INVESTMENT STRATEGY ・ 投資の考え方 第19号
朝の相場見通しは3分の2が当たる。ただし前夜の米国株を写すだけの予想と、1日も違わなかった
編集部・最終更新 2026年7月29日
証券会社は毎朝、その日の日経平均が上がるか下がるかを配信しています。前夜の米国市場を材料に挙げて、反落か続伸かを述べ、下値または上値のメドを数字で示す——という構成のものです。これは毎日、その日の夕方に答え合わせができるという珍しい性質を持っています。
そこで2026年4月30日から7月29日までの61営業日を採点しました。あわせて、素朴なベースライン——前夜の米国市場の上下をそのまま写すだけのルール——を同じ日に当てて、差を取っています(2026年7月29日時点・編集部構成)。
的中率は本物。ただし上乗せはゼロだった。方向を明示した48日のうち32日が的中して66.7%。ところが前夜のSOXを機械的に写すだけの予想も、同じ48日で32日的中——1日も違いません。さらに15年半で測ると、当たっているのは寄り付きまで(70.8%)で、寄ってから引けまでは50.6%のコイン投げでした。
見通しの的中率
66.7%
32/48日・p=0.015
前夜のSOXを写すだけ
66.7%
32/48日・完全に同数
SOXと違う方向を言った日
8日
48日中・成績は4勝4敗
寄り付き後の的中率
50.6%
15年半3,808日で実測
01 · THE METHOD
測り方 — 採点対象と、引き算するベースライン
採点したのは、岡三オンラインが会員向けに毎朝配信している日経平均の相場見通しです。同じ日の夕方に終値の実績が配信されるため、予想と結果が同じ発信元から揃った形で残ります。この対称性が採点を可能にしています。
採点は上げか下げかの方向と、本文が示す上値メド・下値メドの水準の2点です。61営業日のうち、方向を明示していたのは48日。残りの13日は「底堅い」「上値の重い展開」「不安定な動き」といった方向を言わない表現だったため、方向の採点からは外しました。
ベースラインを置かないと「当たる」で終わる
ここが本記事の要点です。的中率だけを測ると66.7%という数字が出て、話は「当たる」で終わります。しかし見通しの本文は毎朝、前夜の米国市場に言及しています。だとすれば、比べるべき相手はコイン投げではなく「前夜の米国市場をそのまま写すルール」です。
そこで同じ48日に対して、前夜のフィラデルフィア半導体株指数(SOX)などが上がっていたら「上げ」、下がっていたら「下げ」と機械的に答えるだけの予想を作り、成績を並べました。これは第11号・第14号で使った「見かけの効果が既知の要因で説明し尽くせるか」という操作と同じ形です。
転記ミスの検出
実績の終値はメールから転記しています。転記ミスが混じると採点そのものが崩れるため、61日すべてをYahoo Financeの^N225と突き合わせました。平均絶対差・最大差ともに0.00円で一致しています。
02 · THE HEADLINE NUMBER
的中率は本物だった
まず結果から。方向を明示した48日のうち32日が的中し、66.7%でした。コイン投げ(50%)との片側二項検定でp=0.015ですから、偶然と片付けられる水準ではありません。
| 区分 | 日数 | 的中 | 的中率 |
| 全体(方向を明示した日) | 48 | 32 | 66.7% |
| 「上げ」と予想した日 | 29 | 20 | 69.0% |
| 「下げ」と予想した日 | 19 | 12 | 63.2% |
| 参考:毎日「上げ」と言うだけ | 61 | 32 | 52.5% |
※当サイト実測。期間は2026年4月30日〜7月29日。実際に上昇した日は61日中32日で52.5%だったため、「毎日上げと言い続ける」戦略の的中率は52.5%になります。66.7%はこれを14.2ポイント上回ります。
ここで止めれば、「証券会社の朝の見通しはよく当たる」という結論になります。実際、この数字自体に嘘はありません。問題は何がそれを当てているかです。
03 · THE BASELINE TEST
ただし、前夜の米国株を写すだけの予想と同点だった
同じ48日に、前夜の米国市場の上下をそのまま写す予想を当てはめました。
| 予想の作り方 | 的中 | 的中率 | |
| 朝の相場見通し | 32/48 | 66.7% | |
| 前夜のSOXを写すだけ | 32/48 | 66.7% | |
| 前夜のナスダックを写すだけ | 31/48 | 64.6% | |
| 前夜のS&P500を写すだけ | 31/48 | 64.6% | |
| 前夜のダウを写すだけ | 30/48 | 62.5% | |
| 前夜のVIXを写すだけ(符号反転) | 32/48 | 66.7% | |
| 前夜のドル円を写すだけ | 27/48 | 56.2% | |
| 前夜のWTI原油を写すだけ(符号反転) | 23/48 | 47.9% | |
※当サイト実測。すべて同じ48日で比較。VIX・原油は「上がると株安」の関係なので符号を反転して判定しています。両方の66.7%(32/48)は独立に計算した結果で、日ごとの内訳は一致しません。
SOXを写すだけの予想が、朝の見通しと同じ32日的中でした。これは偶然の同点ではありません。見通しの方向と前夜の市場の方向の一致率を測ると、次のようになります。
- 前夜のナスダックと同じ方向 …… 85.4%(41/48日)
- 前夜のSOXと同じ方向 …… 83.3%(40/48日)
- 前夜のS&P500と同じ方向 …… 81.2%(39/48日)
独自判断が入った8日は、4勝4敗
決定的なのはここです。見通しが前夜のSOXと違う方向を言ったのは、48日中わずか8日でした。残る40日はSOXと同じことを言っており、その40日の的中率は70.0%です。
では、あえて違うことを言った8日の成績はどうだったか。
| SOXと違う方向を言った8日 | 正解した回数 | 勝率 |
| 朝の相場見通し | 4/8 | 50.0% |
| 前夜のSOX(=反対側) | 4/8 | 50.0% |
※当サイト実測。8日の95%信頼区間は21.5%〜78.5%と非常に広く、この4勝4敗そのものから「独自判断に価値がない」と断定することはできません。言えるのは、上乗せがあったとしても8日分しか出番がなく、その8日で優位が観測されなかったということです。
つまり構造はこうです。見通しの83%は前夜の米国市場の写しで、その部分が的中率を作っている。独自の判断が入るのは残り17%で、そこには測れるほどの優位が出ていない。的中率66.7%は本物ですが、それは無料で誰でも見られる指標が持っている確度だということになります。
的中率66.7%は本物ですが、それは無料で誰でも見られる指標が持っている確度だった。
— 見通しとSOXの方向一致率83%の実測より
04 · THE PRICE TARGETS
数値のメドは、ほとんど当たっていない
方向とは別に、見通しは前日終値から何円ほど上/下という形で具体的な水準を示します。上値メド・下値メド、あるいは上下のレンジです。こちらも採点しました。
| 示された水準 | 回数 | ザラ場で到達 | 終値でも突破 |
| 上値メド | 29 | 62.1% | 34.5% |
| 下値メド | 19 | 68.4% | 42.1% |
| 上下のレンジ提示 | 10 | 50.0%(終値がレンジ内) | 20.0%(ザラ場も完全に内側) |
※当サイト実測。ザラ場の高値・安値はYahoo Financeの^N225。レンジ提示の行だけ列の意味が異なり、「ザラ場で到達」欄は終値がレンジ内に収まった割合、「終値でも突破」欄は高値・安値ともレンジ内に収まった割合です。
読み方は2つあります。
- 目標水準としては当たらない。上値メドを終値で超えたのは29回中10回(34.5%)。示された水準まで実際に上がりきることのほうが少数派です。
- タッチする線としては6〜7割。ザラ場で一度は到達するのは62.1%・68.4%。ただしこれは「その日の値幅の範囲内に置かれた線」という以上の意味を持ちません。
値幅そのものについても測りました。示されたメドまでの距離は中央値1,104円、実際の終値の値動きは中央値1,009円。そして実際の値幅が予想の値幅を上回った日は48日中24日、ちょうど50.0%でした。値幅の見立ては、完全なコイン投げです。
05 · THE LONG RUN
この3カ月が特殊だったわけではない
61日は短い期間です。66.7%の95%信頼区間は52.5%〜78.3%と広く、この期間だけでは何とも言えません。そこで「前夜のSOXを写す」ルールだけを2011年から2026年7月までの3,808営業日に広げて測りました。
| 前夜のSOXの方向が当てるもの | 的中率 | 95%信頼区間 |
| 当日の寄り付きの方向 | 70.8% | 69.4% 〜 72.2% |
| 当日の終値の方向(前日比) | 63.6% | 62.0% 〜 65.1% |
| 当日の寄り付き→引けの方向 | 50.6% | 49.0% 〜 52.2% |
※当サイト実測。2011年1月5日〜2026年7月29日、n=3,808営業日。Yahoo Financeの^N225始値・終値と^SOX終値。
終値方向の63.6%は年別で最低が2016年の55.1%、最高が2022年の69.7%。検証区間を含む2026年は66.9%で、直近3カ月だけを切り出しても65.6%と長期平均とほぼ同じでした。特殊な局面ではなく、恒常的に成立している現象です。
ただし平均値は嘘をつく
63.6%という平均には、大きな中身の差が隠れています。前夜のSOXの変動幅で5等分すると次のとおりです。
| 前夜のSOXの変動幅 | その分位の中央値 | 日数 | 終値方向の的中率 |
| 最小 | 0.17% | 762 | 50.8% |
| 小 | 0.56% | 761 | 55.3% |
| 中 | 1.00% | 762 | 61.7% |
| 大 | 1.72% | 761 | 71.4% |
| 最大 | 3.08% | 762 | 78.6% |
※当サイト実測。同上の3,808営業日を前夜のSOXの変動幅(絶対値)で5等分。
前夜の米国市場が静かだった日は、50.8%——コイン投げです。大きく動いた日は78.6%当たります。つまり「朝の見通しは3分の2当たる」という要約は、約半分の日について当たらないことを覆い隠しています。当たる日と当たらない日は、前夜の変動幅を見れば事前に区別できます。
前夜の米国市場が静かだった日は50.8%——コイン投げです。大きく動いた日は78.6%当たります。
— SOXの変動幅5分位別・3,808営業日の実測より
06 · WHERE IT BREAKS DOWN
先読みの賞味期限は、寄り付きで切れる
上の表でいちばん重要なのは寄り付き70.8%と、寄り引け50.6%の落差です。
前夜の米国市場が当てているのは、主に「どこで寄るか」です。前日終値から寄り付きまでのギャップとの相関はr=+0.562。ところが寄り付いてから引けまでの値動きとの相関はr=+0.132しかありません。
これは市場が非効率だという話ではなく、むしろ逆です。前夜の米国市場の情報は、東京が寄り付いた瞬間にはもう価格に入っている。だから寄った後の値動きを、寄る前の材料では説明できません。
前夜の米国市場の情報は、東京が寄り付いた瞬間にはもう価格に入っている。
— 寄り付き70.8%・寄り引け50.6%の実測より
この「東京の寄り付きが米国市場の情報を受け取る」という構造自体は古くから知られていて、Hamao・Masulis・Ng(1990)は米国市場のボラティリティが翌日の東京市場の寄り付きに波及することを実証しました。近年ではLou・Polk・Skouras(2019)が、株式のリターンを夜間(引け→寄り)と日中(寄り→引け)に分解すると別々の性質を持つことを示しています。本記事の実測は、この分解が日経平均でもそのまま出ることを確認した形です。
では引けを動かしているのは何か
寄り引けの値動きと最も相関が高かったのは、同じ時間帯に動いている韓国のKOSPI(r=+0.491)でした。同方向に引けた割合は63.3%です。ただしこれは寄り付いた後にしか分からない情報なので、朝の予想には使えません。
引けを動かすのは当日ザラ場で起きることであって、寄り前の材料ではない——というのが実測から出る答えです。
07 · CAN YOU TRADE IT
当たることと、儲かることは別
「66.7%当たる」と聞くと、それで売買すれば儲かりそうに思えます。実際にやるとどうなるかを測りました。
| 前夜のSOXの方向どおりに売買 | 累積 | 年率 | シャープレシオ | 勝率 |
前日の引けで建てて当日の引けで返す ※実行不能 | 桁外れ | +175.9% | 5.00 | 63.6% |
当日の寄りで建てて引けで返す ※実行可能 | +414.5% | +11.4% | 0.78 | 50.6% |
| 参考:単純に持ち続ける | +490.8% | — | — | — |
※当サイト実測。2011年1月〜2026年7月、手数料・スリッページ・貸株料は考慮していません。売りは実際には信用取引になるためコストがさらに乗ります。
1行目は実行できません。前夜の米国市場を見てから前日の終値で建てることは物理的に不可能だからです。バックテストでこの形を組むと年率175.9%・シャープレシオ5.00という数字が出ますが、これは未来の情報を使った計算にすぎません。
実行できるのは2行目です。勝率50.6%、累積+414.5%で、単純に持ち続けた+490.8%に負けます。方向の的中率が高くても、当たっている部分(ギャップ)を取れないなら収益にはなりません。
方向の的中率が高くても、当たっている部分(ギャップ)を取れないなら収益にはなりません。
— 寄り引け売買シミュレーション(2011〜2026年)の実測より
予測可能性が出ても取引コストや実行制約で消えるという構図は、WelchとGoyal(2008)が株式リスクプレミアムの予測変数について広く示したところです。彼らは論文中で標本内では有意に見える予測変数が標本外ではほとんど機能しないことを示しました。
08 · THE BETTER SIGNAL
寄り付き前に見るなら、何を見るのが一番よいか
朝の見通しに上乗せがないのなら、自分で見るしかありません。寄り付き前に手に入る指標を総当たりで測りました。
| 寄り前に見られる指標 | 寄り付きの方向 | 終値の方向 | 寄り引けの方向 |
| CME日経225先物(円建て・夜間) | 82.3% | 72.1% | 52.1% |
| 前夜のSOX | 70.8% | 63.6% | 50.6% |
※当サイト実測。2011年1月〜2026年7月、n=3,808営業日。先物は夜間の直近終値が前日の日経平均終値より上か下かで判定。ドル建て(NKD)は水準が別物のため使っていません。
最も役に立つのはCMEの日経225先物でした。実際のギャップとの相関はr=+0.811(決定係数0.658)で、回帰すると先物が前日終値から1%乖離しているとき実際のギャップは平均0.641%です。SOXの70.8%を大きく上回ります。
当然といえば当然で、これは日経平均そのものが夜間に取引されている価格だからです。ただしここでも寄り引けは52.1%——先物を見ても、寄った後は分かりません。
そしてこの先物価格は各社が無料で公開しています。寄り付き前に最も確度の高い情報は、すでに誰でも手に入る場所にあります。
当たる日かどうかは、事前に分かる
本記事でいちばん実用に近い部分を置いておきます。前夜のSOXの変動幅ごとに、東京がどう寄ったかの実測です。
| 前夜のSOX | 日数 | 寄り付きの平均 | 同方向に寄った割合 | 引けまで同方向 |
| ▲3%以下 | 206 | ▲0.96% | 89% | 79% |
| ▲3%〜▲2% | 204 | ▲0.70% | 83% | 79% |
| ▲2%〜▲1% | 443 | ▲0.42% | 76% | 66% |
| ▲1%〜▲0.25% | 617 | ▲0.11% | 61% | 52% |
| ±0.25%(ほぼ動かず) | 538 | +0.07% | 53% | 50% |
| +0.25%〜+1% | 747 | +0.21% | 64% | 60% |
| +1%〜+2% | 573 | +0.46% | 78% | 71% |
| +2%〜+3% | 281 | +0.61% | 85% | 74% |
| +3%以上 | 199 | +0.83% | 92% | 78% |
※当サイト実測。2011年1月〜2026年7月、n=3,808営業日。「同方向に寄った割合」は前夜のSOXと同じ符号で寄り付いた日の割合、「引けまで同方向」は終値が前日比で同じ符号だった割合。
網掛けの行が「何も言えない日」です。前夜のSOXが±0.25%しか動いていない538日は、寄り53%・引け50%——予想する材料がありません。この帯に入る日にも見通しは配信され、そして当たったり外れたりします。
留意点
- 本記事は配信されている見通しの文章を一切引用していません。配信元が本文の転載を禁じているため、記事に載せているのは当サイトが自分で採点した集計値のみです。日別の予想内容の一覧も掲載していません。
- 採点は特定の1社の配信を対象にしたものです。他社の見通しが同じ性質を持つかは検証していません。ただし前夜の米国市場に言及する構成はこの種の記事に広く見られるものであり、結論が1社固有である可能性と、業界全体の性質である可能性の両方が残ります。「証券会社一般がそうだ」とは言えません。
- 61営業日は短い標本です。的中率66.7%の95%信頼区間は52.5%〜78.3%と広く、この期間だけでは50%を上回ることしか言えません。SOXと違う方向を言った8日にいたっては信頼区間が21.5%〜78.5%で、4勝4敗から「独自判断に価値がない」と結論することはできません。長期側の3,808営業日の検証は、ベースライン(SOXを写すルール)についてのみ行ったものです。
- 検証期間は人工知能・半導体関連が相場を主導し、日経平均が1日で2,000円超動く日が繰り返された局面です。前夜の米国市場の変動幅が大きい日ほど的中率が上がるという性質があるため、この期間の的中率は平穏な相場よりも高めに出ている可能性があります。
- 方向の採点から外した13日(「底堅い」「上値の重い展開」等)は、外したこと自体が判断を含みます。この13日の実際の値幅は中央値883円、最大3,005円で、方向を言わなかった日に相場が動かなかったわけではありません。
- 売買を想定した試算は手数料・スリッページ・貸株料・税金を含んでいません。売り建ては信用取引になるためコストがさらに乗り、実際の成績は表の数値より悪くなります。特定の売買手法を推奨するものではありません。
- 「前日の引けで建てる」試算は未来の情報を使った実行不能な計算です。バックテストで高い成績が出る形の例として掲載しており、実行可能性を示すものではありません。
- 相関係数は線形の関係のみを捉えるものであり、因果関係を示すものではありません。また本記事の的中率はいずれも過去の集計であり、将来の的中率を保証しません。
FAQ
Q. 証券会社の朝の相場見通しは当たりますか?
当たります。2026年4月30日から7月29日までの61営業日を採点したところ、上げか下げかを明示した48日のうち32日が的中し、66.7%でした。コイン投げとの片側二項検定でp=0.015なので、偶然とは言いにくい水準です。ただし前夜のフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が上がったら上、下がったら下と機械的に予想するだけのルールも、同じ48日で32日的中と1日も違いませんでした。見通しの方向は前夜のナスダックと85.4%、SOXと83.3%が同じで、SOXと違う方向を言った日は48日中8日しかなく、その8日は4勝4敗です。つまり的中率そのものは本物ですが、当てているのは前夜の米国市場であって、そこに独自の判断が上乗せされている形跡は見つかりませんでした。
Q. その的中率は、この3カ月だけの特殊な現象ではありませんか?
特殊ではありません。前夜のSOXの上下をそのまま日経平均の予想にするルールを2011年から2026年7月までの3,808営業日で測ると、終値の方向の的中率は63.6%(95%信頼区間62.0%から65.1%)でした。年別では最低が2016年の55.1%、最高が2022年の69.7%で、検証区間を含む2026年は66.9%です。恒常的に成立している現象で、特定の期間に限った話ではありません。ただし的中率は前夜の変動幅に強く依存します。SOXの変動幅で5等分すると、最小の分位(変動幅の中央値0.17%)では50.8%とコイン投げ同然、最大の分位(同3.08%)では78.6%でした。平均の63.6%という数字は、半分の日がほとんど当たっていないことを覆い隠します。
Q. 先読みが当たるなら、それで儲かりますか?
方向が当たることと儲かることは別です。前夜のSOXが当てているのは主に寄り付きの水準で、前日終値から寄り付きまでのギャップの方向は70.8%当たります。しかし寄り付いてから引けまでの方向は50.6%で、これはコイン投げです。前夜のSOXと寄り引けの値動きの相関はr=+0.132しかありません。つまり情報は寄り付いた時点でほぼ価格に入っており、朝9時に賞味期限が切れます。実際に売買を想定すると、前夜のSOXの方向どおりに寄り付きで建てて引けで返す戦略は2011年からの累積で+414.5%、年率11.4%、シャープレシオ0.78で、同期間に日経平均を単純に持ち続けた+490.8%に累積で負けます。前日の終値で建てれば桁違いの成績が出ますが、前夜の米国市場を見てから前日の終値で買うことはできないため実行不能です。
Q. 寄り付き前に見るなら、どの指標が一番役に立ちますか?
実測ではCMEに上場する日経225先物(円建て)が最も役に立ちました。夜間の先物価格が前日終値に対して上か下かで判定すると、寄り付きの方向を82.3%当て、実際のギャップとの相関はr=+0.811(決定係数0.658)です。SOXの70.8%を上回ります。回帰すると、先物が前日終値から1%乖離しているとき実際のギャップは平均0.641%でした。次点はSOX、ナスダック、S&P500の順で、ドル円と米10年金利は56.2%、WTI原油は47.9%とほとんど役に立ちません。ただし夜間の日経225先物価格は各社が無料で公開している情報です。寄り付き後については、寄り引けの値動きと最も相関が高いのは同時間帯に動く韓国のKOSPI(r=+0.491)で、これは寄り付いた後にしか分からないため予測には使えません。
本記事は公開市場データ(Yahoo Finance経由)および学術文献を基に、当サイトが計算条件を明示した上で集計・整理した一般的な情報提供を目的としており、特定の銘柄・商品・売買タイミングの採用を推奨・勧誘するものではありません。採点対象とした投資情報の本文は引用しておらず、当サイトが独自に集計した統計値のみを掲載しています。過去の実績は将来の成果を保証しません。投資に関する最終判断はご自身の責任で行ってください。
出典:Yahoo Finance(始値・高値・安値・終値)、SBIホールディングス(2026年3月26日リリース)、Hamao, Masulis & Ng (1990) The Review of Financial Studies 3(2)、Lou, Polk & Skouras (2019) Journal of Financial Economics 134(1)、Welch & Goyal (2008) The Review of Financial Studies 21(4)。市場データは2026年7月29日まで(実測・集計は当サイト算出、2026年7月29日時点・編集部構成)。