INVESTMENT STRATEGY ・ 投資の考え方 第42号(暫定)

9月は「下落の月」か — 統計的に頑健なのはS&P500だけだった

「9月は年間で最も株価が下がりやすい月」——投資アノマリーの解説記事によく載る一言です。S&P500だけを見ればこれは正確です。98年間で12ヶ月中最下位、有名な2001年・2008年の暴落を除いてもその差は統計的に消えません。ところが同じ検定を日経平均にかけると、そもそも統計的な有意差が確認できませんでした。「9月は弱い」は世界共通の法則ではなく、指数によって頑健さがまるで違う現象だったのです。

S&P500・NYダウ・NASDAQ総合・日経平均の月末終値(最長98年分)を自前で取得し、12ヶ月ランキング・Welchのt検定・危機年除外・直近10年の比較まで検証しました(2026年8月9日終値まで・編集部構成)。

▲1.12% / p=0.002 S&P500の9月平均リターン(1928〜2025年・98回)。12ヶ月中最下位で、他11ヶ月平均との差は統計的に有意
p=0.113 日経平均で同じ検定をすると、9月と他11ヶ月の差はそもそも有意差なし(1965〜2025年・61回)
日本+0.99% 米国▲1.34% 直近10年(2016〜2025年)の9月平均リターン。日経平均とS&P500で優劣が逆転している
01 · THE UNSOURCED CLAIM

通説の出処 — 「下落の月」の一言に出典がない

「9月=下落の月」という説明は、投資アノマリーをまとめた解説記事の中でよく見かけます。例えば松井証券のマネーサテライトが公開する「アノマリーとは?」という初心者向けコラム(2025年8月29日更新)は、1月効果から12月のクリスマスラリーまでを1枚の表にまとめており、9月の欄には次の一言だけが載っています。

9月|下落の月|過去データでは株価が下がる頻度が最も高い月とされている

— 松井証券マネーサテライト「アノマリーとは?」(2025年8月29日更新)

この記事は1月効果・節分天井・彼岸底・セルインメイ・夏枯れなど12個のアノマリーを一覧にした教育コンテンツで、それぞれに具体的な算出期間・データソース・数値は一切示されていません。「下がる頻度が最も高い」という強い言い切りが、根拠なしで一人歩きしている状態です。同じ構造の通説はセルインメイ(第6号)でも「コアは70%」(第1号)でも繰り返し見てきました——ただし今回は、通説そのものを疑うだけでなく、「9月」という単月に絞って、市場ごとにどれだけ頑健な現象なのかを検定するところまでやってみます。

02 · WHAT THE ACADEMIC LITERATURE COVERS

学術の答え — 「半年の季節性」はあるが、単月の9月効果は

セルインメイ(第6号)で検証した通り、株式市場の季節性そのものは学術的にも真剣に研究されてきたテーマです。Bouman & Jacobsen(2002, American Economic Review)は37市場のうち36市場で冬半期(11〜4月)が夏半期(5〜10月)を上回ることを確認し、Zhang & Jacobsen(2021, Journal of International Money and Finance)は世界の指数・6万カ月超のデータで冬が夏より平均約4%ポイント高いことを追認しています。ただし、これらの研究はいずれも「11〜4月」対「5〜10月」という半年単位の季節性を扱ったもので、9月という単月を切り出して主題にしたものではありません。

反論側のMaberly & Pierce(2004, Econ Journal Watch)は、ハロウィン効果の米国での統計的有意性が「1987年10月の暴落」と「1998年8月(LTCM危機)」という2つの外れ値でほぼ説明できると指摘していますが、名指しされているのは10月と8月であり、9月そのものではありません。同様にZhang & Jacobsen(2013, Review of Finance)が英国300年超のデータで「3世紀にわたり持続する」と結論した月も7月と10月で、やはり9月ではないのです。既存の季節性研究の多くは、9月をピンポイントでは扱っていませんでした。

9月という単月に最も近い形で言及している学術研究は、Fang, Lin & Shao(2018, Financial Management)「School Holidays and Stock Market Seasonality」です。同論文は47ヶ国の学校休暇データを用い、主要な休暇明けの月のリターンが他の月より0.6〜1%ポイント低いという「休暇明けの投資家の注意散漫」仮説を検証する中で、「米国では9月が過去1世紀で唯一、平均マイナスとなる月である」という現象そのものを検証対象として明示的に位置づけています(DOI: 10.1111/fima.12182。原著全文は確認できていないため、著者・DOI・要旨の一致を複数の書誌情報源で確認した上での紹介です)。また日本株については、Sakakibara, Yamasaki & Okada(2013, International Review of Finance、DOI: 10.1111/irfi.12003)が「デカンショ節効果」として、暦年前半(1〜6月)が有意にプラス・後半(7〜12月)が有意にマイナスという、セルインメイとは区別される日本株独自の半世紀規模の季節性を報告しており、9月はこの「後半不調」の一部として位置づけられています。

通説の数値そのものも、出典によって食い違います。米LPL ResearchやCFRA(Sam Stovall氏)は「S&P500が1950年以降プラスで終わった年は約4割」(当サイトの実測44.9%とほぼ同水準)とする一方、Fisher Investmentsは同じ1920年代〜のデータで「52%の年でプラス」という正反対の数値を主張しています。データベンダー・算出方法(価格リターンかトータルリターンか等)の違いが原因とみられますが、「9月の勝率」という一見単純な数字ですら、実務系の情報源の間で一致していません。

03 · THE FULL RANKING

実測① 12ヶ月ランキング — 9月はどこに来るか

Yahoo Financeの指数データ(配当抜き・価格ベース)から月末終値を作り、暦月ごとの平均リターンを算出しました。対象はS&P500(1928〜2025年・98年分)・NYダウ(1992〜2025年・34年分。yfinanceの^DJI系列自体がこの年からしか無く、ダウ平均の実際の歴史はさらに古い点は留意点参照)・NASDAQ総合(1971〜2025年・55年分)・日経平均(1965〜2025年・61年分)です。

S&P500NYダウNASDAQ総合日経平均
1月+1.21%+0.28%+2.47%+1.35%
2月▲0.11%▲0.01%+0.40%+0.76%
3月+0.42%+0.54%+0.56%+1.08%
4月+1.36%+2.17%+1.58%+1.36%
5月+0.13%+0.49%+1.38%+0.64%
6月+0.79%▲0.11%+1.02%+0.66%
7月+1.67%+1.61%+0.85%▲0.07%
8月+0.71%▲0.41%+0.43%▲0.36%
9月▲1.12%▲0.70%▲0.76%▲0.36%
10月+0.55%+1.75%+0.77%+0.40%
11月+1.01%+2.69%+2.06%+1.29%
12月+1.27%+0.97%+1.49%+1.49%

※当サイト実測。月末終値ベース・価格のみ(配当抜き)・全期間の暦月平均。データは2026年8月9日終値まで。

4指数すべてで、9月は12ヶ月中でマイナスの数少ない月の一つになりました。順位で見ると、S&P500・NYダウ・NASDAQ総合の3指数は平均リターンで12ヶ月中1位(最下位)、日経平均だけは8月(▲0.36%)とほぼ同着の2位です。「9月は弱い」という通説の形自体は、4指数すべてでおおむね裏付けられました。問題はここからで、この差が「たまたま」でないと言えるかどうかです。

FIG. 01 — S&P500 月別平均リターン(1928〜2025年) S&P500 月別平均リターン(1928〜2025年) プラスの月 マイナスの月 0 1月・全期間平均:+1.21% +1.21 1月 2月・全期間平均:▲0.11% ▲0.11 2月 3月・全期間平均:+0.42% +0.42 3月 4月・全期間平均:+1.36% +1.36 4月 5月・全期間平均:+0.13% +0.13 5月 6月・全期間平均:+0.79% +0.79 6月 7月・全期間平均:+1.67% +1.67 7月 8月・全期間平均:+0.71% +0.71 8月 9月・全期間平均:▲1.12% ▲1.12 9月 10月・全期間平均:+0.55% +0.55 10月 11月・全期間平均:+1.01% +1.01 11月 12月・全期間平均:+1.27% +1.27 12月
図: S&P500の暦月別平均リターン(1928〜2025年・98年分、価格ベース)。プラスの月は緑、マイナスの月は赤。9月は▲1.12%で12ヶ月中最も低く、12ヶ月のうちマイナスなのは9月とわずか▲0.11%の2月だけだった。出典は本文表参照。
04 · IS IT STATISTICALLY REAL?

実測② 統計的に頑健なのは、S&P500だけだった

9月の平均リターンと、残り11ヶ月の平均リターンの差が偶然の範囲を超えているかを、Welchのt検定(分散が異なる前提の2標本検定)で確かめました。あわせて、9月の中でも突出して悪い2001年(米同時多発テロ)と2008年(リーマン・ブラザーズ破綻)の2回を除いても差が残るかも検定しています。

指数・期間9月平均(他11ヶ月平均)p値2001・2008年を除いた9月平均p値(除外後)
S&P500 1928–2025(98回)▲1.12%(+0.82%)0.002▲0.96%0.004
NYダウ 1992–2025(34回)▲0.70%(+0.90%)0.057▲0.21%0.161
NASDAQ総合 1971–2025(55回)▲0.76%(+1.18%)0.027▲0.25%0.080
日経平均 1965–2025(61回)▲0.36%(+0.78%)0.113+0.01%0.262

※Welchのt検定(両側)。p値は「9月と他11ヶ月の差が偶然で生じる確率」の目安で、一般的に0.05を下回ると統計的に有意とみなされます。

結果は指数ごとにはっきり分かれました。S&P500だけが、2001年・2008年を除いても統計的に有意な差(p=0.004)を保っています——つまり2つの有名な暴落が作った見かけ上の効果ではなく、それ以外の96回の9月だけでも他の月より弱い傾向が残るということです。NASDAQ総合は全期間ではp=0.027で有意ですが、2つの危機年を除くとp=0.080まで後退し、有意水準の目安である0.05を割り込みます。NYダウはそもそも全期間でp=0.057と境界線上で、危機年を除くとp=0.161まで下がり、統計的には「差がない」と判断される領域に入ります。そして日経平均は、2001年・2008年を含めた全期間の時点でp=0.113——最初から統計的な有意差が確認できていません。危機年を除くと9月の平均はほぼゼロ(+0.01%)まで縮み、p値も0.262まで上がります。

FIG. 02 — 4指数の9月平均(危機年除く)とp値 4指数の9月平均リターン(危機年除く)とp値 統計的に有意(p<0.05) 有意差なし 0 S&P500(98年)・危機年除く9月平均:▲0.96%(p=0.004) ▲0.96 S&P500 (98年) NYダウ(34年)・危機年除く9月平均:▲0.21%(p=0.161) ▲0.21 NYダウ (34年) NASDAQ総合(55年)・危機年除く9月平均:▲0.25%(p=0.080) ▲0.25 NASDAQ 総合(55年) 日経平均(61年)・危機年除く9月平均:+0.01%(p=0.262) +0.01 日経平均 (61年)
図: 2001年・2008年の危機年を除いた9月の平均リターンとp値を4指数で比較。赤はp<0.05で統計的に有意(S&P500のみ)、グレーは有意差なし。日経平均は+0.01%とほぼゼロまで縮む。出典は本文表参照。

「9月は弱い」が2つの暴落と無関係に言えるのは、実測した4指数の中でS&P500だけでした。

— 実測②・Welchのt検定(本記事の結論)
05 · THE LAST DECADE

実測③ 直近10年 — 米国は悪化、日本は逆転

季節性は時代とともに薄れることが多いというのがセルインメイで確認した傾向でしたが、9月については逆の動きが起きていました。直近10年(2016〜2025年)の平均は、S&P500が▲1.34%(全期間▲1.12%より悪化)、NASDAQ総合が▲1.59%(全期間▲0.76%よりさらに悪化)——米国は9月の弱さがむしろ強まっています。一方、日経平均の直近10年は+0.99%・勝率60%と、全期間平均(▲0.36%)から符号ごと反転しました。

S&P500 9月日経平均 9月
2016▲0.12%▲2.59%
2017+1.93%+3.61%
2018+0.43%+5.49%
2019+1.72%+5.08%
2020▲3.92%+0.20%
2021▲4.76%+4.85%
2022▲9.34%▲7.67%
2023▲4.87%▲2.34%
2024+2.02%▲1.88%
2025+3.53%+5.18%

※当サイト実測(月末終値、価格のみ)。S&P500は5勝5敗(勝率50%)、日経平均は6勝4敗(勝率60%)。

2022年は日米ともに9月が悪く(米国の急速な利上げ局面)、直近で最も一致した年でした。それ以外の年はむしろ食い違いが目立ち、2020年・2021年はS&P500がマイナスの一方で日経平均はプラス、2024年はその逆という具合です。「9月は下落の月」という説明を日本株にそのまま当てはめると、直近10年の実績とは合いません。

06 · MEAN VS MEDIAN

平均と中央値のねじれ — 「下がりやすい」は言い過ぎ

松井証券のコラムは9月を「株価が下がる頻度が最も高い月」と説明しています。これは「平均リターンが低い」とは別の主張で、勝率(プラスだった年の割合)で確かめる必要があります。

指数9月 平均9月 中央値9月 勝率12ヶ月中の順位(勝率)
S&P500▲1.12%▲0.42%44.9%(44勝54敗)1位(最も負けやすい)
NYダウ▲0.70%+0.06%50.0%(17勝17敗)2位
NASDAQ総合▲0.76%+0.25%52.7%(29勝26敗)2位
日経平均▲0.36%▲0.08%47.5%(29勝32敗)1位(最も負けやすい)

※順位は12ヶ月中で勝率が最も低い月を1位としたもの。

「下がる頻度が最も高い」という表現は、S&P500と日経平均については(僅差ながら)12ヶ月中1位で当たっています。ただし数字を見ると、S&P500でも44.9%——98年のうち44年はプラスで終わっており、コインの表裏に近い水準です。NYダウ・NASDAQ総合に至っては、9月の中央値はむしろプラス(+0.06%・+0.25%)でした。これが意味するのは、9月は「毎年ジワジワ下がる」のではなく、大半の年は横ばい〜小幅なプラスで終わり、稀に大きく崩れる年が平均を押し下げているという分布です。実測②のp値がS&P500以外で弱かったのも、この分布の歪みが原因です。

07 · WHAT ACTUALLY HAPPENED

9月に何が起きてきたか — 1931・1990・2001・2002・2008

4指数それぞれの「最悪の9月」を実際の価格データから特定すると、平均を押し下げている年がはっきり見えます。

指数最悪の9月最良の9月
S&P500▲29.94%(1931年)+14.40%(1939年)
NYダウ▲12.37%(2002年)+7.72%(2010年)
NASDAQ総合▲16.98%(2001年)+12.98%(1998年)
日経平均▲19.23%(1990年)+9.35%(2005年)

1931年9月のS&P500の暴落は、世界恐慌のさなかに英国が金本位制を離脱した月に当たります。1990年9月の日経平均は、前年末(1989年12月29日)に付けた史上最高値からバブル崩壊が本格化していく局面です。2002年9月のNYダウは、ITバブル崩壊後の弱気相場が底値を探っていた時期(S&P500・ダウとも実際の底打ちは同年10月)に重なります。

2001年と2008年は、自社データから当日の値動きを直接確認できました。2001年9月11日の同時多発テロを受け、NYSEは9月11日から14日までの4営業日、史上初めて連続で取引を停止しました。9月17日の取引再開日、S&P500は前営業日(9月10日)比▲4.92%(1092.54→1038.77)、NYダウは▲7.13%(9605.51→8920.70、当時のダウ史上最大の1日下げ幅)でした。日本市場は攻撃発生時刻(米国東部時間朝、日本時間では夜間)に取引を終えていたため即日の反応はなく、初めて反応したのは翌9月12日で日経平均は前日比▲6.63%(10292.95→9610.10)でした。

2008年9月15日(月)、リーマン・ブラザーズが連邦破産法11条を申請したその日、S&P500は▲4.71%(1251.70→1192.70)、NYダウは▲4.42%(11421.99→10917.51)。日本市場は9月15日が「敬老の日」で休場だったため、翌9月16日(AIGへの850億ドル緊急融資が発表された日でもある)に2営業日分の反応がまとめて出て、日経平均は前営業日(9月12日)比▲4.95%(12214.76→11609.72)でした。同月で最も下げ幅が大きかったのはその2週間後、米下院が金融安定化法案(TARP)を一度否決した9月29日で、S&P500▲8.81%・NYダウ▲6.98%(ダウの当時の史上最大の1日下げ幅・▲777.68ポイント)を記録しています。9月単月の「危機」は、破綻そのものよりも政治判断の混乱の方が株価への打撃が大きかったことになります。

なお、季節性研究でしばしば9月と並べて語られる1998年のLTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)危機は、実際には8月がピークでした。ロシアが通貨切り下げ・債務不履行を宣言したのは1998年8月17日で、NYダウはそこから3営業日で984ポイント(▲11.5%)下落。LTCMが投資家向けに損失を開示したのは9月2日、14金融機関による36億ドルの緊急支援が決まったのは9月23日で、9月はむしろ危機の収束局面に当たります。Maberly & Pierce(2004、前出)が季節性研究の外れ値として名指ししたのが「1998年8月」であって9月でないのは、この時系列と整合します。

08 · THE JAPAN-SPECIFIC EXPLANATION

日本特有の説明 — 「決算期末」説を検証する

前出の松井証券のコラムは、9月が弱くなる理由として「多くの企業の決算期末にあたるため、保有する株式を現金化する動きが増え、株価が下落する傾向が見られます」と説明しています。この説明には一部留保が必要です。日本の上場企業の決算期は3月期に集中しており、3月期決算企業にとって9月は本決算(期末)ではなく中間決算(半期末)に当たります。「決算期末による換金売り」という説明は、9月を期末とする一部の企業(12月期・9月期決算企業など)には当てはまっても、日本市場全体の多数派である3月期決算企業の説明としてはそのままでは成立しません。東洋経済オンラインの記事(2024年9月2日付)も同様に「中間決算期で企業活動が低調になる」ことを理由に挙げていますが、これを定量的に裏付けたデータは示されていません。

一方で、定量化されている「9月固有の下押し要因」も実在します。多くの日本企業は9月中間配当の権利落ちを9月末に迎え、これは指数を機械的に押し下げます。野村證券の試算(2025年9月22日付)では、2025年9月26日の権利落ちによりTOPIXが21.8ポイント(▲0.69%)、日経平均が303円(▲0.68%)押し下げられるとされています。これは需給が悪化しているのではなく、配当という価値が株価から切り離されて投資家の手元に移るだけの会計上の調整で、配当込み(トータルリターン)で見れば相殺されるものです。ただし本記事の実測は配当抜きの価格指数(日経平均)を使っているため、9月の平均リターンにはこの毎年恒例の権利落ち分がいくらか機械的に含まれている点は留意が必要です(詳細は留意点)。

米国側では、ヘッジファンドの解約通知が決済日の45日前を期限とする「45日ルール」により、9月末解約に向けて8月中〜9月初めにポジション解消が集中しやすいという説明が一部の実務系メディアで語られています。ただしこれを統計的に検証した学術研究は確認できておらず、定性的な仮説の域を出ません。

09 · IS THERE A PRODUCT?

商品化はされているか

セルインメイ(第6号)で検証した通り、半年単位の季節性ローテーション型ETFとしてはSZNE(Pacer CFRA-Stovall Equal Weight Seasonal Rotation ETF)が存在しましたが、2026年5月に清算されています。SZNEは11〜4月・5〜10月の半年単位でセクターを入れ替える商品で、「9月だけを回避する」ような単月特化の商品ではありません。9月単体を対象にした上場ETF・ETNは、確認できた範囲では見当たりませんでした。

⚠ 留意点

一次情報

FAQ

Q. 「9月効果」とはどんなアノマリーですか?
9月は年間を通じて株価が下落しやすいとされる季節性のアノマリー(経験則)です。国内の証券会社のコラム等では「過去データでは株価が下がる頻度が最も高い月」のように紹介されますが、具体的な数値や出典が示されないまま流通していることが多く、当サイトはS&P500・NYダウ・NASDAQ総合・日経平均の4指数で最大98年分を自前実測しました。

Q. 本当に9月は他の月よりリターンが低いのですか?
指数によります。S&P500は1928〜2025年の98年間で平均▲1.12%と12ヶ月中最下位、他の月の平均+0.82%との差は統計的に有意(p=0.002)で、2001年・2008年の危機月を除いても有意差が残ります(p=0.004)。一方、日経平均は61年間の平均が▲0.36%で12ヶ月中2位ですが、統計的な有意差はそもそも確認できず(p=0.113)、2001年・2008年を除くとほぼゼロ(+0.01%)になります。「9月は弱い」はS&P500ほど頑健な現象ではなく、日本では2つの危機年が作った見かけ上の傾向という側面が強いといえます。

Q. 日本株でも同じことが言えますか?
直近10年(2016〜2025年)で見ると、日経平均の9月は平均+0.99%・勝率60%とむしろプラスの月に転じており、同期間のS&P500(平均▲1.34%・勝率50%)より成績が良くなっています。歴史的に9月が弱かったとされる日本株について、直近10年に限れば「下落の月」という説明は当てはまりません。

Q. 9月を避けて投資すべきですか?
本記事は特定の売買タイミングを推奨するものではありません。S&P500のように統計的な裏付けがある市場でも、9月の勝率は44.9%(98年中44勝54敗)で「負けやすい」というより「稀に大きく崩れる年がある」ことが平均を押し下げている構造です。中央値で見るとNYダウ(+0.06%)やNASDAQ総合(+0.25%)はむしろプラスで、平均だけを見て「9月は下がりやすい」と判断するのは早計です。

スポンサーリンク

あわせて読みたい

PR

米国株5,000銘柄以上に対応、松井証券なら24時まで取引可能

松井証券 口座開設はこちら →

本記事は公開情報・学術文献・市場データ(Yahoo Finance経由)を基に、当サイトが計算条件を明示した上で集計・整理した一般的な情報提供を目的としており、特定の売買タイミング・戦略・商品の採用を推奨・勧誘するものではありません。過去の実績・季節性は将来の成果を保証しません。投資に関する最終判断はご自身の責任で行ってください。

出典:松井証券マネーサテライト、Bouman & Jacobsen (2002)、Zhang & Jacobsen (2021)、Maberly & Pierce (2004)、市場データはYahoo Finance(2026年8月9日終値まで。実測・統計検定は当サイト算出、2026年8月10日時点・編集部構成)。