INVESTMENT STRATEGY ・ 投資の考え方 第20号
銀行株の「選別」はメガ対地銀では起きていない。割れているのはTOPIXの内と外だった
編集部・最終更新 2026年7月30日
日銀がマイナス金利を解除してから2年4カ月で、政策金利は0%から1%程度まで上がりました。そのあいだ東証の銀行株は業種ETF(1615)で+159.2%。TOPIX(+55.1%)の3倍近く上がった、この利上げ局面の主役です。
その銀行株に「ここからは選別の時代」という論説が増えています。日銀の金融システムレポート(2026年4月)が挙げた新しいリスク——AIデータセンター関連の融資、不動産ファンド向け貸出、預金獲得競争、円債の含み損——を、体力のある大手は吸収でき、中小は抱え込む、という筋立てです。では、その選別はもう株価に出ているのか。東証33業種「銀行業」の全79銘柄を配当再投資込みで測りました(2026年7月30日時点・編集部構成)。
メガ対地銀の選別は、まだ価格に来ていない。解除来はメガ3行+171.2%・地銀69行+170.3%の並走で、直近1年はむしろ地銀が上(+109.9%対+86.5%)。金利感応度もメガのほうが高く、「地銀ほど金利メリット」でもありません。ただし価格がすでに選別を終えた場所が一つあります——TOPIX圏外(スタンダード上場)の10行だけが中央値+23.5%と、TOPIXにも届かず置き去りです。
メガ3行(解除来)
+171.2%
地銀69行は+170.3%=差なし
TOPIX圏外の地銀10行
+23.5%
中央値。構成59行は+195.8%
銀行業ETF(1615)
+159.2%
TOPIX(1305)は+55.1%
利上げ当日の平均反応
約+1%
5回中4回は±2%未満
01 · THE SECTOR SCOREBOARD
銀行株は、業種ごと2.5倍になった
まず全体像です。基準日はマイナス金利解除が決定される前日(2024年3月18日)と、長期金利の上昇が始まったYCC運用見直しの前日(2022年12月19日)。等金額・買い持ち・配当再投資込みで測ります。
| 群(等金額) | 解除来 2024-03-18〜 | YCC見直し来 2022-12-19〜 | 直近1年 | 2026年初来 |
| メガバンク3行 | +171.2% | +422.5% | +86.5% | +43.8% |
| 大手6行(りそな・トラスト・あおぞら含む) | +139.8% | +307.5% | +74.7% | +42.2% |
| 地域銀行69行 | +170.3% | +338.6% | +109.9% | +51.6% |
| その他3行(ゆうちょ・楽天・セブン) | +75.3% | +150.9% | +35.6% | +13.4% |
| 銀行業ETF(1615) | +159.2% | +371.8% | +86.5% | +45.8% |
| TOPIX(1305) | +55.1% | +124.2% | +40.0% | +18.3% |
※当サイト実測。2026年7月29日終値まで。Yahoo Financeの調整後終値(配当再投資込み)による等金額・買い持ち(リバランスなし)で、税・取引コストは控除していません。楽天銀行は2023年4月上場のためYCC見直し来の列に含まれず(その他はn=2)。持株会社化した銀行は前身銀行の系列を接続しています。ベンチマークはTOPIX連動ETFの1305(iFreeETF TOPIX)。より一般的な1306は2026年3月30日に、1348は2024年8月5日に、それぞれ実際のTOPIXの動きと合わない単日変動(▲90.2%・▲18.0%)があるため採用していません。本記事の窓での3本の累計は解除来+55.1%・+55.0%・+54.9%、YCC見直し来+124.2%・+124.0%・+122.6%とほぼ一致します。クロスチェックとして、東証業種別株価指数(銀行業)の配当込み1年リターンは+80.53%(2026年6月30日時点・JPXファクトシート)で、窓が1カ月ずれる本記事の1615実測(+86.5%)と整合します。
業種として、銀行はこの利上げ局面の勝者です。解除来でTOPIXを上回った銘柄は78銘柄中65、プラスは76。個別の最高は大分銀行の+363.0%、最低はじもとホールディングスの▲20.9%でした。
目を引くのは「その他」の弱さです。ゆうちょ銀行+114.5%はともかく、楽天銀行は直近1年で▲21.3%、セブン銀行は解除来+22.6%。貸出で金利を稼ぐ銀行と、そうでない銀行の差は、すでにはっきり付いています。
貸出で金利を稼ぐ銀行と、そうでない銀行の差は、すでにはっきり付いています。
「その他」3行の実測より
02 · MEGA VS REGIONAL
メガと地銀は、割れていない
「大手は選別に耐え、中小は課題を抱える」という筋立てなら、株価はメガ優位に割れているはずです。実測は逆でした。
| 比較(中央値) | メガ3行 | 地銀69行 |
| 解除来(2024-03-18〜) | +158.2% | +179.1% |
| 直近1年 | +86.8% | +103.0% |
| 2026年初来 | +44.0% | +50.4% |
| 解除来でTOPIX超え | 3/3 | 58/69 |
| 解除来でプラス | 3/3 | 67/69 |
※当サイト実測。中央値ベース。地銀の四分位は解除来で+112.9%〜+227.6%。
解除来の等金額ではメガ+171.2%対地銀+170.3%の並走、中央値では地銀が21ポイント上、そして直近1年と年初来はどちらで測っても地銀が上です。選別論とは逆に、市場はこの1年、地銀を買い増してきました。
選別論とは逆に、市場はこの1年、地銀を買い増してきました。
メガ対地銀の実測より
大手の中の内訳はこうです。
| 銘柄 | 解除来 | 直近1年 |
| みずほFG | +197.4% | +90.5% |
| りそなHD | +158.5% | +66.9% |
| 三井住友FG | +158.2% | +86.8% |
| 三菱UFJ FG | +158.1% | +82.1% |
| 三井住友トラストG | +133.9% | +79.4% |
| あおぞら銀行 | +32.5% | +42.5% |
| ゆうちょ銀行 | +114.5% | +98.9% |
| 楽天銀行 | +88.7% | ▲21.3% |
| セブン銀行 | +22.6% | +29.2% |
※当サイト実測。三井住友トラストGは2026年7月29日に1株→4株の株式分割(2026年5月14日開示・基準日7月31日)があり、Yahoo Finance側の調整が追いつくまで当サイトで分割調整して算出。SBI新生銀行は2023年9月28日の上場廃止→2025年12月17日の再上場(東証プライム)で価格系列が連続しないため、集計から除外しています(大手はn=6)。
03 · THE REAL FAULT LINE
割れているのは、TOPIXの内と外
では選別はどこにも無いのかというと、あります。地銀69行をJPXの規模区分で並べると、断層は「大手か中小か」ではなく「TOPIXに入っているか」の線に走っています。この線は、上場市場でいえばプライムとスタンダードの線とも一致します。
| 地銀の区分 | 行数 | 解除来(等金額) | 中央値 | TOPIX超え |
| TOPIX Mid400 | 16 | +168.2% | +158.3% | 15/16 |
| TOPIX Small 1 | 26 | +208.6% | +210.4% | 26/26 |
| TOPIX Small 2 | 17 | +200.2% | +200.8% | 16/17 |
| TOPIX圏外(スタンダード上場) | 10 | +23.4% | +23.5% | 1/10 |
※当サイト実測。区分はJPX「東証上場銘柄一覧」(2026年6月30日版)のTOPIXニューインデックスシリーズ規模区分。
TOPIXの中では、むしろ小さい区分ほど上がっています(Small 1で+208.6%)。「規模が小さいほど不利」という単純な話ではありません。ところが圏外に出た瞬間、数字は+23.4%へ落ち、TOPIX(+55.1%)にも1勝9敗です。10行の内訳を全部並べます。
| コード | 銀行 | 解除来 |
| 8537 | 大光銀行 | +85.6% |
| 8563 | 大東銀行 | +44.9% |
| 8542 | トマト銀行 | +36.4% |
| 8349 | 東北銀行 | +24.8% |
| 8383 | 鳥取銀行 | +23.6% |
| 8365 | 富山銀行 | +23.5% |
| 8562 | 福島銀行 | +17.4% |
| 8416 | 高知銀行 | +12.1% |
| 7150 | 島根銀行 | ▲13.4% |
| 7161 | じもとホールディングス | ▲20.9% |
※当サイト実測。2024年3月18日→2026年7月29日、配当再投資込み。
2つの読み方があり、この集計だけでは切り分けられません。ひとつは指数需要——TOPIXに入っていない銘柄にはパッシブ資金が来ず、銀行株を業種ごと買う動きからも漏れます。もうひとつは経営体力——この10行は上場地銀で最も規模の小さい銀行群でもあり、市場が個別に体力を査定した結果とも読めます。どちらにせよ事実として、「選別」は将来の話ではなく、この10行に対してはすでに完了しています。
「選別」は将来の話ではなく、この10行に対してはすでに完了しています。
TOPIX圏外10行の実測より
なお地銀69行の中のばらつき(直近252営業日リターンの横断標準偏差)は、2019〜21年平均の0.148から直近0.498へ3倍強に拡大しています。ただしリターンの水準自体が桁違いに上がっているため、これをもって「選別が始まった」とまでは言えません。分布の下端に張り付いたまま動かない圏外10行が、断層の実体です。
04 · THE TIMING
「利上げメリット」は、会合の前に織り込まれる
選別論のもう一つの前提、「銀行株は金利で動く」も測っておきます。まず金利感応度です。TOPIXの動きを取り除いた上で、10年国債金利が1日に0.1%ポイント動いたときの追加リターンを回帰で推定すると——
| 群(中央値) | 市場β | 金利+0.1%ptあたり |
| メガ3行 | 1.15 | +1.33% |
| 大手6行 | 1.12 | +1.23% |
| 地銀69行 | 1.03 | +1.09% |
| その他3行 | 0.92 | +1.15% |
| 銀行業ETF(1615) | 1.10 | +1.26% |
※当サイト実測。2024年3月19日〜2026年7月29日の日次で、各銘柄のリターンを市場(1305)と10年国債金利の日次変化(財務省・国債金利情報)に回帰した係数の群内中央値。
金利への感応度はメガのほうが高い(+1.33%対+1.09%)。預金基盤の厚い地銀ほど金利で買われる、という通説の序列も確認できません。米国の実証研究では、金利上昇はむしろ銀行株にマイナスに効くという結果すらあり(English・Van den Heuvel・Zakrajšek 2018)、「利上げ=銀行株高」自体が普遍法則ではありません。日本のこの2年半は、ゼロ金利からの正常化という特殊な局面が銀行株に味方した期間です。
次に、利上げが決定された当日の反応です。マイナス金利解除から1%到達まで、利上げは5回ありました。
| 決定日 | 決定内容 | メガ3行 | 地銀69行 | TOPIX |
| 2024-03-19 | マイナス金利解除(0〜0.1%) | ▲0.3% | ▲0.2% | +1.0% |
| 2024-07-31 | 0.25%程度へ | +4.6% | +4.8% | +1.8% |
| 2025-01-24 | 0.5%程度へ | ▲0.0% | ▲0.1% | ▲0.1% |
| 2025-12-19 | 0.75%程度へ | +1.2% | +1.8% | +0.8% |
| 2026-06-16 | 1%程度へ | ▲0.9% | ▲1.1% | ▲0.1% |
| 参考 | 据え置きだった15会合の平均 | +0.8% | +0.5% | — |
※当サイト実測。決定会合最終日(結果公表日)の終値ベース日次リターンの群平均(等金額)。会合日は日銀「金融政策決定会合の決定内容」の公表一覧から取得。
5回の利上げ当日の平均はメガ+0.9%・地銀+1.0%で、据え置き会合の平均(+0.5〜+0.8%)とほとんど変わりません。まともに跳ねたのは2024年7月31日の一度だけで、1%到達の日(2026年6月16日)はむしろ小幅安。つまり2.5倍という上昇は、利上げの「発表」ではなく、その手前の観測・織り込みの積み重ねで作られています。決定を確認してから乗る戦略には、取り分がほぼ残っていませんでした。銀行が預金金利を市場金利ほど上げずに利ざやを取る構造(預金フランチャイズ)はDrechsler・Savov・Schnabl(2017)が理論化しており、利上げ局面の銀行株の強さの源泉と、預金獲得競争が始まったときにそれが崩れる理路は、同じ一枚のコインです。
2.5倍という上昇は、利上げの「発表」ではなく、その手前の観測・織り込みの積み重ねで作られています。
利上げ当日の反応より
05 · THE BOJ'S CASE
日銀レポートが挙げる「これからの選別材料」
選別論の根拠になっている日銀の金融システムレポート(2026年4月21日公表)は、たしかに銀行のリスク構造の変化をいくつも記録しています。原本にあたって整理すると——
- 海外貸出の中身の変化。3メガ行の海外貸出は、2021年度上期との対比でノンバンク・建設不動産・情報通信向けの割合が高まっています(図表Ⅳ-1-13)。ノンバンクと不動産は海外ファンドの資金需要、情報通信はデータセンターの設備投資需要が牽引という整理で、規模は海外ファンド向けが海外貸出全体の9%程度、データセンター向けが2%程度(図表Ⅳ-1-14)。AIインフラの資金は事業会社の営業キャッシュフローだけでは賄えなくなっており、イングランド銀行の金融安定報告書(2025年12月)はMorgan Stanley Researchの推計を引いて、2025〜28年のAIインフラ投資2.9兆ドルのうち1.5兆ドルは外部調達(大半は負債)になるとの見方を紹介しています。
- 不動産向け融資の構成変化。国内の不動産関連貸出は貸出全体に占める割合が趨勢的に上昇するなか、与信先の構成が「個人による貸家業向け」以外の不動産業向けや不動産ファンド向けへ徐々に変化しています(図表Ⅴ-1-9。不動産ファンド向けは国内貸出の3.9%)。牽引しているのは大口案件の多い不動産SPC向けです。
- 預金獲得競争の芽。地域金融機関を預金増加先と減少先に分けると、増加先は相対的に高い定期預金金利を付け、金利感応度の高い大口定期を中心に集めています(図表Ⅳ-3-8)。地域銀行の3割程度は預金が前年割れで、「預金は黙っていても集まる」前提が崩れ始めています。
- 円債の含み損とPBR。既往の金利上昇で円債の評価損は拡大しており、株式評価益の拡大と対照的です(図表Ⅵ-1-8)。あわせてレポートは上場銀行のPBRの分布を示し、地域金融機関にはなお0.5倍を下回る先も多いとして、配当政策を含めた資本政策の策定を促しています(図表Ⅵ-1-10)。
ただし同じレポートの評価は抑制的です。海外ファンド向け・データセンター向けの割合は「大きくない」、要注意先以下の債権は「僅少」で、3メガ行の海外部門は「相応の信用コストが発生したとしても、資金利益で吸収できるとみられる」(図表Ⅳ-1-11の文脈)。マクロ・ストレステスト(銀行106行+信用金庫247庫)は「AI関連投資の収益性に関する将来期待の縮小」を明示的に含むシナリオまで当てたうえで、資本基盤を充実と評価しています。
つまり「選別材料」は将来形で書かれており、株価もまだその線では割れていない——これが2026年7月末の現在地です。価格が先に選別を済ませたのは、レポートの筋立て(大手か中小か、リスク管理の巧拙)ではなく、TOPIXの内か外かという、もっと素朴な線でした。AI融資・不動産・預金・円債という材料で本当に選別が始まるなら、それはこれから価格に現れるはずで、その観測地点として本記事の数字を残しておきます。
留意点
- 本記事は過去の値動きの集計であり、特定の銘柄・売買タイミングを推奨するものではありません。「選別がまだ来ていない」ことは「今後も来ない」ことを意味しません。過去の実績は将来の成果を保証しません。
- 母集団はJPX「東証上場銘柄一覧」(2026年6月30日版)の33業種区分「銀行業」の現存79銘柄で、期間中に上場廃止・統合で消えた銀行は含まれません(生存者バイアス)。この期間だけでも、長野銀行(2023年5月・八十二銀行による完全子会社化)、SBI新生銀行(2023年9月廃止→2025年12月再上場)、住信SBIネット銀行(2025年9月・NTTドコモによるTOB)が市場から退出しています。実際の銀行株全体の成績は、本記事の数値より悪い方向に寄ります。
- SBI新生銀行は2023年9月28日の上場廃止→2025年12月17日の再上場で価格系列が連続しないため集計から除外しています。三井住友トラストGの1株→4株分割(基準日2026年7月31日)は当サイトで手動調整しました。持株会社化した地銀は前身銀行の系列を接続しています(Yahoo Financeの仕様)。
- 群の区分のうち「大手」は日銀・金融システムレポートの大手行の定義(みずほ・三菱UFJ・三井住友・りそな・埼玉りそな・信託3行・SBI新生・あおぞらの10行)に対応する上場体6社、「地域銀行」はそれ以外の銀行業からゆうちょ銀行・ネット系・流通系を除いたものです。第一地銀・第二地銀の別は分けていません。なお東証業種別株価指数「銀行業」の構成はTOPIX採用の69銘柄で、本記事の母集団79銘柄(スタンダード上場10行を含む)とは範囲が異なります。
- TOPIX圏外10行の劣後は、指数需要(パッシブ資金の不在)と経営体力の差が重なっており、この集計だけではどちらが原因か切り分けられません。また2026年10月からTOPIXは構成ルールの見直し(第2段階)が予定されており、この線引き自体が将来動く可能性があります。
- 金利感応度は市場と金利変化の2因子日次回帰による推定で、推定期間の取り方で変わります。利上げ当日の反応はn=5であり、統計的な検定に足りる標本ではありません。
- 等金額のバスケットは小さい銀行も大きい銀行も同じ重みで数えます。時価総額加重で見れば銀行業の動きはメガ3行にほぼ支配され(東証業種別指数のウエイトは三菱UFJ・三井住友・みずほの上位3社で68.9%、2026年6月末)、1615の推移がその近似です。
- 2027年には千葉銀行と千葉興業銀行の共同持株会社化、群馬銀行の第四北越FG完全子会社化(いずれも2027年4月予定)が公表されており、母集団は今後も動きます。
- 他資料と数値が異なる場合、起点・終点・配当の扱い・算出方法の違いによります。当サイトの数値は本文に明記した条件下での算出です。
FAQ
Q. 銀行株はメガバンクと地方銀行のどちらが上がっていますか?
ほぼ同じです。当サイトがマイナス金利解除の決定前日(2024年3月18日)を基準に配当再投資込みで実測したところ、2026年7月29日までにメガ3行の等金額は+171.2%、地方銀行69行の等金額は+170.3%で、差は1ポイントもありません。中央値ではむしろ地銀(+179.1%)がメガ(+158.2%)を上回り、直近1年でも地銀+109.9%に対しメガ+86.5%と地銀が上です。地銀69行のうち67行がプラス、58行がTOPIX(+55.1%)を上回りました。「大手は強く、地銀は劣後」という選別は、少なくとも株価にはまだ現れていません。
Q. 「銀行株は選別の時代」と言われるのはなぜですか?
日本銀行の金融システムレポート(2026年4月号)が、銀行のリスク構造の変化をいくつも記録したためです。3メガ行の海外貸出は2021年度上期との対比でノンバンク・建設不動産・情報通信(データセンター関連)向けの割合が高まり、海外ファンド向けは海外貸出の9%程度・データセンター向けは2%程度になっていること、国内の不動産向け融資は与信先の構成が個人の貸家業向け以外の不動産業・不動産ファンド向けへ変化していること、預金を増やしている地域金融機関は相対的に高い定期預金金利を付けており獲得競争の芽が出ていること、金利上昇で円債の評価損が拡大し、地域金融機関にはPBRが0.5倍を下回る先も多いこと、などです。これらの重さは銀行ごとに違うため「恩恵は一様ではない」という論説につながっています。ただし当サイトの実測では、この線に沿った株価の選別はまだ起きておらず、割れているのはTOPIX構成の内外という市場区分の線でした。
Q. 利上げが決まってから銀行株を買っても間に合いましたか?
当日の反応はわずかでした。2024年3月のマイナス金利解除から2026年6月の1%到達まで、利上げが決定された会合は5回あり、決定当日の銀行株はメガ平均+0.9%・地銀平均+1.0%です。大きく跳ねたのは2024年7月31日(+4.6〜4.8%)の一度だけで、解除の日(▲0.2〜▲0.3%)、0.5%への引き上げの日(ほぼ0%)、1%への引き上げの日(▲0.9〜▲1.1%)はむしろ小幅マイナスでした。据え置きだった15回の会合当日の平均(+0.5〜+0.8%)とほとんど変わりません。つまり利上げの織り込みは会合の前に進んでおり、決定を見てから動いても取れる部分は残っていませんでした。これは過去の集計であり、今後の売買タイミングを推奨するものではありません。
Q. 置き去りになっているのはどの銀行ですか?
TOPIXに入っていない(=スタンダード市場上場でJPXの規模区分が付かない)地銀10行です。島根銀行・じもとホールディングス・高知銀行・福島銀行・富山銀行・鳥取銀行・東北銀行・トマト銀行・大東銀行・大光銀行で、マイナス金利解除以降の中央値は+23.5%と、TOPIX(+55.1%)にも届きません。同じ期間にTOPIX構成の地銀59行の中央値は+195.8%でした。ただしこの10行は上場地銀の中で最も規模が小さい銀行群でもあり、指数に入っていないこと(パッシブ資金が来ないこと)と、経営体力が弱いことのどちらが効いているかは、この集計だけでは切り分けられません。個別銘柄の推奨ではない点にご注意ください。
本記事は公開市場データ(Yahoo Finance・JPX・財務省・日本銀行)および学術文献を基に、当サイトが計算条件を明示した上で集計・整理した一般的な情報提供を目的としており、特定の銘柄・商品・売買タイミングの採用を推奨・勧誘するものではありません。過去の実績は将来の成果を保証しません。投資に関する最終判断はご自身の責任で行ってください。
出典:日本銀行「金融システムレポート」2026年4月号、日本銀行・金融政策決定会合公表資料、JPX東証上場銘柄一覧、財務省・国債金利情報、Yahoo Finance(調整後終値)、English et al. (2018) JME 98、Drechsler et al. (2017) QJE 132(4)。市場データは2026年7月29日終値まで(実測・集計は当サイト算出、2026年7月30日時点・編集部構成)。