投資の考え方 検証シリーズ

定石を、出典と実データまで遡って採点する

投資の世界には広く信じられている「型」があります。コアは7割、高配当10銘柄を機械的に買え、ゼロクーポン債なら利回りを固定できる、原油安なら航空株——本シリーズは、そうした定石の出典を一次資料まで遡り、成績を実データで測り直し、判定を一言で言い切る検証記事です。

共通の作法は下記の4つ。出典は一次資料まで遡り、消えていればWayback Machineで原文を確保し、学術文献はDOI付きで引用し、売買の推奨はしません——検証の結果「定石が負けた年」もそのまま書きます。

01

全数取得

対象は自分で選ばず、開示制度・検索条件から機械的に取得する。

02

β補正

市場感応度で補正——補正前の数字は市場全体の値動きと見分けがつかない。

03

プラセボ検定

同じ銘柄で日付をずらした「何も起きていない日」と比較して確かめる。

04

時代分割

一つの局面だけで言い切らず、時代を分けても崩れないかを見る。

全48本 — 定石と判定

第1号CORE-SATELLITE
現行8社の相場観、コア比率の目安
7〜9割

コア・サテライト投資の比率を検証 — 「コア70%」の出典を確かめに行ったら、消えていた

判定:一律の正解はない。「約70%」の出典(BlackRock豪州)は削除済みでアーカイブのみ。バンガードの旧ガイドはそもそも比率を推奨しておらず、現行8社の相場観はコア7〜9割。理論的にも比率はリスク許容度から導かれる変数。

第2号DOGS OF THE DOW
2022年の「犬」10銘柄のうち、既にダウ指数を去った数
4銘柄

ダウの犬と子犬の現在地 — 高配当10銘柄はAI相場に勝てたか

判定:勝ったり負けたりの往復。実測で2022年はS&P500に約20pt勝ち、2023〜24年は完敗、2025年は再勝利。株価で絞る「子犬」は2022年に▲17.5%。最大のリスクは減配より「ダウからの退出」で、2022年の犬4銘柄が既に指数を去った。

第3号TREASURY STRIPS
2022年実例の円建て損益(27円の円安を織り込んでもなお)
▲2割

米国ゼロクーポン債の現在地 — 「30年で約4倍」の仕組みと、固定されないもの

判定:「利回り固定」は満期保有前提でのみ真。2.88%で買われた2022年の実例は、27円の円安をもらってなお円建て▲2割(途中の時価は固定されない)。ただし満期の損益分岐は1ドル60円。いま始めるなら単価23前後・約4.2〜4.3倍・分岐38円前後。

第4号OIL PLAYBOOK
2020年、原油マイナスでも航空株は下落
▲63%

原油安の投資定石を検証する — 「安くなったら航空・50ドル割れで逆張り」は1勝2敗だった

判定:定石より先に「なぜ下がったか」の診断。供給型の2014-16年は航空最高益で成立、需要型の2020年は原油マイナスでも航空▲63%、2025-26年は「50ドル」が来ないまま急騰へ。学術的裏付けはKilian(2009)。

第5号DCF
KDDIの理論株価、βと成長率の前提による散らばり幅
1,766〜4,793円

企業価値はどう計算するか — 無料ツール4つでDCFを一周する

判定:DCFは正解を出す機械ではなく、市場の前提を逆算する道具。バフェットコード・資本コスト(costofcapital.jp)・IR Bank・EDINETでKDDIの理論株価まで実演。基準ケース2,942円は市場とほぼ一致、ただしβと成長率で1,766〜4,793円まで散る。

第6号SELL IN MAY
直近10年、夏が冬に勝った回数(日米とも)
9勝1敗

セルインメイは本当か — 季節性は実在した。戦略にした人から負けた

判定:現象は本物、戦略は不成立。冬+6.95% vs 夏+2.08%(S&P500・1950年以降)は実在するが、直近10年は日米とも夏が9勝1敗で逆転。33年切替の実測は買い持ちの29%、本場のETF(SZNE)は2026年5月に清算された。

第7号NIFTY FIFTY
1972年PERとその後29年リターンの相関係数
r=−0.56

Nifty Fifty は本当に没落したのか — 生き残った20社だけを追っても、指数に負けた

判定:高いPERで買った分だけ、きっちり負けた。1972年のPERが10ポイント高いごとに、その後29年の年率リターンは約2ポイント低い(r=−0.56)。両リスト共通24銘柄は29年で指数の54%。倒産組を除いた生存20社を2026年まで追っても年率8.62%対9.94%で届かない。

第8号DEFENSIVE STOCKS
震災前日の東電株100万円、15年後の評価額(配当込み)
24.0万円

ディフェンシブ株はなぜ一撃で崩れるのか — 電力10社に分けても、元本回復に13年かかった

判定:分ける単位は銘柄ではなく、リスクの源。震災前日の100万円は東電単独で24.0万円、電力10社に等金額でも102.2万円、TOPIXなら581.6万円。2012年度は電力9社が赤字で黒字は沖縄電力だけ。JPモルガンによれば暴落銘柄の54%はピーク時に黒字だった。

第9号BIOTECH
日本の創薬ベンチャー19社中、10年でTOPIXを上回った数
0銘柄

「バイオ株は上がらない」は本当か — 分かれ目は治験ではなく、収益だった

判定:セクターではなく、収益の有無と入り時で決まる。米国XBIは設定来20年で年率11.74%とS&P500(10.98%)に勝つ一方、日本の創薬ベンチャー19銘柄は10年で▲61.9%・中央値▲84.9%・TOPIX超えは0銘柄。Phase Iから承認まで7.9%、アンジェスの株数は7.4年で4.35倍、ARKGの純資産はピークの11%。

第10号CYBER ATTACK
サイバー攻撃公表日、米国48社の株価反応(中央値)
▲0.8%

サイバー攻撃の株価急落は、ほとんど起きていない — 日米137社の実測

判定:押し目買いは成立しない。拾えるほどの急落が起きていない。公表初日は日本89社が▲0.7%・米国48社が▲0.8%、公表前終値に戻るまで両国とも中央値4日。母集団はSEC 8-K Item 1.05の全52社と適時開示221,792件から抽出した97社。日本の適時開示は初報より最大15日遅れ、アサヒGHDは事案の適時開示自体を出していない。

第11号SHAREHOLDER MIX
個人株主比率上位30社のβ(外国人上位は0.93)
0.66

下げ相場で個人株主が多い株が勝つのは、資金移動ではなくβが原因だった

判定:資金は移動していない。ベータが0.66だというだけ。日経225の全社を有価証券報告書の所有者別状況で二分すると、個人比率上位30社のβは0.66・外国人上位は0.93。市場が2%超下げた日の差は+0.80pt、2%超上げた日は▲0.87ptで符号が反転する。5年7カ月の年率は20.4%対25.0%。

第12号MONSOON & GOLD
降雨と金価格、5つの窓すべてのR²(54年実測)
0.06以下

インドの雨は金の需要を動かす。ただし価格には届かない — 54年の実測

判定:需要は動く。価格は動かない。インド気象局の公式降雨データとLBMA金価格で1972年からの54回を測ると、祝祭シーズンを含む5つの窓すべてでR²は0.06以下、符号はむしろ逆。その逆符号も少雨年が1970年代に偏っただけの見せかけで、2000年以降は消える。雨が動かす需要は年13.5トン、世界は1日に3,273トンを売買している。

第13号RICE & STOCKS
米価上昇局面、川上(卸)4社の株価成績
+202.5%

米価が上がって儲かったのは、コメを売る側だけだった — 上場3,890社の全数走査

判定:「コメ関連銘柄」はひとつではない。売る側は3倍、買う側は指数に負けた。有報3,890社を全数走査して母集団を機械的に作成。米価2.7倍の局面で川上(卸)4社は+202.5%、川下(米菓等)6社は+41.1%でTOPIXの+50.9%にも届かない。木徳神糧+385.3%に対し亀田製菓は▲8.9%。下落期は10社中0社しかTOPIXに勝てなかった。

第14号ROTATION OR BETA
市場が動かない1,342日の、ヘルスケアの超過リターン
▲0.03%

「ヘルスケアに資金が移っている」は、いつ本当でいつ嘘か

判定:普段はβの錯覚。今回は本物で、しかも上昇ではなく戻り。2,655営業日を市場の変動幅で区分し、実測の超過とβが予測する超過を突き合わせると残差は最大0.24%。市場が動かない1,342日の差は▲0.03%でゼロ。ところが2026年6〜7月のαは+7.22%・+5.96%で、半導体が下げた日に集中する。累積αは依然▲6.9%。

第15号CHIP VS HYPERSCALER
半導体とハイパースケーラー、市場要因を除いた30日相関(14年で下位0.3%)
−0.614

半導体とハイパースケーラーの逆相関は本物。ただし資金は移っていない

判定:連動が切れたのは本物。ただし「綱引き」ではない。生の30営業日相関0.002は95%信頼区間が−0.36〜+0.36で断定できないが、市場を除くと−0.614(14年で下位0.3%)となり逆相関が確定する。半導体のボラは96.5パーセンタイルで、相関を押し上げるはずのバイアスが効いてなおこの水準。ただし7月は両群とも下げ(▲3.4%と▲16.9%)、資金移動の形跡はない。連動が切れる場所は決算翌日で、282件で確認できた。

第16号MADE IN CHINA 2025
中国国産化10分野のうち、既存プレーヤーが世界株に負けた数
4分野

「中国が国産化する」で売って正解だったのは、10回中4回だった

判定:10分野のうち売って正解は4分野だけ。しかも株価自体はプラスだった。母集団は中国国務院が2015年に公布した《中国製造2025》の重点10分野。既存プレーヤーが世界株ACWI(+207.8%)に負けたのは4分野で、負け幅は最大▲88ptにとどまる。11年でマイナスになったのは既存46社中4社に対し中国32社中12社。同じ露光装置でASML+1479%、ニコン+71%。

第17号BUY THE DIP?
任天堂株、高値から50%超下げた後の2年後リターン
▲7.2%

下がった任天堂株の「買い目」を、25年分の全営業日で探した

判定:深く下げたところほど良い、にはならなかった。6,368営業日を高値からの下落率で機械的に区分。20〜30%の押し目までは指数を上回るが、40%より深いと1年後▲2.0%、50%より深いと1年後▲3.8%・2年後▲7.2%。ところが日経225の221社に同じルールを当てると形が正反対で、50%以下から買った3年後が+19.3%と深いほど良い。逆転はゲーム株9社にも共通する。

第18号MARKET BREADTH
裾野の広さによる先行き12カ月リターン差(統計的にゼロと区別できず)
▲0.4pt

裾野が広がっても先行きのリターンは変わらない。浅くなるのは下げ幅だけだった

判定:先行きのリターンには差がない。残るのは下げ幅の浅さだけ、それも静かな相場に限る。均等加重S&P500の設定来23年・5,847営業日で採点。先行き12カ月の差は▲0.4pt(95%CI ▲5.0〜+4.4)でゼロと区別できず、測定窓を変えると符号が入れ替わる。唯一残ったのは以後12カ月の最大下落が3.4pt浅いことだが、ボラティリティ下位2区分でしか成立せず、期間を3年半縮めると消える。

第19号MORNING OUTLOOK
朝の相場見通しの的中数(前夜の米国株を写すだけの予想と同数)
32/48

朝の相場見通しは3分の2が当たる。ただし前夜の米国株を写すだけの予想と、1日も違わなかった

判定:的中率は本物。ただし上乗せはゼロだった。毎朝配信される日経平均の見通しを61営業日分採点。方向を明示した48日のうち32日的中で66.7%(p=0.015)。ところが前夜のSOXを機械的に写すだけの予想も同じ32/48で、1日も違わない。見通しの83%は前夜の米国市場と同方向で、違うことを言った8日は4勝4敗。15年半3,808日で測ると、当たるのは寄り付きまで(70.8%)で、寄ってから引けまでは50.6%のコイン投げ。

第20号BANK SELECTION
TOPIX構成から外れた10行、株価成績の中央値(メガ・地銀の本体は横並び)
+23.5%

銀行株の「選別」はどこで起きているか

判定:メガ対地銀の選別はまだ価格に来ていない。置き去りはTOPIX圏外の10行だけだった。「利上げで銀行株は選別の時代へ」に対し東証「銀行業」79銘柄を全数実測。メガ3行+171.2%・地銀69行+170.3%の並走で直近1年は地銀が上、金利感応度もメガが上。割れているのはTOPIX構成の内外で、圏外10行だけ中央値+23.5%と置き去り。利上げ5回の当日反応は平均約+1%=織り込みは会合前に終わる。

第21号REIT VS REAL ESTATE
直近1年でTOPIXを上回ったJ-REIT58本中の数
0本

J-REITの劣後は「売り」ではなくβだった

判定:「不動産株>REIT」の序列は事実。ただし劣後の大半はβ0.26の機械的帰結で、本物の買いは2025年だけ。金利の重荷は市場調整後ではむしろ大手デベに付いていた。J-REIT58本+不動産業131社の全数で「不動産株優位・REIT劣後」を実測。直近1年でTOPIX超えのREITは0本だが市場調整後αはほぼゼロ=売られてはいない。10年ではREIT 0/46・大手デベ0/3で土俵ごと市場に全敗。

第22号LIPSTICK EFFECT
化粧品株、10年間でTOPIXに勝った年数
0勝13敗

口紅効果は半世紀前に終わっていた

判定:「不況でも化粧品」が確認できたのは1969〜70年が最後。命名の年も負けていた。BEAのPCE品目別(1929年〜)とNBER後退日付で消費を、SECのSIC 2844と証券コード4911-4930帯の32銘柄で株を全数実測。下げ相場で守ったのは米7回中1回、10年はTOPIXに0勝13敗。直近12カ月の美容消費+4.4%は総消費より強く「いま強い」だけは事実。

第23号COVERED CALL
カバードコール(BXM)の38年累積リターン、対S&P500
4割

カバードコールETFが勝てるのは「ゆっくりした下げ」と「VIXが高い横ばい」だけだった

判定:勝てるのは「ゆっくりした下げ」と高VIXの横ばいだけ。38年でS&P500の4割だった。BXM指数456ヶ月の帯別実測。下落月+2.0pt・勝率9割、大幅高月▲3.2pt・勝率3%、境界は月+0.5%。急落は守れず、守れた年の勝ち分は翌年に消えた。東証5本はNISA不可。

第24号SEKAI NO BEST
「世界のベスト」基準価額の20年騰落率(運用は年率13.8%)
▲43%

「世界のベスト」の毎月150円は、稼ぐ力の2倍を配る水準だった

判定:運用は本物(9年半で年13.8%)、分配水準は算術的に続かない。基準価額は▲43%、維持に必要な運用は年21%だった。純資産4.2兆円・毎月150円の人気投信を公開データ20年で実測。TR年13.8%でも分配率13.7〜21.8%が平均で上回り基準価額16,245→9,253円。オルカン比▲55.5ptの主因は信託報酬、リーマン後8年の分配停止とグロソブ減配史まで。

第25号WCM / 予想分配金提示型
予想分配金提示型、下げ相場での分配金0円の回数(先行4年)
0円26回

予想分配金提示型は「減配」を仕様にした。複利と課税と「収入の安定」が残った

判定:元本を削る分配は設計で解決、0円26回は仕様。複利の犠牲(無分配型と基準価額2倍差)と課税の前倒しは残った。毎月分配型の反省で生まれた予想分配金提示型を先行4年のWCMで実測。分配は前営業日の基準価額1,000円刻みで全57回一致、下げでは0円26回・上げでは年37%。運用はオルカン同着(+138.5%対+138.8%)、経路は▲30.9%→+70.7%。

第26号SUMMER DOLDRUMS
41年の急落日ワースト30のうち、8月に集中した日数
6日

夏枯れ相場は半分だけ本当だった

判定:商いが細るのは本物。ただし枯れた8月は静かにならず、急落は10月に次いで多かった。JPXの月次売買代金41年×日経平均61年で実測。8月は平均▲8.5%で最薄、細るのはお盆から。しかし急落日ワースト30のうち6日が8月に集中し、「薄商いだから荒れる」は相関の符号が逆でした。

第27号TV STOCK PICKS
カンブリア宮殿放送後20営業日、対TOPIX成績
▲1.14%

テレビで紹介された株が上がるのは放送の前だった

判定:上がるのは放送の前だった。翌朝の寄り付きにギャップは残らず、そこから1カ月は市場に▲1.14%負ける。テレビ東京「カンブリア宮殿」の全993回を公式アーカイブから全数取得し、東証上場の出演企業308回を実測。放送前5営業日は+0.85%、翌朝ギャップは中央値±0.00%、放送後20営業日は▲1.14%。放送していない日869件のプラセボ検定つき。

第28号RADIO STOCK PICKS
ラジオ紹介銘柄、翌営業日の寄り成績(対TOPIX)
+0.24%

ラジオの注目銘柄は翌朝の寄りを0.2%動かす

判定:株価は動く。ただし儲かりもしないし、損もしなかった。ラジオNIKKEIの投資番組が2018〜2025年に紹介した830銘柄を、消えた資料PDF718本をアーカイブから復元して全数実測。翌営業日の寄りは対TOPIX+0.24%(注目銘柄は+0.57%)と確かに動く。その後の「TOPIX劣後」はβ調整とプラセボ2,190件を通すと消え、Mad Money型の反転は検出できなかった。跳ねが小さすぎて剥がれるものが無かった。

第29号SHAREHOLDER PERKS
株主優待新設、3か月後も消えなかった異常収益
+3.0%

株主優待の新設で上がった分は、3か月たっても消えなかった

判定:市場が確実に反応しているのは廃止より新設。新設の+3.0%は3か月後も消えず、「廃止」の3割は同日にTOB・MBOが出ていた。東証の適時開示を2010年から全走査し、優待に関する開示8,149件を機械分類。市場モデルでβ調整した異常収益を実イベント2,656件・プラセボ7,377件で比較した。

第30号TOKYO PREMIUM
東京の給与優位、4人が住める広さで揃えた後の全国順位
21位

東京の給与は26%高い。4人が住める広さで測ると21位だった

判定:給与プレミアムは本物。ただし全国1位でいられるのは家が40m²までだった。東京の年収は全国比+25.9%で物価を引いても+21.1%残る。優位を消したのは価格ではなく家の広さで、同じ広さの家賃と通勤を引くと順位は1位→4位→21位に落ちる。人口移動もその線で割れていた。

第31号TV PREVIEW
番宣後の寄り建て、直近10年の勝率(p=0.93)
49.3%

テレビの番宣で買っても、いまは間に合わない

判定:2015年までは本当に取れた。いまは取るものが無い。次回予告は前回放送の夜=引け後に流れるので、従来の終値起点では買えない。寄り値起点に直すと後半の残り火が消え、直近10年は勝率49.3%・p=0.93になった。

第32号CAPEX ANNOUNCEMENT
設備投資発表、250営業日後の異常収益
▲5.44%

設備投資の発表で、株価はその日動かなかった

判定:発表そのものは買い材料になっていない。効いてくるのは1年後で、方向は下だった。翌営業日の異常収益は+0.07%で信頼区間が0を跨ぐ。250営業日後は▲5.44%(平常日比▲6.88pt)で、60日・120日・250日と一貫。いちばん深いのは増産・能力増強で、翌日+0.41%に対し1年後▲13.53%。ただし時代で一貫せず、区間が0を離れるのは2018〜2021年だけ。

第33号PRE-OPENING QUOTE
1日の値動きに占める寄り付きの割合
42.8%

気配が出るのは朝8時、値段が動き出すのは9時ちょうどだった

判定:気配は8時、切り上がるのは9時から。寄前気配は前場8時・後場0時5分から。3分ごとに動く特別気配は立会時間=9時から。ストップ値段まで上は15〜27分・下は最大54分で、下が遅い値段が81.7%、逆は0%。1日の値動きに占める寄りは42.8%、直近の分散寄与は53.8%。

第34号HOUSING STARTS

マンション着工が急増しても急減しても、住宅系REITは動かなかった

判定:着工急増・急減後の住宅系REITの株価差はプラセボ検定を通過せず、null。住宅特化型REIT6銘柄×東京都のマンション着工統計を突き合わせ。オフィス・物流REITや時代分割でも一貫してnullでした。

第35号ORLCAN FLOW
下落局面7回のうち、オルカンが累計純流出になった回数
0/7

オルカンから資金が逃げたことは、一度もなかった

判定:下落局面7回すべてで、累計フローが純流出になったことは一度もなかった。コロナ▲33.8%含む7局面を実測。流出日率は平常時と統計的な有意差なし。

第36号MARGIN RATIO
信用取引残高「過去最高」、東証時価総額比で見た実際の順位
58パーセンタイル

信用取引残高「過去最高」を検証

判定:「過去最高」は名目だけ。東証の時価総額で割ると2006年の半分にも届かない。信用取引買い残高7兆円は名目で過去最高。だが東証時価総額比では58パーセンタイルに過ぎず、真のピークは2006年2月(1.07%)。過去の相対ピーク後の値動きも実測。

第37号NFP MARKET REACTION
雇用統計翌営業日、東京市場の反応(曜日調整後の統計的有意差)
p=0.023

雇用統計で動くのは、米国株ではなく月曜の東京だった

判定:米国株は動かない。動くのは翌営業日の東京。S&P500は発表当日、平常日と統計的に区別がつかない(p=0.194)。翌営業日の東京は曜日を揃えても有意(p=0.023)。改定幅との相関はほぼゼロ。

第38号FX INTERVENTION
為替介入翌日、円買い方向に効いた勝率(33エピソード)
80%

為替介入は、翌日は8割効く。1カ月後には、しなかった日と区別がつかない

判定:介入翌日は有意に効く。ただし1カ月後には平常日と区別がつかない。財務省公式33エピソードを実測。円買いは翌日+1.54%・勝率80%(p=0.0000)、1カ月後は平常日と区別つかず。28年ぶり協調介入を機に検証。

第39号CONGRESSIONAL TRADING
議会議員の実ポートフォリオ、指数に対する年率成績(再検証)
▲2〜3%

「政治家の株を追えば勝てる」は本当か

判定:「議会は市場に勝つ」は覆っている。2004年の有名な研究は再検証で覆り、実ポートフォリオは年率2-3%指数に負けていた。バイラルになったトランプ氏の投稿も、開示書類では「買って放置」ではなく1週間後には売却していた。

第40号RETAIL EARNINGS REACTION
ノジマ、投資有価証券売却益で嵩上げされた純利益の倍率
2倍

エアコン特需への依存度では、決算翌日の株価反応を説明できなかった

判定:仮説は外れた。動かしたのは依存度でなく利益の中身。依存度トップの2社は翌営業日のアルファがプラス。投資有価証券売却益で純利益を2倍に見せたノジマだけが、4社中最悪の反応で売られた。

第41号AI POWER DEMAND
AI電源株(ヴァーティブ等)との残差相関、14年で上位1.2%
+0.73

キャタピラーが動き出したのはAI電源株とだけ

判定:「AI株」ではなく「AI電源株」になった。半導体・ハイパースケーラー9銘柄との連動はほぼゼロ。データセンター電源株(ヴァーティブ・GEヴェルノバ・イートン)とだけ残差相関+0.73、14年で上位1.2%。

第42号SEPTEMBER EFFECT
S&P500の9月平均(98年)。日経平均は同じ検定で有意差なし
▲1.12%

9月は「下落の月」か

判定:「9月は下落の月」はS&P500だけ本物だった。98年で12ヶ月中最下位、危機年除いてもp=0.004。日経平均は同じ検定でp=0.113と有意差なし——直近10年は米国が悪化・日本は逆転していた。

第43号CPI INFLATION REGIME
コアCPI≥5%期、発表当日の反応倍率(平常期比)
5.8倍

CPIで株が動くのは、物価がすでに高いときだけだった

判定:平常時は無風、コアCPI3%超の局面だけ反応4〜6倍。283回の発表を実測。米国株は平常時、発表日と平常日で区別がつかない(p=0.56)。動くのはコアCPI前年比3%を超える局面に限られ、閾値3/4/5%いずれもp<0.0001。

第44号13D REACTION

太陽誘電、大量保有報告書の開示は株価を動かしたか

判定:開示当日の反応は分足に明確な跡。ただし非公開だった実売買との対応は逆因果の疑い。AI特化ファンドの保有急変動(5.99%→16.61%→4.41%)を伝える8件が8/12に一括開示。日足は0.82σでノイズ圏内だが、30分足では提出直後に価格加速・出来高急増が繰り返し対応。

第45号CALENDAR ANOMALY
節分が1〜4月の最高値だった年
0/62年

「節分天井、彼岸底」は62年間、一度も起きていなかった

判定:「節分に天井、彼岸に底」は62年間、一度も起きていない。高値は4月(46.8%)・1月(27.4%)に集中、2月はわずか6.5%。節分→彼岸の株価は31勝31敗で平均+1.15%とむしろプラスだった。

第46号REIT YIELD TRAP
利回り上位1/3の分配金カット率
20.1%

高利回りJ-REITの株価は裏切らない。分配金は、5本に1本が裏切っていた

判定:半分本当。価格は裏切らないが、分配金カット率は利回り上位で8倍近く跳ねた。J-REIT58本を利回りで階層分け、11年565件で実測。分配金カット率は低位2.6%→高位20.1%とp<0.0001で単調増加。

第47号FOREIGN-REALESTATE-TOB
プレミアム中央値(市場平均43.3%を下回る)
+23.5%

外資による日本の不動産関連株TOBは、3年で7倍に増えた。値段は、むしろ普通だった

判定:数は本物。値段は市場平均以下、成立率はむしろ下がった。外資系ファンドによる日本の不動産関連上場企業へのTOBを2008〜2026年で機械的に洗い出すと15件。頻度は直近3年で7倍に加速したが、自前検算したプレミアム中央値+23.5%は市場平均を下回り、成立率も100%→57%へ低下していた。

第48号APRIL SEASONALITY

4月末売りは見つからなかった

判定:見つからなかった。むしろ4月は年間最強クラスの月だった。4月最終5営業日は勝率61.3%・中央値+0.49%で逆方向。月別ベースラインでも4月は12ヶ月中1位。

図解 — 検証の4段階

下の図は、IVYXONが定石を検証するときに実際に踏んでいる4段階と、比較のためによく見かける簡易な検証を並べたものです。

IVYXONの検証手順(左)と、ありがちな検証(右)の比較 IVYXONの検証手順 ありがちな「検証」 ① 母集団を全数取得する 対象は自分で選ばない。開示制度・検索条件で機械的に集める ② 市場感応度(β)で補正する 補正前の差は、市場全体の値動きと区別がつかない ③ プラセボ検定を通す 同じ銘柄・日付違いの「何も起きていない日」と比較する ④ 時代を分割して確認する 一つの期間の結果だけで言い切らず、崩れないか見る ①〜④をすべて通過 ここで初めて「効いた」と判定する ① 気になる銘柄だけを比べる 母集団の選び方ひとつで結論が変わる ② 前後の平均を比べて判定 市場全体が動いただけかもしれない ③④に相当する確認手続きは 存在しない プラセボ検定も時代分割も、 比較対象そのものが用意されていない この時点で「効いた」と結論 ①②の手続きだけでは、本物か確かめようがない
図: IVYXONが定石を検証するときの4段階(左)と、単純な前後比較だけで「効いた」と判定する簡易な検証(右)の対比。

色分け:緑=IVYXONが実際に踏んでいる手順/グレー=比較対象として示した簡易な検証/点線=存在しない確認手続き/橙=裏付けのない結論。

このシリーズの読み方

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