議会著作権分科会法制度小委員会「図書館関係の権利制限規定の在り方に関するワーキングチーム」(座長:上野達弘・早稲田大学教授)で審議
  5. 2021年2月ワーキングチーム報告書公表。改正法案の土台となる
  6. 2021年3月5日著作権法改正案、閣議決定・国会提出
  7. 2021年4・7・11月「国立国会図書館による入手困難資料の個人送信に関する関係者協議会」(文化庁・NDL共催)を計3回開催
  8. 2021年5月18日/26日衆院本会議・参院本会議とも全会一致で可決・成立(6月2日公布、令和3年法律第52号)
  9. 2021年12月3日関係者協議会が合意文書を取りまとめ(無償での運用を確認)
  10. 2022年5月1日/19日改正法施行、個人向けデジタル化資料送信サービス開始

改正の柱は2つに分かれます。改正法第1条(NDLによる絶版等資料の個人送信、2022年5月1日施行)と、改正法第2条(図書館等公衆送信、大学・公共図書館が著作物の一部をメールなどで送信する制度、2023年6月1日施行)です。補償金が発生するのは後者だけ——個人送信は無償で設計されており、この点はNDLが公式に取りまとめた合意文書でも確認できます。同文書は原本を直接確認しましたが、構成団体の実名(日本文藝家協会等)は記載されておらず、「関係者協議会」とのみ表記されています。確認できた唯一の具体的な懸念は、海外在住者への送信拡大について「その適法性を担保する方策を慎重に検討するよう一部構成員から意見が出された」というもので、これを受けて海外在住者は現在も対象外のまま据え置かれています。

絶版等資料かどうかの判定手続き自体は、2014年開始の図書館向け送信サービスから引き継いだ既存ルール(NDLの調査→出版関連団体・出版者・著作権者による年1回の除外申出→随時の除外申出)で、個人送信固有の新しい対立点ではありません。城山らが省庁について整理した「渉外型」(利害の異なる相手との交渉が軸)に近い性格の意思決定でしたが、対立の記録として確認できたのは前述の海外配信を巡る一点にとどまり、大きな対立があったのか、単に本記事の調査で見つけられなかっただけなのかは判別できません。

年度登録利用者(年度内増)累計登録者(年度末)年間閲覧件数
令和5年度(2023)96,455人206,488人766万4,013件
令和6年度(2024)96,863人303,351人1,066万1,820件

出典: 国立国会図書館年報 令和5・6年度版(3.2.4節)。令和7年度分は本記事執筆時点(2026年8月)で未公表。

もう一つの参考事例として、機能が重複していた「国立国会図書館オンライン」と(旧)「国立国会図書館サーチ」を統合した新「国立国会図書館サーチ」(2024年1月5日公開、統合方針の公表は2023年8月18日)があります。NDL職員自身の実名解説記事によれば、統合の障害は2019年公開の「ジャパンサーチ」により旧NDLサーチが書籍等分野に特化できる見通しが立ったことで下がり、具体的な検討は2022年冬頃から始まったとされています。予算面では、令和2年度補正予算で約44億円のデジタル化予算が追加措置されたことを、NDL館長自身が2021年5月25日の参議院文教科学委員会で答弁しており、これも議院運営委員会の承認プロセスを経た組織的意思決定の一例です。

SOURCES

一次情報リンク集

⚠ 留意点

FAQ

Q. 城山英明の本に国立国会図書館の章が本当にないのですか?
「国立国会図書館」という独立した章タイトルはありません。ただし最も近い第11章「国会の政策形成過程と立法補佐機関」(284頁〜)には、国立国会図書館法第15条に基づく調査及び立法考査局の法定職務を具体的に説明する項があり、NDLは衆参の法制局と並ぶ立法補佐機関3機関の1つとして扱われています。見落とされているわけではなく、本記事が検証する採用倍率や組織としての独自性という角度では論じられていない、というのが正確なところです。続編(2002年)は科学技術庁・環境庁など9省庁を扱う構成(原典の目次で確認)で、いずれも内閣の統轄下にある行政機関のため、NDLを扱う章はありません。

Q. 国立国会図書館はなぜ「省庁」に分類されないのですか?
国家行政組織法は「省庁」を「内閣の統轄の下における行政機関」と定義しています(第1条・第3条)。国立国会図書館は国会法第130条・国立国会図書館法に基づき国会に属する機関で、館長も内閣ではなく両議院の議長が任命します。行政学が「省庁の政策形成過程」を分析する際、NDLが対象に含まれないのは見落としではなく、制度の定義上そもそも対象の外にあるためです。

Q. NDLの職員試験は本当に「旧国家一種相当」ではないのですか?
NDL自身、人事院、主要な公務員試験予備校のいずれについても、そう明言した資料は見当たりませんでした。NDL総合職の倍率(対第1次受験者)は2025年度で68.75倍と高い一方、国家総合職の倍率(対合格者数)は6.2倍です。ただしこの2つは分母の定義が違います——国家総合職の「合格者」はこの後さらに各府省庁への官庁訪問という選考が続くため、まだ採用者ではありません。国家総合職の採用予定数(約740人)を分母にした概算に置き換えると倍率は約16.9倍になり、これと比べてもNDL総合職はなお4倍前後狭き門ですが、「100倍だから7倍の14倍難しい」という単純な比較は誤りです。

Q. 「両院合同図書館運営委員会」は本当に存在しないのですか?
その名称の単一の機関は、1948年の制定時から現在まで法令のどこにも存在しません。実際の統治構造は2層です。1つは、衆参各院がそれぞれ別個に開く委員会(1955年に議院運営委員会へ統合、現在は「図書館運営小委員会」)による並行審査。もう1つは、衆参の議院運営委員長・最高裁判所裁判官1名・国務大臣1名という三権代表4名からなる真の合同機関「連絡調整委員会」(国立国会図書館法第12・13条)で、国会・行政・司法の3部門に対するNDLの奉仕改善を勧告する権限を持ちます。ただしこの委員会の権限は勧告に限られ、公開されている記録の範囲では、NDLが「草創期を過ぎた」とされる1961年を最後に勧告が行われた記録が見当たりません(この点の一次資料での直接の裏付けは本記事の調査範囲では確認できておらず、確度は中程度です)。

Q. 結局、NDLに「政策形成過程」と呼べる実例はあったのですか?
ありました。2022年5月に始まった「個人向けデジタル化資料送信サービス」は、2020年のコロナ禍による図書館休館(全国の92%が休館)をきっかけに、出版・図書館関係団体からの要望、文化審議会著作権分科会のワーキングチームでの審議(2020年8〜11月)、権利者団体を含む関係者協議会の開催(2021年に計3回)を経て、2021年の著作権法改正(衆参とも全会一致で成立)にたどり着いた経過をたどっています。城山らが省庁について整理した「渉外型」「査定型」のような単純な類型化はできませんが、複数の利害関係者の調整を経て制度が変わったという意味では、同種の政策形成過程の実例と言えます。サービスは2024年度末までに累計30万3,351人が登録し、年間1,066万件超が閲覧されています。

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本記事は国立国会図書館・文化庁・人事院・国会会議録検索システム・e-Gov法令検索等が公開する一次資料を基に当サイト編集部が整理した一般的な情報提供を目的としており、特定の政治的立場を主張するものでも、金融商品の購入・売却を推奨・勧誘するものでもありません。検証結果は公開時点の資料に基づくものであり、記載内容は作成時点のものです。最終的な判断はご自身の責任で行ってください。

出典:国立国会図書館、文化庁、人事院、国会会議録検索システム、e-Gov法令検索、J-STAGE(2026年8月10日時点)。