INVESTMENT STRATEGY ・ 投資の考え方 第21号

J-REITはこの1年、TOPIXに0勝57敗。それでも「売られた」わけではなかった

2026年の不動産セクターには、はっきりした序列の物語があります。「不動産株は含み益と賃料上昇で強い。REITは金利上昇が重荷」——実際、東証REIT指数は2025年に2割高(当サイトの再現では価格ベース+21.9%)のあと、2026年は年初来マイナスに沈み、不動産株の勢いと対照的に見えます。

この物語を、JPX「東証上場銘柄一覧」から機械的に切り出した全数——J-REIT58本と東証33業種「不動産業」131社——で、分配金・配当再投資込みの等金額で測りました。結論は二層になります。序列そのものは事実です。しかし「REITが売られている」は、実測に合いませんでした(2026年7月30日時点・編集部構成)。

判定
濡れ衣

「不動産株>REIT」の序列は全窓で事実。ただしREIT劣後の大半はβ0.26の機械的帰結だった。市場と金利を取り除いた超過収益(α)は解除来+3.4%とむしろ小幅プラスで、βで説明できない本物の買いは2025年だけ(α+24.6%・t=2.42)。「金利の重荷」は市場調整後ではREITではなく大手デベ3社の側に付きます(金利+0.1%ポイントの日に▲0.95%対▲0.14%)。そして10年ではREIT 0勝46敗・大手デベ0勝3敗——どちらもTOPIXに全敗です。

直近1年のTOPIX超え
0/57
J-REIT。解除来も0/57・10年も0/46
J-REITの市場β
0.26
解除来のα(超過)は+3.4%と小幅プラス
2025年のREITのα
+24.6%
t=2.42。唯一βで説明できない年
金利+0.1%ptの日
▲0.95%
大手デベ3社。REITは▲0.14%
01 · THE SCOREBOARD

序列は事実。ただしTOPIXに勝ったのは2025年だけ

母集団は筆者が選びません。JPX「東証上場銘柄一覧」(2026年6月30日版)の33業種区分「不動産業」全160社からTOKYO PRO Market上場の29社(特定投資家向け市場・一般売買不可)を除いた131社と、REIT市場区分からインフラファンド5本(太陽光発電等・不動産ではない)を除いたJ-REIT58本。等金額・買い持ち・分配金/配当再投資込みで測ります。

群(等金額)解除来
2024-03-18〜
2025年通年2026年初来直近1年
J-REIT(57〜58本)+19.0%+27.1%▲4.1%+5.8%
不動産業(127〜130社)+45.7%+28.8%+1.8%+12.4%
大手デベ3社(三井不・三菱地所・住友不)+46.1%+60.2%▲1.4%+37.5%
東証REIT指数ETF(1343)+23.3%+27.5%▲3.0%+8.3%
不動産業ETF(1633)+39.7%+41.6%+2.4%+32.3%
TOPIX(1305)+55.1%+25.5%+18.3%+40.0%
REITのTOPIX超え本数0/5732/570/580/57

※当サイト実測。2026年7月29日終値まで。Yahoo Financeの調整後終値(分配金・配当再投資込み)による等金額・買い持ち(リバランスなし)で、税・取引コストは控除していません。各窓の社数は起点で上場済みの銘柄数(解除来はREIT57本・不動産業127社、2025年通年以降は58本・130社。不動産業側はデータ系列が復元不能なAlbaLinkを除く)。ベンチマークはTOPIX連動ETFの1305(iFreeETF TOPIX)。より一般的な1306は2026年3月30日に、1348は2024年8月5日に、それぞれ実際のTOPIXの動きと合わない単日変動(▲90.2%・▲18.0%)があるため採用していません。本記事の窓での3本の累計は解除来+55.1%・+55.0%・+54.9%とほぼ一致します。

まず報道の数字は再現できます。東証REIT指数の「2025年に2割高」は、分配金を含まない価格リターンで+21.9%1343の未調整終値)。そして序列——どの窓で切っても不動産株の群がJ-REITの群を上回ります。ここまでは通説どおりです。

目を引くのはその先です。J-REITがTOPIXを上回ったのは2025年通年だけ(32/57本、等金額+27.1%対+25.5%)。解除来・2026年初来・直近1年は1本もTOPIXに勝っていません。しかも「強い」はずの不動産株側も、直近1年でTOPIXを上回ったのは130社中19社、2026年初来は14社です。序列の物語は「不動産株 対 REIT」の勝負に見えて、実測では両方とも市場に置いていかれている——これが2026年7月末の現在地です。

02 · BETA, NOT SELLING

「0勝57敗」の正体は、売りではなくβ0.26

ではREITは「売られている」のか。第11号と同じ手順で確かめます。J-REITの等金額バスケットの日次リターンを、市場(TOPIX)と10年国債金利の日次変化に回帰すると、市場感応度(β)は0.26しかありません。TOPIXが1%動く日に0.26%しか動かない体質です。

この体質で、TOPIXが+55.1%上がった解除来の相場に立つと——βが約束するリターンは+14%前後です。実測の+19.0%はそれを上回ってすらいます。市場と金利の寄与を取り除いた残り(α・年率換算)を窓ごとに並べます。

J-REITのα(年率)大手デベ3社のα(年率)
解除来(2024-03-18〜)+3.4%(t=+0.52)+9.5%(t=+0.58)
YCC見直し来(2022-12-19〜)▲1.2%(t=▲0.22)+10.5%(t=+0.85)
2025年通年+24.6%(t=+2.42)+49.5%(t=+1.96)
2026年初来▲14.3%(t=▲1.02)▲15.0%(t=▲0.45)
直近1年▲0.9%(t=▲0.08)+16.1%(t=+0.61)

※当サイト実測。群の等金額バスケットの日次リターンを r = α + β×市場 + c×Δ10年金利 に回帰(市場=1305、金利=財務省・国債金利情報)。αは日次切片の年率換算、t値は通常のOLS標準誤差によるもので自己相関・分散不均一は補正していません。

直近1年のαは▲0.9%(t=▲0.08)=ほぼ完全にゼロ。つまり「TOPIXに0勝57敗」という順位表の全敗は、REITが売り込まれた結果ではなく、βの低い資産が強い株式相場に置いていかれたという機械的な現象です。もし資金流出で劣後しているなら、βで説明した後にもマイナスの残差が出るはずで、それは出ていません。

「TOPIXに0勝57敗」という順位表の全敗は、REITが売り込まれた結果ではなく、βの低い資産が強い株式相場に置いていかれたという機械的な現象です。

本記事の実測(β・α分解)

REITのβがこれほど低いのは設計によるものです。賃料という粘性の強いキャッシュフローを分配する器で、学術的にも、REITは短期では株式のように・長期では実物不動産のように振る舞うことが国際データで示されています(Hoesli & Oikarinen 2012)。順位表の劣後だけを見て「売られている」と読むのは、下げ相場で個人株主の多い株が強いのを「資金の逃避先」と読むのと同じ錯覚です(第11号で実測した型)。

03 · THE ONE EXCEPTION

本物の買いは2025年だけだった

α表で唯一目立つのが2025年通年です。REITのα+24.6%はt=2.42と、本記事で推定した15本(5窓×3群)の中で唯一、統計的に有意な水準に届きます。大手デベ3社のα+49.5%(t=1.96)もぎりぎりの水準。2025年はβでは説明できない「本物の買い」が不動産複合体の全体に入った年で、報道が描いた不動産の勢いは、この年に関しては実在しました。

2026年はその剥落です。REITの年初来αは▲14.3%とマイナスに転じていますが、t=▲1.02で「資金流出が始まった」と断定できる水準ではありません。「2025年に入った超過分が消えた」が実測に忠実な読み方で、売り崩されているという描写はまだデータの外です。

「2025年に入った超過分が消えた」が実測に忠実な読み方で、売り崩されているという描写はまだデータの外です。

本記事の実測(2025年のREITのα=t=2.42)

大手3社の中も一様ではありません。

銘柄2025年通年2026年初来解除来10年
三井不動産+43.3%▲7.6%+13.9%+163.2%
三菱地所+76.3%+7.9%+65.1%+149.4%
住友不動産+61.1%▲4.3%+59.3%+211.2%
TOPIX(1305)+25.5%+18.3%+55.1%+278.8%

※当サイト実測。配当再投資込み。解除来=2024年3月18日基準。

解除来で見ると三菱地所+65.1%・住友不動産+59.3%はTOPIX超えですが、三井不動産は+13.9%と4分の1。「大手デベは強い」という括りの中でも、最大手が一番置いていかれています。

04 · THE RATE MYTH

「金利の重荷」は、市場調整後ではデベの側に付く

劣後の説明によく使われる「REITは金利上昇が重荷」も測っておきます。各営業日のリターンから市場全体の動きを取り除いた上で、10年国債金利が1日に+0.1%ポイント動いた日の追加リターンを見ると——

群(バスケット回帰)解除来YCC見直し来
J-REIT▲0.14%▲0.23%
不動産業全体+0.29%+0.05%
大手デベ3社▲0.95%▲1.02%

※当サイト実測。前掲の2因子回帰の金利係数を+0.1%ポイントあたりに換算。銘柄ごとに推定した係数の群内中央値でも同じ序列です(解除来でREIT▲0.12%・大手デベ▲0.93%)。

通説と逆です。金利感応度が大きいのはREITではなく大手デベ3社で、その差は7倍近くあります。日銀の利上げが決定された5回の当日反応も同じ向きを指します。

決定日決定内容J-REIT大手デベ3社TOPIX
2024-03-19マイナス金利解除+2.7%+6.3%+1.0%
2024-07-310.25%程度へ+0.6%▲0.5%+1.8%
2025-01-240.5%程度へ+1.3%+0.4%▲0.1%
2025-12-190.75%程度へ+0.5%+0.8%+0.8%
2026-06-161%程度へ▲1.7%▲2.8%▲0.1%
参考据え置きだった15会合の平均▲0.0%+0.2%

※当サイト実測。決定会合最終日の終値ベース日次リターン(群は等金額平均)。会合日は日銀の決定内容公表一覧から取得。

マイナス金利解除の日に大手デベは+6.3%と跳ね、1%への利上げの日には▲2.8%とREIT(▲1.7%)より深く下げました。米国の実証でも、1992年以降のREITは債券よりも株式市場と統合的に動くことが示されており(Glascock・Lu・So 2000)、「REIT=金利商品」という直感は米国でも90年代に崩れています。なぜデベのほうが金利に敏感なのかは本記事の範囲では特定できませんが、開発・保有に負債レバレッジをかけた事業構造や、含み益の割引率が長期金利に直撃する構造は、仮説としては整合的です。確かなのは実測の側で、「金利が重荷だからREITが劣後する」という因果は、市場調整後の数字では支持されません

「金利が重荷だからREITが劣後する」という因果は、市場調整後の数字では支持されません。

本記事の実測(金利感応度の回帰)
05 · THE LONG VIEW

10年で見ると、土俵ごと負けている

最後に、この比較を10年に伸ばします。分配金・配当をすべて再投資した後の数字です。

群(等金額)10年(2016-07-29〜)TOPIX超え
J-REIT(46本)+66.2%0/46
不動産業(92社)+183.6%21/92
大手デベ3社+174.6%0/3
東証REIT指数ETF(1343)+51.7%
不動産業ETF(1633)+150.4%
TOPIX(1305)+278.8%

※当サイト実測。10年前に上場していた銘柄のみ(生存者バイアスあり=この10年の合併・上場廃止銘柄は含まれません)。

「REITは分配金があるから」という反論は、この表には通用しません——分配金を全部再投資して+66.2%対+278.8%、TOPIXを上回ったREITは46本中ゼロです。そして見落とされがちなのはデベの側で、三井不動産・三菱地所・住友不動産の3社も、10年ではそろってTOPIXに負けています(最高の住友不動産で+211.2%)。

「不動産の中でどちらを選ぶか」という問いの手前に、「不動産複合体ごと市場に劣後してきた」という事実があります。2025年のような本物の資金流入の年はある。しかしそれは10年で1回の話で、序列の物語(不動産株かREITか)は、その土俵自体がTOPIXに勝てていないことを言いません。個別で見ても振れ幅は大きく、解除来の最高は不動産業側でアールプランナー+327.0%、最低はREVOLUTION▲89.5%。REIT側は最高が日本都市ファンド+49.2%、最低が日本ホテル&レジデンシャル▲10.4%と、そもそも当たり外れのレンジが1桁違います。

「不動産の中でどちらを選ぶか」という問いの手前に、「不動産複合体ごと市場に劣後してきた」という事実があります。

本記事の結論

留意点

SOURCES

出典と一次資料

FAQ

Q. J-REITとTOPIXはどちらが上がっていますか?
窓の取り方によらずTOPIXです。当サイトが分配金再投資込みで実測したところ、2026年7月29日までの直近1年でJ-REIT57本の等金額は+5.8%、TOPIX(1305)は+40.0%で、TOPIXを上回ったREITは0本でした。マイナス金利解除の決定前日(2024年3月18日)からでもREIT+19.0%対TOPIX+55.1%で0勝57敗、10年でもREIT46本は+66.2%対TOPIX+278.8%で0勝46敗です。唯一の例外が2025年通年で、REIT等金額+27.1%(東証REIT指数連動ETFの1343は分配金込み+27.5%)はTOPIX(+25.5%)を上回り、57本中32本がTOPIX超えでした。

Q. J-REITは投資家に売られているのですか?
順位表の劣後からは、そうは言えません。J-REITの市場感応度(β)は0.26しかなく、TOPIXが+55.1%上がったマイナス金利解除以降の局面では、βだけで期待できるのは+14%前後です。実測の+19.0%はそれを上回っており、市場と金利の影響を取り除いた超過収益(α)は年率+3.4%と小幅プラスでした(統計的にはゼロと区別できません)。直近1年もαは▲0.9%とほぼゼロで、「TOPIXに0勝57敗」はβが低い資産が強い株式相場に置いていかれたという機械的な現象です。逆にβで説明できない本物の買いが観測されたのは2025年だけで、この年のREITのαは年率+24.6%(t=2.42)と有意でした。2026年初来のαは▲14.3%とマイナスですがt=▲1.02で、「資金流出が始まった」と断定できる水準ではありません。

Q. 「REITは金利上昇に弱い」は本当ですか?
市場全体の動きを取り除いて測ると、金利感応度はREITよりも大手デベロッパーのほうが大きいという逆の結果が出ます。各営業日のリターンを市場(TOPIX)と10年国債金利の日次変化に回帰すると、10年金利が1日に+0.1%ポイント動いた日の追加リターンはJ-REIT等金額で▲0.14%に対し、三井不動産・三菱地所・住友不動産の等金額は▲0.95%でした(マイナス金利解除以降。YCC運用見直し以降で測っても▲0.23%対▲1.02%)。米国でも1992年以降のREITは債券よりも株式市場と統合的に動くという実証(Glascock・Lu・So 2000)があり、「REIT=金利商品」という直感だけで劣後を説明するのは実測に合いません。ただしこの回帰は因果を証明するものではなく、金利が大きく動いた日に別の材料が重なっていた可能性は排除できません。

Q. 不動産株とJ-REITではどちらが強いですか?
序列としては、測ったすべての窓で不動産株がJ-REITを上回りました(例:直近1年は不動産業130社の等金額+12.4%対REIT+5.8%、10年は+183.6%対+66.2%)。ただしこの比較には続きがあります。その不動産株もTOPIXにはほとんど勝てておらず、10年では三井不動産+163.2%・三菱地所+149.4%・住友不動産+211.2%と、3社ともTOPIX(+278.8%)に全敗です。直近1年でTOPIXを上回った不動産株は130社中19社しかありません。「不動産の中でどちらを選ぶか」という問いの手前に、「不動産セクターごと市場に劣後してきた」という事実があり、これは配当・分配金を再投資した後の数字です。

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本記事は公開市場データ(Yahoo Finance・JPX・財務省・日本銀行)および学術文献を基に、当サイトが計算条件を明示した上で集計・整理した一般的な情報提供を目的としており、特定の銘柄・商品・売買タイミングの採用を推奨・勧誘するものではありません。過去の実績は将来の成果を保証しません。投資に関する最終判断はご自身の責任で行ってください。

出典:JPX東証上場銘柄一覧、財務省・国債金利情報、日本銀行・金融政策決定会合公表資料、Yahoo Finance(調整後終値)、Hoesli & Oikarinen (2012) JIMF 31(7)、Glascock et al. (2000) JREFE 20(2)。市場データは2026年7月29日終値まで(実測・集計は当サイト算出、2026年7月30日時点・編集部構成)。