INVESTMENT STRATEGY ・ 投資の考え方 第30号
東京の給与は全国より26%高い。この差を消したのは物価ではなく、家の広さと通勤時間だった——4人が住める広さで測ると、東京は全国21位まで落ちる
編集部・最終更新 2026年8月17日
- 手法
- 名目→物価→面積→通勤の4段階調整(N=47都道府県)
- 一次資料
- e-Stat(政府統計の総合窓口)公開データを当サイトが独自集計
働く場所を選ぶ理由として最も多く挙がるのは「給与が高くなる」です。この期待が実額でどれだけ正しいのか、そして生活費を引いた後にどれだけ残るのかを、47都道府県すべてで採点しました。
使ったのは3つの公的統計です——賃金構造基本統計調査(2025年・一般労働者・企業規模計)、消費者物価地域差指数(小売物価統計調査 構造編・2024年)、住宅・土地統計調査(2023年)。すべて当サイトの実測です(2026年8月2日時点・編集部構成)。
「東京は給与が高い」は本物だった。物価で割っても優位は消えない。ただしそれが全国1位でいられるのは、基準にする家の広さが40m²までのときです。同じ広さを確保する家賃と通勤時間を引くと、東京の順位は40m²で1位、75m²で4位、95m²で21位まで落ちました。そして人口移動はすでにこの線で割れています——東京圏の転入超過は20〜24歳が最多である一方、0〜4歳は16年連続の転出超過です。
東京の年収(全国比)
+25.9%
641.7万円 対 509.7万円。差は年132万円
物価で割った後
+21.1%
地域差指数104.0。実質でも47都道府県1位
家賃単価 / 住宅の広さ
1.66倍 / 64.0m²
単価は全国1位、広さは全国最小
95m²基準での順位
21位
▲1.5%。1位は茨城+9.7%、2位は愛知+9.6%
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01 · THE METHOD
「給与が高い」を、何で割るか
地方から東京へ人が動く理由として繰り返し挙げられるのが所得への期待です。ただし「給与が高い」という言葉は、そのままでは比較になりません。名目の給与額は同じ生活水準を買える金額ではないからです。そこでこの記事では、東京の給与プレミアムを次の順序で削っていきます。1段ずつ、何を引いたかが分かる形にしておくのが狙いです。
- 段階0:名目 — 所定内給与額×12か月+年間賞与で年収を組む
- 段階1:物価 — 消費者物価地域差指数(総合)で実質化する
- 段階2:面積 — 「同じ広さ」を確保する年間家賃を実額で引く
- 段階3:通勤 — 全国との通勤時間差を時給で換算して引く
段階1と段階2は足し算をしません。どちらも住居費を扱うため、単純に重ねると二重に引くことになるからです。段階2では物価指数のうち「家賃を除く総合」で実質化したうえで、家賃だけを実額で差し引いています。
もうひとつ先に断っておくべき前提があります。賃金構造基本統計調査の「都道府県」は事業所の所在地であって、労働者の居住地ではありません。埼玉や千葉に住んで東京の会社に通う人の給与は東京都に計上されます。したがってここで測っているのは「東京で働く」プレミアムであって、「東京に住む」プレミアムではありません。段階2以降で住居費と通勤を引くのは、この差を埋めるための処理でもあります。
02 · STAGE 0 — NOMINAL PAY
段階0——名目では、東京だけが抜けている
賃金構造基本統計調査(2025年・一般労働者・企業規模計・男女計)の所定内給与額を12倍し、年間賞与その他特別給与額を足して年収を組みました。全国平均は509万7千円(所定内給与34.06万円/月・賞与100.96万円/年)、東京都は641万7千円(41.83万円/月・139.78万円/年)。差は年132万円、率にして+25.9%です。
| 都道府県 | 年収(千円) | 全国比 | 物価指数 | 実質年収(千円) | 実質の全国比 |
| 東京 | 6,417.4 | +25.9% | 104.0 | 6,170.6 | +21.1% |
| 神奈川 | 5,509.5 | +8.1% | 103.3 | 5,333.5 | +4.6% |
| 愛知 | 5,238.1 | +2.8% | 98.1 | 5,339.6 | +4.8% |
| 大阪 | 5,173.2 | +1.5% | 99.3 | 5,209.7 | +2.2% |
| 兵庫 | 5,044.8 | ▲1.0% | 99.2 | 5,085.5 | ▲0.2% |
| 千葉 | 4,961.7 | ▲2.6% | 101.2 | 4,902.9 | ▲3.8% |
| 茨城 | 4,954.7 | ▲2.8% | 97.5 | 5,081.7 | ▲0.3% |
| 全国 | 5,096.8 | — | 100.0 | 5,096.8 | — |
| 宮崎 | 3,884.3 | ▲23.8% | 97.0 | 4,004.4 | ▲21.4% |
| 青森 | 3,785.8 | ▲25.7% | 98.5 | 3,843.5 | ▲24.6% |
賃金=2025年、物価=2024年。物価指数は消費者物価地域差指数の総合(全国平均=100)。
東京だけが二桁で抜けている構図です。2位の神奈川が+8.1%、3位の愛知が+2.8%ですから、「首都圏だから高い」ではなく「東京だから高い」のほうが実態に近い。千葉は▲2.6%で全国平均を下回っています。
ここで、報道でよく引かれる別の数字との関係を整理しておきます。「1都3県の1人当たり可処分所得は全国平均の1.084倍」という値が示されることがありますが、これは1人当たり(働いていない人も分母に入る)・税や社会保障の移転の後・4都県の平均です。一方この記事の+25.9%は労働者1人当たり・税引き前・東京都単独。同じ「プレミアム」でも定義が違うため桁が変わります。どちらが正しいという話ではなく、「働く場所を選ぶときに比べているのは前者ではなく後者に近い」という理由で、以下は給与ベースで進めます。
03 · STAGE 1 — COST OF LIVING
段階1——物価で割っても、優位は消えない
総務省の消費者物価地域差指数(2024年)で東京都は104.0(全国平均=100)。最も低いのは群馬の96.2で、47都道府県の幅は8ポイント程度しかありません。名目+25.9%をこの指数で割ると+21.1%。実質でも東京は47都道府県で1位のままです。
つまり「東京は物価が高いから給料が高くても同じこと」という言い方は、この指数で見る限り成立しません。給与の差が26%あるのに、物価の差は4%しかないからです。
「東京は物価が高いから給料が高くても同じこと」という言い方は、この指数で見る限り成立しません。給与の差が26%あるのに、物価の差は4%しかないからです。
ただし、この指数が何を測っているかを正確に押さえる必要があります。3つあります。
- 「総合」は持家の帰属家賃を除く総合です。持ち家を取得する費用——住宅ローンでも土地代でも——はこの指数のどこにも入っていません。
- 「住居」の費目も持家の帰属家賃を除いた住居、つまり実質的に民営家賃と設備修繕・維持だけを見ています。その東京の値は127.2で、10大費目のなかで突出しています(2位は教養娯楽の106.0)。
- そして最も重要な点として、この指数は全国共通のバスケットの価格差を測るものです。東京の住民が実際には狭い家に住んで折り合いをつけている、という数量の差は反映されません。
3つ目が効きます。東京の1住宅当たり延べ面積は64.0m²で、これは47都道府県で最小。全国平均91.7m²の70%です。価格を揃えて比べているつもりでも、買っている量が3割少ない。段階2はここを測ります。
04 · STAGE 2 — FLOOR SPACE
段階2——同じ広さを確保すると、いくらかかるか
住宅・土地統計調査(2023年)の借家の1か月当たり家賃を1住宅当たり延べ面積で割って、1m²当たりの家賃単価を出しました。東京は2,219円/m²、全国は1,336円/m²で、1.66倍。47都道府県で1位です(2位は神奈川1,708円、3位は千葉1,404円)。
基準にする広さは、筆者の裁量が入らないよう国の基準から採りました。住生活基本計画の誘導居住面積水準(都市居住型)は単身40m²、2人以上の世帯は「20m²×世帯人数+15m²」で、3人世帯なら75m²、4人世帯なら95m²です。この3点で、年間家賃と、それを差し引いた後の実質を計算します。
| 基準面積 | 東京の年間家賃 | 全国の年間家賃 | 差 | 132万円のうち家賃が食う割合 | 差し引き後の東京 |
| 40m²(単身・都市型) | 106.5万円 | 64.1万円 | 42.4万円 | 32% | +17.5% |
| 75m²(3人世帯・都市型) | 199.7万円 | 120.3万円 | 79.4万円 | 60% | +11.1% |
| 95m²(4人世帯・都市型) | 252.9万円 | 152.3万円 | 100.6万円 | 76% | +6.5% |
家賃単価×基準面積×12か月。差し引き後は「家賃を除く総合」の地域差指数で実質化している(東京102.2)。
4人世帯の広さを基準にすると、東京の年収プレミアム132万円のうち100.6万円=76%が家賃で消えます。残るのは+6.5%。単身の40m²なら消えるのは32%で、+17.5%が残ります。同じ人・同じ給与でも、必要な広さが変わるだけでプレミアムの大きさが3倍近く変わるということです。
東京の年収プレミアム132万円のうち、100.6万円=76%が家賃で消えます。
この計算は「単価が広さによらず一定」と仮定している
上の計算は家賃単価を面積に掛けているので、広い物件でも1m²当たりの家賃が同じだと仮定しています。これは近似です。そこで、合成計算を一切挟まない別の数字を並べます。住宅・土地統計調査は借家を「最低居住面積水準を満たすか」「誘導居住面積水準を満たすか」で分類しており、これは国自身の集計です。
| 区分 | 東京 | 全国 | 大阪 | 新潟 |
| 最低居住面積水準に届かない借家 | 21.8% | 16.3% | 19.4% | 12.1% |
| 誘導居住面積水準に届かない借家 | 74.4% | 65.7% | 68.0% | 62.3% |
住宅・土地統計調査(2023年)。借家(専用住宅)に占める割合。最低居住面積水準は単身25m²、2人以上は10m²×世帯人数+10m²。
東京の借家の21.8%、5戸に1戸以上が国の最低居住面積水準に届いていません(全国16.3%)。この比率は47都道府県で最も高い。仮定を置いた計算でも、国の分類そのものでも、同じ方向を指しています。
05 · STAGE 3 — COMMUTE TIME
段階3——通勤時間を賃金に換算する
住宅・土地統計調査は、2019年以降に現住居へ入居した雇用者世帯について片道通勤時間の中位数を都道府県別に集計しています。直近に住む場所を選んだ層なので、この記事の問いと母集団が合います。東京は40.3分、全国は27.1分。神奈川45.6分、千葉44.0分と、東京圏はさらに長い県が並びます(東京圏の加重平均は42.0分)。
差の13.2分を往復26.4分とし、年間通勤日数を245日(週5日×49週相当)と置くと年107.8時間。これを東京の時給2,631円(所定内給与÷所定内実労働時間)で換算すると年28.4万円に相当します。通勤時間を賃金の全額で評価するのは強い仮定なので、交通経済学で慣習的に使われる半額評価も併記します。
- 段階0+25.9%名目の年収
- 段階1+21.1%消費者物価地域差指数で実質化
- 段階2+17.5%40m²の家賃を引く → 通勤も引くと +11.2%(半額評価 +14.4%)
- 段階2+11.1%75m²の家賃を引く → 通勤も引くと +3.8%(半額評価 +7.4%)
- 段階2+6.5%95m²の家賃を引く → 通勤も引くと ▲1.5%(半額評価 +2.5%)
通勤の評価を全額にするか半額にするかで結論は変わりません。単身の広さなら二桁の優位が残り、4人世帯の広さならほぼゼロになる——この形はどちらでも同じです。
06 · THE RANKING SHIFT
順位は、基準にする広さで1位→4位→21位に動く
ここまでの処理を47都道府県すべてに当てて並べ替えました。住居費と通勤(全額評価)を引いた後の、全国平均に対する倍率です。
| 基準面積 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 東京の順位 |
| 40m² | 東京 +11.2% | 愛知 +6.0% | 茨城 +3.4% | 滋賀 +0.3% | 山梨 ▲0.1% | 1位 |
| 75m² | 愛知 +8.1% | 茨城 +7.1% | 山梨 +3.9% | 東京 +3.8% | 栃木 +3.2% | 4位 |
| 95m² | 茨城 +9.7% | 愛知 +9.6% | 山梨 +6.7% | 栃木 +5.6% | 滋賀 +4.7% | 21位 |
通勤時間は全額評価。東京は95m²基準で▲1.5%。
名目で圧倒的1位だった東京は、4人世帯が住める広さを基準にすると21位まで落ちます。代わりに上がってくるのは愛知(名目+2.8%→95m²基準+9.6%)と茨城(名目▲2.8%→+9.7%)。愛知は給与が全国平均並みでありながら家賃単価が1,204円と安く、住宅が94.5m²と広く、通勤が27.5分と短い。茨城は給与では全国平均を下回りますが、住宅が105.1m²、通勤24.0分でそれを取り返します。
名目で圧倒的1位だった東京は、4人世帯が住める広さを基準にすると21位まで落ちます。
興味深いのは神奈川で、名目+8.1%と全国2位でありながら、95m²基準では▲12.7%と東京(▲1.5%)よりはるかに下へ沈みます。家賃単価が1,708円と全国2位である上に、通勤時間の中位数が45.6分と全国で最も長いためで、住居費を引いた段階では▲2.9%だったものが、通勤を引くとさらに10ポイント近く削られます。「東京の給与を取りに行きつつ住居費を抑える」という配置が、通勤まで費用に数えると必ずしも有利にならないことを示しています。
07 · THE MIGRATION DATA
人はすでに、その線で動いている
ここまでは費用の計算です。実際の行動がそれと合っているかを、住民基本台帳人口移動報告(2025年)で確認します。
東京圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)の転入超過は12万3534人(総数)、日本人移動者では11万2738人で30年連続の転入超過です。集中は続いています。ただし年齢5歳階級別に見ると、中身は一様ではありません。
- 転入超過が最も多いのは20〜24歳で8万443人。次いで25〜29歳が2万3546人、15〜19歳が2万1469人。
- 10〜29歳は、年齢別集計を開始した2010年以降16年連続の転入超過。
- 一方で転出超過は60〜64歳が4562人と最多、次いで55〜59歳3051人、65〜69歳2900人。
- そして0〜4歳および55〜74歳の各年齢階級は、同じく2010年以降16年連続の転出超過です。
費用の計算と並べると、線がきれいに一致します。40m²で足りる年代(単身の10〜20代)には東京が全国1位で、実際にその年代が16年連続で流入している。75〜95m²が要る年代(幼児のいる世帯)では東京の優位がほぼ消え、実際に0〜4歳が16年連続で流出している。東京都単独で見ても、2025年の転入超過は6万5219人で前年の7万9285人から1万4066人(▲17.7%)縮んでいます。
因果を主張するにはこれだけでは足りません。転出には保育・教育・親の介護など住居費以外の要因も混ざります。ただし少なくとも、「東京は給与が高いのになぜ子育て世帯が出ていくのか」という問いに、費用の側から一貫した説明がつくことは言えます。給与プレミアムは実在し、そして必要な床面積が増えるにつれて実際に消えていく——観察されている移動パターンは、その計算と矛盾しません。
「東京は給与が高いのになぜ子育て世帯が出ていくのか」という問いに、費用の側から一貫した説明がつく。給与プレミアムは実在し、必要な床面積が増えるにつれて実際に消えていく。
08 · THE POLICY CHANGE
国は2026年3月に、面積の基準そのものを下ろした
この記事で基準に使った誘導居住面積水準(都市居住型で3人75m²・4人95m²)は、現在の住生活基本計画にはもう載っていません。2026年3月27日に閣議決定された新しい全国計画では、最低居住面積水準と誘導居住面積水準を定めていた別紙が無くなり、別紙は「住宅性能水準」「居住環境水準」「公営住宅の供給の目標量の設定の考え方」の3つだけになりました。
代わりに置かれたのは、住宅性能水準のなかの次の一文です——今後供給・流通を促していく住宅の規模は「これまでの単身世帯の最低居住面積水準が25㎡以上とされてきたことにも留意しつつ、2050年に向けて増加が見込まれる単身世帯が都市居住に当たってゆとりのある住生活を営むことができる規模及び、2人世帯、3人世帯若しくは夫婦と2人の未就学児等からなる世帯が生活を営むことができる規模を考慮して、40㎡程度を上回る住宅とする」。
世帯人数に応じて75m²・95m²と積み上げていた目安が、世帯規模によらない「40m²程度を上回る」という単一の下限に置き換わったということです。本記事の実測に照らすと、40m²は東京がまだ全国1位でいられる水準であり、75m²・95m²は東京の優位が消える水準でした。計画の変更の当否を論じるのはこの記事の範囲を超えますが、どの広さを基準に置くかで「東京は割に合うか」の答えが変わるという本記事の結論は、そのまま基準変更の意味にも当てはまります。
なお2023年の住宅・土地統計調査は旧水準を現役の分類として使っており、前節の「最低居住面積水準に届かない借家21.8%」もその集計です。
09 · AN 11-YEAR CHECK
家賃の相対的な高さは、この11年で広がってはいない
もうひとつ、通説と逆の実測を挙げておきます。東京の住居費が近年になって急に重くなった、という印象がありますが、消費者物価地域差指数で見る限り東京の相対的な家賃水準は拡大していません。
| 年 | 2013 | 2015 | 2017 | 2019 | 2021 | 2023 | 2024 |
| 東京の総合 | 105.2 | 104.0 | 104.4 | 104.7 | 104.5 | 104.5 | 104.0 |
| 東京の住居 | 132.8 | 128.0 | 134.5 | 132.3 | 131.9 | 127.2 | 127.2 |
全国平均=100。住居は持家の帰属家賃を除く。
住居の指数はピークの2017年134.5から2024年127.2へ、むしろ7ポイント下がっています。総合も105前後で横ばいです。つまり本記事が測った「東京の優位が広さで消える」という構図は、最近の家賃高騰によって新しく生じたものではなく、少なくとも11年前から同じ形で存在していたことになります。
ただしこの指数は民営家賃を見ており、持ち家の取得価格は含みません。同じ期間に都心のマンション価格が大きく上がったこととは矛盾しません。賃貸と取得で動きが分かれている可能性があり、この記事の数字から持ち家の負担について結論を出すことはできません。
留意点
- 賃金の都道府県は事業所の所在地で、労働者の居住地ではありません。埼玉に住んで東京で働く人の給与は東京に計上されます。測っているのは「東京で働く」プレミアムです。
- 産業・職種の構成を揃えていません。東京には本社機能・金融・情報通信が集まっており、+25.9%のうちどこまでが「同じ仕事の賃金差」でどこからが「高い仕事が多いこと」なのかは、この計算では分離できません。東京の労働者は平均年齢43.4歳と全国44.4歳より若く、所定内実労働時間も159時間と全国162時間より短い点も、構成が違うことを示しています。
- 消費者物価地域差指数は持家の帰属家賃を除きます。住宅の取得費用は指数のどこにも入っていません。持ち家世帯の実際の住居費負担はこの記事では測れていません。
- 段階2は家賃単価が広さによらず一定と仮定しています。実際には広い物件ほど1m²当たりが安くなる傾向があるため、95m²の年間家賃は過大に出ている可能性があります。仮定を挟まない国の分類(最低居住面積水準に届かない借家が東京21.8%対全国16.3%)を併記したのはこのためです。
- 通勤時間の賃金換算は仮定に依存します。年間通勤日数245日、全額評価と半額評価の2通りを示しました。評価方法を変えても順位の動き方(40m²で1位、95m²で21位)は変わりません。
- 税・社会保険料・保育料などの移転を計算に入れていません。累進課税は名目差を縮める方向に、住居費以外の地域差(自動車の保有など)は逆方向に効きます。両方向があるため、どちらかに寄せる補正は行っていません。
- 統計の年がそろっていません。賃金2025年、物価2024年、住宅2023年、人口移動2025年です。住宅・土地統計調査は5年ごとの調査で、次回は2028年調査の予定です。
- 本記事は移住や就業地の選択を勧めるものではありません。公的統計を明示した条件で集計・整理した情報提供です。
FAQ
Q. 東京で働くと給与はどれくらい高いですか?
賃金構造基本統計調査(2025年・一般労働者・企業規模計・男女計)で所定内給与額の12か月分と年間賞与を足すと、東京都は641万7千円、全国平均は509万7千円で、東京は全国比+25.9%です。差は年132万円。都道府県別では東京が1位で、2位は神奈川の+8.1%、3位は愛知の+2.8%と、東京だけが大きく抜けています。ただしこの統計の都道府県は事業所の所在地であって労働者の居住地ではないため、埼玉や千葉に住んで東京で働く人の給与も東京に計上されます。
Q. 東京の物価を考慮すると給与の高さは打ち消されますか?
消費者物価地域差指数だけでは打ち消されません。2024年の東京都の指数は104.0(全国平均=100)で、名目+25.9%をこれで割ると+21.1%が残り、実質でも47都道府県で1位のままです。ただしこの指数には持家の帰属家賃が含まれておらず、住居の費目も民営家賃と設備修繕・維持だけを見ています。さらに指数は全国共通のバスケットの価格差を測るものなので、東京の住宅が狭いという数量の差は反映されません。実際、東京の1住宅当たり延べ面積は64.0m²で全国最小、全国平均91.7m²の70%です。
Q. 同じ広さの家に住むと東京の給与の高さはどうなりますか?
基準にする広さが大きいほど縮み、家族向けの広さでは逆転します。住宅・土地統計調査(2023年)の借家の1か月当たり家賃を1住宅当たり延べ面積で割ると、東京の家賃単価は1m²当たり2,219円で全国1,336円の1.66倍です。同じ広さを確保する年間家賃を差し引き、通勤時間の差を時給で換算して引くと、東京の優位は40m²基準で+11.2%(47都道府県で1位)、75m²基準で+3.8%(4位)、95m²基準で▲1.5%(21位)となりました。95m²基準の上位は茨城+9.7%、愛知+9.6%、山梨+6.7%です。
Q. 東京圏の人口はどの年齢で増えて、どの年齢で減っていますか?
住民基本台帳人口移動報告(2025年)によると、東京圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)の転入超過は12万3534人、日本人移動者では11万2738人で30年連続の転入超過です。年齢5歳階級別(日本人移動者)では20〜24歳が8万443人と最も多く、10〜29歳は年齢別集計を開始した2010年以降16年連続の転入超過でした。一方で転出超過は60〜64歳が4562人と最も多く、0〜4歳および55〜74歳の各年齢階級は同じく16年連続の転出超過です。増えているのは単身で暮らす年代、減っているのは幼児を抱える世帯と退職期の世帯という形で分かれています。
Q. 誘導居住面積水準とは何ですか?いまも使われていますか?
世帯人数に応じて豊かな住生活に必要とされる住宅面積の目安で、都市居住型は単身40m²、2人以上の世帯は20m²×世帯人数+15m²(3人世帯なら75m²、4人世帯なら95m²)とされてきました。ただし2026年3月27日に閣議決定された住生活基本計画(全国計画)では、最低居住面積水準・誘導居住面積水準を定めていた別紙が無くなり、供給・流通を促す住宅の規模を「40㎡程度を上回る住宅」とする書き方に変わっています。本記事では2023年の住宅・土地統計調査が現役の分類として使っていた旧水準を、比較のための基準面積として用いています。
本記事は公的統計(賃金構造基本統計調査・小売物価統計調査・住宅土地統計調査・住民基本台帳人口移動報告・住生活基本計画)を基に、当サイトが計算条件を明示した上で集計・整理した一般的な情報提供を目的としており、特定の地域への移住・就業や、特定の銘柄・商品の売買を推奨・勧誘するものではありません。過去の実績・パターンは将来の成果を保証しません。最終的な判断はご自身の責任で行ってください。
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」、総務省統計局「小売物価統計調査(構造編)消費者物価地域差指数」「令和5年住宅・土地統計調査」「住民基本台帳人口移動報告 2025年結果」、国土交通省「住生活基本計画(全国計画)」。賃金は2025年、物価は2024年、住宅は2023年10月、人口移動は2025年(実測・集計は当サイト算出、2026年8月2日時点・編集部構成)。