INVESTMENT STRATEGY ・ 投資の考え方 第26号
夏枯れ相場は半分だけ本当だった。8月の商いは41年間で最も細る——ただし静かになるどころか、急落は10月に次いで8月に集中していた
編集部・最終更新 2026年8月1日
8月の市場解説に必ず登場する「夏枯れ相場」。お盆休みと海外勢の夏季休暇で参加者が減り、商いが細って方向感が出にくくなる——という説明です。よく見るとこの言葉には2つの主張が入っています。①商いが細る(事実の主張)と、②だから相場は静かになる/薄商いで値が飛びやすい(因果の主張。しかも「静か」と「飛びやすい」は逆方向のことを同時に言われがちです)。
この①と②を分けて測りました。データはJPX(日本取引所グループ)が公開する月次売買代金の歴史統計41年分(1985年〜・市場一部→プライム)と、日経平均61年分(1965年〜)の日次データ。すべて当サイトの実測です(2026年8月1日時点・編集部構成)。
「商いが細る」は本物。8月は41年間で最も薄い月で、細るのはお盆から。ただし「枯れた8月は静か」は逆だった。8月は急落日ワースト30の集中が10月に次いで2番目に多く、2024年8月5日の▲12.4%は歴代2位。しかも近年の8月の急落はすべて年平均を上回る商いの中で起きており、「薄商いだから荒れやすい」という定番の説明も月次データでは確認できません(相関はむしろ正)。枯れるのは商いであって、値動きではありません。
8月の売買代金(対 年平均)
▲8.5%
中央値▲11.8%。1985〜2025年で12ヶ月中最薄
年内最薄月になった回数
12回 / 41年
最多。2位は1月の7回。30/41年で年平均割れ
急落日ワースト30のうち8月
6日
10月(8日)に次ぐ2位。7月は0日(1965年〜)
2024年8月5日
▲12.4%
下落率歴代2位。当月の商いは年平均比+9%
02 · THE 41-YEAR TEST
商いは本当に枯れるのか——41年の月別実測
JPXが公開する歴史統計から、東証主市場(2022年3月までは市場一部、同4月からはプライム。立会市場とToSTNeT市場の合計)の1日平均売買代金を1985年1月〜2025年12月の41年分取り、各月の値を「その年の12ヶ月平均=100」に指数化してから月別に集計しました。1日平均を使うのは営業日数の差(8月は祝日「山の日」がある年で20日前後)を除くため、年内比に直すのは市場規模が41年で何十倍にも拡大した影響を除くためです。
| 月 | 平均(年平均=100) | 中央値 | 年平均を下回った年 | 「年内最薄月」になった回数 |
| 1月 | 95.1 | 95.7 | 23/41年 | 7回 |
| 2月 | 105.2 | 104.7 | 18/41年 | 2回 |
| 3月 | 112.2 | 110.2 | 14/41年 | 0回 |
| 4月 | 103.0 | 99.5 | 22/41年 | 2回 |
| 5月 | 103.0 | 102.2 | 17/41年 | 0回 |
| 6月 | 99.5 | 100.0 | 20/41年 | 1回 |
| 7月 | 94.2 | 90.6 | 30/41年 | 3回 |
| 8月 | 91.5 | 88.2 | 30/41年 | 12回(最多) |
| 9月 | 103.1 | 98.1 | 23/41年 | 0回 |
| 10月 | 98.0 | 96.5 | 26/41年 | 5回 |
| 11月 | 100.1 | 98.3 | 24/41年 | 3回 |
| 12月 | 95.0 | 92.6 | 29/41年 | 6回 |
※当サイト実測。JPX「その他統計資料」歴史統計(現物市場)の月間売買代金(市場一部1985年1月〜2022年3月→プライム2022年4月〜、立会+ToSTNeT合計)。各月の1日平均売買代金をその年の12ヶ月平均で割って指数化し、41年分を平均。
結果ははっきりしています。8月は平均91.5・中央値88.2で、平均でも中央値でも12ヶ月中最薄。41年中30年で年平均を下回り(偶然なら半々のはずで、二項検定の片側p=0.002)、「その年で最も商いが薄い月」になった回数は12回と2位の1月(7回)を引き離して最多です。2位は7月(平均94.2)——夏枯れは実際には7月から始まり、8月に底を打つ2ヶ月の現象で、決算期末で商いが膨らむ3月(112.2)とは平均で20ポイント以上の差があります。
ただし「毎年必ず枯れる」わけではありません。年代別の8月平均は1985〜94年89.2 → 1995〜2004年92.3 → 2005〜14年89.6 → 2015〜25年94.6と直近11年はやや緩んでおり、しかも2024年(109.0)と2025年(103.6)は2年連続で8月の商いが年平均を上回りました。2024年は8月5日の暴落が商いを爆発させ、2025年は8月に日経平均が最高値圏を走った年です。夏枯れは「傾向としては最も堅い月別パターンの一つ、ただし直近2年は不成立」というのが正確な現在地です。
03 · THE OBON WEEK
枯れはじめるのはお盆から——年末年始に次ぐ「年間2番目の閑散地帯」
月の中のどこで細るのかを、日別の出来高(日経平均構成銘柄の合計出来高・2002年6月〜2026年7月)で見ます。各営業日の出来高を「その年の日次平均=100」に指数化し、8月を日付帯で刻みました。
| 8月の日付帯 | 出来高指数(平均) | 同(中央値) | 読み方 |
| 8月1日〜5日 | 103.1 | 99.2 | ほぼ平常。平均が高いのは2024年8月2日・5日の暴落出来高の影響 |
| 8月6日〜10日 | 102.4 | 96.0 | 決算発表の残りで商いが持つ |
| 8月11日〜16日(お盆) | 89.4 | 87.1 | ここから枯れる(約1割減) |
| 8月17日〜22日 | 84.7 | 80.8 | お盆明けの週が実は最薄 |
| 8月23日〜31日 | 86.3 | 80.7 | 月末まで戻りきらない |
※当サイト実測。^N225(日経平均)構成銘柄の合計出来高(Yahoo Finance)。この系列はJPXの月次売買高と対数相関r=0.958(288ヶ月)で整合することを確認した上で、水準ではなく「形」だけに使っています。
週単位で1年間を並べると、出来高が薄い週の1位は年末年始をまたぐ週(指数68〜76)で、2位のかたまりがお盆〜8月末の3週間(82〜89)です。つまり「お盆から8月末は、年末年始に次いで1年で2番目に市場参加者が少ない時間帯」——ここまでは通説どおりです。なお、東京証券取引所に「お盆休み」はありません。JPXの休業日は祝日と年末年始だけで、8月の休場は山の日(2016年に新設。2026年は8月11日・火)の1日のみ、お盆の期間も立会は通常どおり行われています。山の日ができる前の8月は祝日が1日もない月でした——夏枯れは取引所が閉まる現象ではなく、開いている市場から注文を出す側がいなくなる現象です。
夏枯れは取引所が閉まる現象ではなく、開いている市場から注文を出す側がいなくなる現象です。
お盆からの出来高実測より
04 · NOT SO QUIET
枯れた8月は静かなのか——急落は10月に次いで多い
では値動きです。日経平均の日次データ61年分(1965年1月〜2026年7月)で、月別のリターン・ボラティリティ・急落日の分布を集計しました。
| 月 | 月次リターン平均 | 勝率 | 日次変動の標準偏差 | ±3%以上動いた日の割合 | 急落日ワースト30 |
| 1月 | +1.35% | 40/61 | 1.31% | 4.19% | 0日 |
| 2月 | +0.76% | 35/62 | 1.13% | 2.18% | 0日 |
| 3月 | +1.08% | 36/62 | 1.42% | 4.54% | 3日 |
| 4月 | +1.36% | 39/62 | 1.33% | 3.53% | 4日 |
| 5月 | +0.64% | 33/62 | 1.13% | 2.12% | 1日 |
| 6月 | +0.66% | 38/62 | 1.18% | 2.56% | 3日 |
| 7月 | ▲0.13% | 30/62 | 1.09%(最低) | 1.88%(最少) | 0日 |
| 8月 | ▲0.40%(最下位) | 30/61 | 1.33% | 3.80% | 6日(2位) |
| 9月 | ▲0.36% | 29/61 | 1.27% | 3.25% | 2日 |
| 10月 | +0.40% | 32/61 | 1.63%(最高) | 4.33% | 8日(1位) |
| 11月 | +1.29% | 36/61 | 1.32% | 2.91% | 2日 |
| 12月 | +1.49% | 42/61 | 1.18% | 2.86% | 1日 |
※当サイト実測。^N225の日次終値(1965年1月5日〜2026年7月30日)。月次リターンは月末終値比、「急落日ワースト30」は全15,135営業日の前日比下落率ワースト30日がどの月に属したかの集計。TOPIX連動ETFの1305とのクロス検証では月次リターン相関r=0.933、8月の平均は日経▲0.96%に対し1305▲0.94%(2008年以降の共通窓)と整合します。
3つのことが同時に見えます。第一に、月次リターンの平均は8月▲0.40%で12ヶ月最下位。9月▲0.36%・7月▲0.13%と、マイナスの月は夏の3ヶ月だけです(1990年以降に窓を絞ると8月は▲1.06%まで悪化します——セルインメイの検証で使った窓と同じ値です)。ただし勝率は30勝31敗とほぼ五分で、「8月は必ず下がる」わけではありません。
第二に——ここが通説と逆です——8月は静かな月ではありません。日次変動の標準偏差1.33%は10月・3月に次ぐ上位で、±3%以上動いた日の割合も4番目。そして61年間の急落日ワースト30のうち6日が8月に集中し、これは10月(8日。1987年ブラックマンデーと2008年リーマン危機の月)に次ぐ2位です。8月の6日の顔ぶれを並べます。
| 日付 | 前日比 | 何が起きたか |
| 2024年8月5日 | ▲12.4% | 円キャリー取引の巻き戻し。下げ幅(▲4,451円28銭)は現在も史上最大、下落率は歴代2位 |
| 1971年8月16日 | ▲7.23% | ニクソン・ショック(金・ドル交換停止の発表を受けた急落) |
| 1991年8月19日 | ▲5.95% | ソ連8月クーデター |
| 1971年8月19日 | ▲5.93% | ニクソン・ショックの余波(円切り上げをめぐる混乱) |
| 1990年8月23日 | ▲5.84% | 湾岸危機の深刻化(イラクのクウェート侵攻は8月2日) |
| 2024年8月2日 | ▲5.81% | 日銀利上げ後の円高と米景気減速懸念 |
※下落率は当サイト実測(^N225終値ベース)。要因欄は代表的に報じられた整理で、単一の原因に帰せるものではありません。1971年当時は土曜の半日立会があり、8月16日の公式の前日比は土曜(8月14日)終値比の▲7.68%です(Yahoo Financeは土曜立会を収録しないため、本表は8月13日金曜終値比になっています)。
ワースト30に入らない規模まで含めれば、8月はさらに賑やかです。2007年8月9日のパリバ・ショック(BNPパリバの傘下ファンド凍結)、2011年8月5日のS&Pによる史上初の米国債格下げ、1998年8月17日のロシア危機(ルーブル切り下げと国内債の支払停止)、2015年8月11日の人民元切り下げ(→8月24〜25日の世界株安)、2019年8月5日の人民元7元突破——通貨・戦争・政変という「世界の事件」が、なぜか8月に積み重なってきたのが過去61年です。そして荒れは下方向だけではありません。急騰日ベスト30にも8月は3日入っており、うち2024年8月6日の+10.2%は上昇率で歴代3位——前日に歴代2位の暴落、翌日に歴代3位の急騰です。日経平均の月間値幅(高値−安値)の歴代1位と2位は、どちらも8月です(2024年8月の7,189円33銭と、1990年8月の7,100円36銭)。
第三に、意外な脇役が7月です。「静かな夏」が実在するとすれば、それは8月ではなく7月——日次変動の標準偏差は12ヶ月で最低(1.09%)、±3%動いた日の割合も最少(1.88%)、急落日ワースト30はゼロ。商いの薄さは8月に次ぐ2位なのに、値動きは1年で最も穏やかです。「参加者が減った市場」そのものは、荒れるどころか凪いでいます。
「参加者が減った市場」そのものは、荒れるどころか凪いでいます。
月別ボラティリティの実測より
05 · CAUSE, REVERSED
「薄商いだから荒れる」は本当か——因果は逆向きだった
それでも「8月に急落が多いのは、薄商いで板が薄く、少しの売りで値が飛ぶからだ」という説明は直感的で強力です。これを正面から測ります。1985年以降の492ヶ月について、その月の売買代金(年内比)と、その月の日次変動の標準偏差の相関を取りました。
結果はr=+0.092(95%信頼区間 +0.003〜+0.179)。「薄いほど荒れる」なら符号はマイナスになるはずが、ゼロをわずかに上回るプラス——つまり商いが厚い月ほど荒れる方向です。売買代金が下位2割の「薄い月」の日次標準偏差は平均1.22%、上位2割の「厚い月」は1.36%。月次リターンも薄い月▲0.52%に対し厚い月+1.91%で、閑散はむしろ「動かない・上がらない」とセットでした。
8月の急落の現場を見ると、この因果の向きがもっとはっきりします。急落があった年の8月の商い(年内比・年平均=100)を並べます。
| 急落があった8月 | その月の売買代金(年平均=100) | 読み方 |
| 1990年(湾岸危機) | 80.8 | 薄い8月に急落が来た |
| 1991年(ソ連クーデター) | 57.2 | バブル崩壊後の極端な薄商いの中の急落 |
| 1998年(ロシア危機) | 90.3 | やや薄い |
| 2007年(パリバ・ショック) | 110.2 | 年平均超え |
| 2011年(米国債格下げ) | 103.1 | 年平均超え |
| 2015年(人民元切り下げ) | 115.7 | 年平均超え |
| 2024年(円キャリー巻き戻し) | 109.0 | 年平均超え。8月5日単日は記録的大商い |
※当サイト実測(JPX月次売買代金・1日平均の年内比)。
1990年代までは「薄い8月に事件が来た」形もありましたが、2007年以降の8月の急落は、4回とも商いが年平均を上回る月に起きています。順序はこうです——枯れていたから崩れたのではなく、事件が来た瞬間に、休んでいたはずの参加者が一斉に戻ってきて商いが膨らむ。2024年8月5日は「夏枯れの薄商いの中の暴落」として語られがちですが、実際にはこの日の東証プライムの売買代金は概算7兆9,674億円と当時の過去最大(この記録はその後の2025年9月・2026年5月にさらに更新されました)。デリバティブ市場ではTOPIX先物・日経225先物・グロース市場250指数などでサーキットブレーカーが相次いで発動し、JPXの月次統計でも2024年8月はプライム市場の月間売買代金が当時の記録を更新した月です。月全体でも商いは年平均を9%上回りました。夏枯れが暴落を大きくしたという説明は、少なくとも売買代金からは支持されません。
枯れていたから崩れたのではなく、事件が来た瞬間に、休んでいたはずの参加者が一斉に戻ってきて商いが膨らむ。
本記事の結論より
06 · TESTING THE PROVERB
「閑散に売りなし」を測る
最後に格言側です。「閑散に売りなし」が本当なら、商いが細りきった後は買いの優位があるはずです。1日平均売買代金を過去12ヶ月平均と比べ、下位1割まで細った「閑散月」49ヶ月を抽出し、その後の日経平均を測りました。
結果は、閑散月の翌月平均+0.28%(勝率26勝23敗)・3ヶ月+1.19%。同じ期間の全月平均は翌月+0.49%・3ヶ月+1.51%なので、閑散の後のリターンはむしろわずかに低めで、格言が言う優位は確認できませんでした。差は小さく「閑散の後は下がる」とも言えませんが、少なくとも「閑散は買い場」をこの41年のデータから導くことはできません。前セクションの「薄い月は動かない・上がらない」と合わせると、閑散は転換のシグナルというより、単に需要が弱い状態がそのまま続いている姿に見えます。
閑散は転換のシグナルというより、単に需要が弱い状態がそのまま続いている姿に見えます。
「閑散に売りなし」の実測より
07 · GONE FISHIN'
学術研究——夏枯れは世界共通の「Gone fishin'」
夏に売買が細る現象には、「Gone fishin'(釣りに行ってきます)」という題の世界横断の学術検証があります。HongとYuの2009年の論文(Journal of Financial Markets 12巻4号)は世界51の株式市場を対象に、夏(北半球は7〜9月)とそれ以外で売買回転率を比較し、夏に回転率が平均7.9%低下(大型10市場では12.9%低下)、同じ時期に月次リターンも平均0.90%ポイント低いことを示しました。航空旅客数やホテル稼働率が夏に増えることまで確認して、「市場参加者が休暇に行くから」という説明を裏付けています。日本のお盆と同じ構造が、世界中の市場で観測されているということです。
ただし同論文の国別の推定では、日本は回転率の低下(約3.9%・t値8.12)は統計的に明確な一方、リターンの低下(月1.8%ポイント)は5%水準では有意になりません(t値1.79。サンプルは1973〜2005年)。「日本でも夏枯れ=出来高減は確実に存在する、ただしリターンへの効きは世界平均より弱い」——本記事の実測(商いの薄さははっきり出るが、月別リターンの平均差は勝率でみるとほぼ五分)とも整合する結論です。
一方で「8月に事件が多い」ことの学術的な説明は確立していません。ニクソン・ショック、クウェート侵攻、ソ連クーデター、ロシア危機、パリバ・ショック、米国債格下げ、人民元切り下げ、円キャリー巻き戻し——これらが8月に並んだのは、地政学や政策の都合であって市場の薄さの帰結ではない、というのが前セクションまでの実測と整合的な読み方です。夏枯れ(参加の低下)は再現性のある現象、8月の急落集中は事後的には目立つが因果の説明を持たない歴史——この2つを区別しておくのが、データから言える誠実な整理だと考えます。
08 · THIS AUGUST
2026年8月のカレンダー——休場は山の日だけ、FOMCはなくジャクソンホールがある
検証を今月に引きつけて締めます。2026年8月の東証の休場は山の日(8月11日・火)の1日だけで、お盆も立会は通常どおりです。実測どおりなら商いが細りはじめるのはお盆の週から。米国側の材料は月初に集中しており、8月3日にISM製造業景況指数、8月7日に雇用統計があります。一方でFOMCは8月に開催がなく(7月末の次は9月中旬)、中央銀行イベントの空白を埋めるのが8月下旬のジャクソンホール会議です。カンザスシティ連銀主催の経済シンポジウムで、2026年は8月27〜29日開催(テーマは「Financial Innovation: Implications for Payments and Policy」)と発表されています。
本記事の実測が示すのは、「8月は商いが細る、ただしポジションの薄さと静けさは別物で、事件が来れば商いも値動きも一瞬で戻る」ということです。夏枯れという言葉から「何も起きない月」を予想するのも、「薄商いだから暴落する月」を予想するのも、どちらも41年のデータとは合いません。今年の8月が枯れるかどうかは、9月頭にJPXの月次統計が出た時点でこのページの数字に足して答え合わせをします(2024年・2025年は2年連続で「枯れなかった」年でした)。
留意点
- 本記事は過去データの集計・検証であり、特定の時期の売買や特定の銘柄・商品の取引を推奨するものではありません。過去のパターンは将来の再現を保証しません。
- 売買代金はJPX歴史統計の月間値(立会市場+ToSTNeT市場の合計)で、市場一部(〜2022年3月)とプライム(2022年4月〜)を接続しています。2022年は旧市場と新市場が年内に混在するため、同年の月別指数にはわずかな段差があります(結論に影響しない規模です)。
- 日別の出来高は日経平均構成銘柄の合計出来高(Yahoo Finance・2002年6月〜)を使い、JPXの月次売買高と対数相関r=0.958で整合することを確認した上で、水準ではなく年内の相対的な「形」だけに用いています。
- 月別リターンの平均差は分布の重なりが大きく、統計的に頑健な「売買ルール」になる水準ではありません。8月の平均は最下位でも勝率はほぼ五分です。月別の平均値に基づく機械的な売買(例:8月だけ売る)を当サイトは検証しておらず、推奨もしません。セルインメイ戦略の執行コストの検証は第6号を参照してください。
- 急落日の「何が起きたか」欄は代表的な報道・史実に基づく整理で、株価変動を単一の要因に帰せるものではありません。
- 売買代金とボラティリティの相関(r=+0.092)は「薄いほど荒れるではない」ことを示す弱い証拠であり、「厚いほど荒れる」と強く主張できる水準でもありません(信頼区間の下限はほぼゼロです)。
- 二項検定(30/41年・p=0.002)は「8月は年平均より薄いか」という方向仮説の片側p値です。
- 他資料と数値が異なる場合は、対象市場(プライムのみか全市場か)・立会内/ToSTNeTの扱い・窓の違いによります。
FAQ
Q. 夏枯れ相場とはどういう意味ですか?
夏場、特にお盆前後に市場参加者が減って売買が細り、相場に方向感が出にくくなるとされる状態を指す相場用語です。もともと「夏枯れ」は商売一般で夏に客足が落ちることを指す言葉で、それが株式市場にも転用されました。当サイトがJPXの月次売買代金41年分(1985〜2025年)で実測すると、8月の1日平均売買代金はその年の平均に対して平均▲8.5%・中央値▲11.8%と12ヶ月中最も薄く、「商いが細る」という部分はデータで確認できます。ただし「だから相場が静かになる」は誤りで、8月は急落日の集中が10月に次いで2番目に多い月でした。
Q. 8月の株式市場は本当に取引が減りますか?
減ります。東証の主市場(市場一部→プライム)の1日平均売買代金を1985〜2025年の41年間で月別に集計すると、8月はその年の平均に対して平均91.5・中央値88.2(年平均=100)と12ヶ月中最薄で、41年中30年で年平均を下回り、「その年で最も商いが薄い月」になった回数も12回と最多でした(2位は1月の7回)。日別に見ると細るのはお盆からで、8月上旬はほぼ平常、8月11〜16日で約1割減、8月17日以降は約15〜19%減。お盆から8月末は年末年始に次ぐ年間2番目の閑散地帯です。ただし2024年・2025年は2年連続で8月の商いが年平均を上回っており、夏枯れが成立しない年もあります。
Q. 8月に株価は下がりやすいですか?
平均すると12ヶ月で最も弱い月ですが、差はわずかで、勝率は半分近くあります。日経平均の月別リターン(1965〜2026年)は8月が平均▲0.40%と最下位、9月▲0.36%・7月▲0.13%と夏の3ヶ月だけがマイナスでした。ただし8月の勝率は30勝31敗とほぼ五分で、「8月は必ず下がる」わけではありません。8月の本当の特徴は平均の弱さより裾の重さで、1965年以降の急落日ワースト30のうち6日が8月に集中し(10月の8日に次ぐ2位)、2024年8月5日の▲12.4%は歴代2位の下落率です。
Q. 「閑散に売りなし」という格言は本当ですか?
実測では優位を確認できませんでした。「閑散に売りなし」は、商いが細って安値圏で放置されている相場は売り物が出尽くしており、売り込んでも利益が薄く、やがて反発しやすい——という相場格言です。当サイトが1日平均売買代金を過去12ヶ月平均と比べ、下位1割まで細った「閑散月」49ヶ月の後の日経平均を測ると、翌月平均+0.28%(勝率26勝23敗)・3ヶ月+1.19%で、全期間の平均(翌月+0.49%・3ヶ月+1.51%)をむしろ下回りました。閑散の後に買いの優位があるとは、この41年のデータからは言えません。
本記事は公開市場データ(JPX統計・Yahoo Finance)および学術文献を基に、当サイトが計算条件を明示した上で集計・整理した一般的な情報提供を目的としており、特定の時期・銘柄・商品の売買を推奨・勧誘するものではありません。過去の実績・パターンは将来の成果を保証しません。投資に関する最終判断はご自身の責任で行ってください。
出典:JPX「その他統計資料」歴史統計(現物市場・月間売買高/売買代金)・営業時間/休業日一覧・サーキットブレーカー発動履歴・2024年8月の売買状況、日経平均プロフィル、Yahoo Finance(^N225・1305.T)、Hong & Yu (2009) Journal of Financial Markets 12(4)、野村證券・大和証券の証券用語解説集、日本証券業協会、カンザスシティ連銀。市場データは2026年7月30日終値・売買代金は2026年6月分まで(実測・集計は当サイト算出、2026年8月1日時点・編集部構成)。