RADIO STOCK PICKS ・ 投資の考え方 第28号

ラジオの注目銘柄は、翌朝の寄り付きを0.2%だけ動かす——そして、それで終わりだった

個人投資家向けの書籍やブログでは、ラジオの投資番組が「意外な情報の穴場」として紹介されることがあります。プロが具体的な銘柄名を挙げて解説してくれる、それを参考に買う——いわば「カンニング投資」です(例えば2022年刊の投資本『株式投資のすごコツ80』は、ラジオNIKKEIの複数の番組を情報源として名指しで勧めています)。この主張は2つに分けられます。①番組で紹介された銘柄は実際に買われる(市場が動く)のか、②それを聞いて買えば儲かるのか。

検証台に載せたのは、その代表格だったラジオNIKKEI「カブりつき・マーケット情報局」(2018年3月〜2025年10月・全377回・毎週金曜夕方)です。番組が毎週公開していた資料PDFをWayback Machineと配信サーバーから718本復元し、そこに載った紹介銘柄830件(2018〜2025年の8年分)の全数について、放送翌営業日以降の株価をTOPIX比で実測しました(2026年8月1日時点・編集部構成)。

判定
微動無害

①は本物、ただし小さい。②は「儲からない」だが、「損をする」でもなかった。紹介銘柄は翌営業日の寄り付きで対TOPIX平均+0.24%(レギュラー解説者の注目銘柄は+0.57%・正の割合66%)と確かにギャップアップしており、「ラジオが株価を動かす」は明瞭でした。ただし規模は米テレビ番組Mad Moneyで観測された+2.4%の10分の1です。その寄り付きで買うと1年でTOPIXに勝てたのは41%——ですがこの劣後は紹介のせいではありません。β調整すると1年の異常収益は▲0.98%まで縮んで信頼区間が0を跨ぎ、同じ銘柄の「何も起きていない日」を測ったプラセボ2,190件と区別がつきません(並べ替え検定 p=0.69)。Mad Moneyで有名な「跳ねて、その後反転する」構造は、日本のラジオには見つかりませんでした。跳ねが小さすぎて、反転する余地もなかった——というのがこの8年の答えです。

実測した紹介銘柄
830件
2018〜2025年・資料PDF718本から全数復元
翌営業日の寄り(対TOPIX)
+0.24%
正の割合57%・t=5.4。注目銘柄に限ると+0.57%
1年の異常収益(β調整後)
▲0.98%
95%CI [▲4.80, +2.49]=0を跨ぐ。単純超過は▲5.1%
プラセボとの差
p=0.69
偽イベント2,190件と区別できない(1年窓)
01 · THE PREMISE

「カンニング投資」という発想と、検証台に載せた番組

「カブりつき・マーケット情報局」は、ラジオNIKKEI第1で2018年3月2日に始まった株式番組です。当初は金曜16:20〜16:40の20分番組で、のちに30分へ拡大、2022年10月の改編からは金曜16:30〜17:00の枠で放送されました。出演は元かんぽ生命保険ファンドマネージャーの坂本慎太郎さん(Bコミ)、お笑い芸人のスパローズ・大和一孝さん、岡三証券のストラテジスト(武部力也さん・小川佳紀さんほか)、進行は八木ひとみさん。radiko・ポッドキャスト・YouTube同時配信つきで、「今週の注目銘柄」を具体的なコードつきで挙げるのが看板コーナーでした。レギュラー放送は2025年9月19日の第377回で終了し、特別編2回を経て同年10月10日に幕を下ろしています。

この番組が「穴場」として勧められた理由は明快です。出演者がプロで、銘柄が具体的で、資料PDFまで毎週無料公開されていた——つまり「プロの銘柄選定を、聞くだけで写せる」ように見えるからです。書籍やブログの体験談には「番組で聞いた銘柄を買ったら数日後にTOBが発表された」という類の成功譚も登場します。本記事はこの体験談を疑うのではなく(後述のとおり、TOBは実際にこの母集団で頻発しています)、全数ではどうだったかを測ります。成功譚は定義上、成功した回だけが語られるからです。

当サイトは直前に、テレビ番組「カンブリア宮殿」の全993回で同じ検証を行いました(第27号)。あちらは経営者を招く企業ドキュメンタリーで、「この株を買え」とは言わない番組です。結果は視聴者が最初に買える翌朝の寄り付きでギャップの中央値±0.00%——放送前に上がりきっていて、視聴者の番になった時には何も残っていませんでした。今回は明示的に銘柄を推奨する番組です。同じ手法で並べれば、「推奨する」という行為そのものの効果が抜き出せます。

02 · THE METHOD

検証の設計——消えた資料PDF718本を復元し、830銘柄を全数採取

番組の公式エピソードページは現在、2025年分を除きほぼ削除されています。そこでWayback Machine(CDX全量照会)と、配信サーバーに現存するファイルの直接発掘(ファイル名の規則を推定して総当たり)を併用し、エピソードページ208本と資料PDF718本を復元しました。番組の資料は「坂本さんの注目銘柄資料」「大和さんの入魂銘柄資料」「ゲスト資料」「週間指標一覧」の4系統あり、このうち週間指標一覧(値上がり率ランキング等の機械的な統計表)を除く315本のPDFから、銘柄コードつきの言及1,033件を機械抽出しました。

集計ルールは次のとおりです。恣意的な取捨選択を避けるため、どの回・どの銘柄を含めるかはすべて機械的に決めています

紹介者の層は「坂本さんの注目銘柄」254件・「大和さんの入魂銘柄」87件・「ゲスト資料の言及」489件に分かれます。ゲスト資料には明確な推奨銘柄(優待特集やNISA特集のリスト)だけでなく、決算発表カレンダーやスクリーニング表の銘柄も含まれるため、「推奨」の純度が最も高いのはレギュラー2人の層です。以下、全体と層別を分けて示します。

03 · DOES IT MOVE THE PRICE

結果①:紹介されると株価は動くのか——翌朝の寄りの+0.24%

まず「ラジオで名指しされると市場が動くのか」。金曜の放送を聞いた人が月曜朝に買い注文を入れるなら、月曜の寄り付きは金曜終値よりギャップアップするはずです。TOPIX(1305)の同じギャップを引いた超過ベースで測ると:

紹介者の層件数寄りギャップ平均(対TOPIX)中央値正の割合t値
坂本さんの注目銘柄207+0.57%+0.28%66.2%+6.0
大和さんの入魂銘柄76+0.29%+0.31%69.7%+2.2
ゲスト資料の言及457+0.08%+0.01%50.8%+1.5
全体740+0.24%+0.12%57.0%+5.4

※当サイト実測。金曜(放送日)終値→翌営業日始値の変化率から、同じ日付のTOPIX(1305)のギャップを引いた超過。調整後株価(Yahoo Finance)。t値は参考値(毎週のイベントで測定窓が重なるため、厳密な独立性はありません)。

きれいな序列が出ました。「今週の注目銘柄」としてフィーチャーされた坂本さんの銘柄は+0.57%・3件に2件がギャップアップ。芸人の大和さんの入魂銘柄も+0.29%と動く一方、決算カレンダー等も混ざるゲスト資料の言及はほぼゼロ(+0.08%・正の割合50.8%=コイン投げと同じ)。「推奨として聞かれた銘柄ほど動く」という、注目効果そのものの形です。同じ資料群の中で推奨純度によって効果が消える対照実験になっており、このギャップが「たまたま」でないことを裏づけます。

つまり主張①は本物です。金曜夕方のラジオは、月曜朝の寄り付きを実際に動かしていました。前号のカンブリア宮殿(推奨しない番組)で翌朝のギャップが中央値±0.00%だったことと並べると、動かしているのは「メディアに出た」ことではなく「買え、と言われた」ことだと分かります。ただしその大きさは1銘柄あたり平均0.2〜0.6%——後述するとおり、これは米国のテレビ番組で観測された効果の10分の1程度です。

動かしているのは「メディアに出た」ことではなく、「買え、と言われた」ことだと分かります。

— 推奨純度別の寄り付きギャップ比較より
04 · THE FADING EFFECT

「ラジオが動かす力」は年々弱くなっていた

このギャップを年別に切ると、もう一つの事実が見えます。

放送年件数寄りギャップ平均(対TOPIX)正の割合t値
2018年42+0.73%64.3%+3.5
2019年79+0.55%68.4%+4.5
2020年95+0.39%54.7%+2.1
2021年101+0.16%59.4%+1.7
2022年95+0.01%55.8%+0.1
2023年151+0.05%55.0%+0.7
2024年92+0.24%51.1%+2.1
2025年85+0.20%54.1%+2.0

※当サイト実測。層は区別せず全紹介銘柄。

番組初期の2018〜2019年は+0.5〜0.7%あったギャップが、2022〜2023年にはほぼ消滅し、晩年は+0.2%前後。「ラジオで聞いてすぐ買う」人の存在感は、番組の歴史の中で確実に薄れていました。米国のMad Money研究でも、番組が有名になり裁定が働くにつれて推奨効果が縮小したことが報告されており、同じ経路をたどったように見えます。個人投資家の情報源がSNS・YouTubeへ移った時期とも重なります。

05 · DOES IT MAKE MONEY

結果②:翌朝買って持つとどうなるか——中央値は全ホライズンでTOPIX劣後

本題の主張②です。翌営業日の寄り付き(=カンニング投資家が実際に買える最初の値段)で買って、そのまま持つとどうなるか。対TOPIX超過リターンで:

保有期間件数平均中央値TOPIXに勝った割合
当日引けまで740▲0.03%▲0.04%47.2%
1週間(5営業日)740▲0.34%▲0.36%44.2%
1ヶ月(21営業日)740▲0.08%▲0.96%44.6%
3ヶ月(63営業日)740▲0.27%▲2.18%44.6%
6ヶ月(126営業日)740+1.68%▲2.46%43.8%
1年(250営業日)706+0.93%▲5.11%41.2%

※当サイト実測。翌営業日の始値で買い、各時点の終値で評価した対TOPIX(1305)超過。配当込み・税と取引コストは控除していません。1年の件数が少ないのは2025年後半の紹介銘柄で1年が未経過のため。

見た目は一貫しています。中央値はどの保有期間でもマイナス、TOPIXに勝てた割合はどの期間でも44%前後から1年で41%へじり貧。「聞いてすぐ買う」戦略の典型的な銘柄は、指数を買った人に負け続けました。誤解のないように言えば、この8年は強気相場だったので素のリターンは1年平均+17.2%・中央値+8.2%と儲かってはいます。負けたのは「TOPIXを黙って買った自分」に対してです。

ここで手を止める記事は多いのですが、この表だけでは「紹介されたから負けた」とは言えません。個別株を等金額で持つとTOPIXより値動きが小さくなりやすく(実測したβの中央値は0.92、59%の銘柄が1未満)、TOPIXが+176.7%上がったこの8年では、β1未満の銘柄は誰が何をしなくても指数に負けます。窓が長いほどこの効き方は大きくなるので、1年窓の▲5.11%は特に疑ってかかる必要があります。次のセクションで切り分けます。

06 · THE ROBUSTNESS CHECK

その劣後は本物か——β調整とプラセボ2,190件で切り分ける

前セクションの「1年で▲5.11%」が紹介に固有のものかを、2つの検査にかけます。

①市場モデルでβ調整する。各銘柄について放送の250営業日前から30営業日前までの期間でTOPIXに対するα・βを推定し、異常収益(実際のリターン − βから期待されるリターン)を窓内で累積します。推定窓を放送の30営業日前で打ち切るのは、紹介直前の値動きがβに吸収されるのを防ぐためです。②プラセボを測る。同じ銘柄について、放送日を±1年・±2年ずらした「何も起きていない日」を偽の紹介日として、まったく同じ計算をします(実際の紹介の前後60営業日は避けます)。銘柄群が中小型・内需に偏っていることによる負けなら、偽イベントでも同じだけ負けるはずです。727件の実測に対し、プラセボは2,190件取れました。

保有期間単純な対TOPIX超過(中央値)β調整後の異常収益(中央値)同・95%信頼区間プラセボ(中央値)実測との差の検定判定
1週間▲0.36%▲0.26%[▲0.44, ▲0.06]▲0.23%p=0.92プラセボと同じ
1ヶ月▲0.96%▲0.68%[▲1.26, ▲0.23]▲0.46%p=0.61プラセボと同じ
3ヶ月▲2.18%▲0.74%[▲1.97, +0.67]▲0.83%p=0.92区間が0を含む
6ヶ月▲2.46%+0.16%[▲2.07, +1.52]▲0.90%p=0.35区間が0を含む
1年▲5.11%▲0.98%[▲4.80, +2.49]▲0.26%p=0.69区間が0を含む

※当サイト実測。β調整後は市場モデルによる累積異常収益(実測727件・1年窓のみ694件。推定窓が取れない紹介は落ちます)。信頼区間は中央値のブートストラップ95%(5,000反復・乱数の種は固定)。プラセボは同一銘柄で放送日を±252/±504営業日ずらした偽イベント2,190件。検定は実測とプラセボの中央値差に対する並べ替え検定(20,000回・両側)。

結果ははっきりしています。「1年で▲5.11%」はβ調整で▲0.98%まで縮み、信頼区間は0を跨ぎます。3ヶ月・6ヶ月も同様に消えます。短い窓(1週間▲0.26%・1ヶ月▲0.68%)は信頼区間が0を含まないので「マイナスであること自体」は言えるのですが、プラセボがほぼ同じ値(▲0.23%・▲0.46%)を出しており、並べ替え検定では実測と区別がつきません(p=0.92・0.61)。つまりこのわずかな負けは、紹介された日に固有のものではなく、この銘柄群がふだんから持っている性質です。

整理すると、単純な対TOPIX超過に見えていた劣後の正体は2つでした。大部分は「β1未満の個別株を上げ相場で持った」という構造的なもの(1年▲5.11%のうち約4ポイントぶん)、残りは銘柄群そのものの性質(プラセボでも同じだけ出る)。紹介というイベントに固有の反転は、この母集団では検出できませんでした。当サイトが第11号で「下げ相場で個人株主の多い株が強いのは資金移動ではなくβだった」と書いたのと、同じ落とし穴がここにもありました。

これは番組にとって、実は救いのある結果です。米国のMad Money研究が示した「跳ねた後に追随者が反転を食らう」という構造——推奨効果+2.4%に対し、跳ねた銘柄を翌日買うと50日で年率▲29.5%——は、日本のラジオでは再現されませんでした。跳ねが+0.24%と小さすぎて、剥がれ落ちるものがそもそも無かったのです。カンニング投資は「儲からない」が、「損をさせられる」でもありませんでした。

カンニング投資は「儲からない」が、「損をさせられる」でもありませんでした。

— β調整とプラセボ2,190件による頑健性検証より
07 · THE LOTTERY TAIL

平均を作っていたのは3銘柄——テールの実名と宝くじ構造

1年の平均(+0.93%)と中央値(▲5.11%)の乖離が示すとおり、この分布は右の裾が長い宝くじ型です。実際、1年超過リターンの上位3件を除くだけで、平均はマイナス(▲0.14%)に沈みます。706件測って、平均のプラスを支えていたのは0.4%の銘柄でした。1年で株価2倍以上が37件(5.2%)ある一方、TOPIXに勝ったのは291件(41.2%)、半値以下も10件——「たまに大当たりが出る」ことと「普通は負ける」ことが両立しています。

放送日銘柄1年の対TOPIX超過同・素のリターン
ベスト2022-01-14大阪チタニウムテクノロジーズ(5726)+342.6%+344.6%
2024-01-19IHI(7013)+217.3%+228.8%
2018-12-21ミダックホールディングス(6564)+198.8%+216.1%
ワースト2025-07-11GMOインターネット(4784)▲119.0%▲73.4%
2025-06-13SREホールディングス(2980)▲82.1%▲34.1%
2020-08-28ポプラ(7601)▲74.3%▲44.4%

※当サイト実測。超過は対TOPIX(1305)。2025年紹介分のワーストの超過が素のリターンより大きく見えるのは、同期間のTOPIXが+45%前後と急騰したためです。GMOインターネットは放送前の3営業日で+20%超の連騰があった局面での言及(既に急騰していた銘柄の解説コーナー)で、その後1年で株価は4分の1になりました。

大阪チタニウム(2022年1月紹介→その年のチタン市況急騰で1年4.4倍)のような場外ホームランは実在します。書籍の成功譚——「聞いた銘柄が数日後にTOB」——も嘘ではないでしょう。この母集団では上場廃止90件が全件買収・統合系(次のセクション)で、TOBは日常茶飯事でした。問題は、その宝くじを引き当てる前に、典型的な銘柄(中央値)が静かに指数に負けていくことです。当サイトのバイオ株の検証(第9号)で見たのと同じ、「平均は夢を語り、中央値は現実を語る」構造でした。

平均は夢を語り、中央値は現実を語る。

— 1年超過リターン上位3件を除くと平均が沈む実測より
08 · THE DELISTED 90

結果③:消えた90銘柄の行き先——破綻ゼロ、全件が買収・統合

830件のうち90件は、株価データが取得できず測定から外れました。大半は上場廃止です。「推奨銘柄が消えた」と聞くと破綻を連想しますが、JPXの上場廃止銘柄一覧(同一URLのWaybackスナップショットを合算し2018年以降を復元)と突合すると、様相は逆でした。90件のうち75件で廃止理由を特定でき、その内訳はTOB(公開買付け)・MBO・株式併合によるスクイーズアウトが52件、完全子会社化・経営統合・株式移転が23件——つまり全件が買収・再編系で、経営破綻・上場維持基準不適合による廃止はゼロでした(残る15件=10社は復元したJPX一覧に該当期間の欠落があり理由を特定できていません。破綻の記録も見つかっていません)。

顔ぶれを見れば納得がいきます。新光電気工業、スノーピーク、ウエルシアホールディングス、永谷園ホールディングス、インフォコム、トプコン、いなげや、日本コンセプト——この8年の日本市場を象徴する「TOB・非公開化・経営統合ラッシュ」の縮図が、そのまま紹介銘柄の退出リストになっています。

これは測定の解釈に効きます。買収による退出は通常プレミアム付きの株価で終わるため、測れなかった90件には「勝ち」が偏っている可能性が高い。つまりセクション5・6の数字は、戦略の成績をやや悪めに見せている方向の欠測です(90/830件なので、中央値が全期間マイナスという結論を覆す規模ではありません)。生存者バイアスは普通「負けた銘柄が消えて成績が良く見える」形で現れますが、この母集団では逆向きに働いている——珍しいので明記しておきます。

09 · WHO MOVES THE MARKET

プロ・芸人・ゲスト——誰の銘柄が動いたか

層別の成績です。寄りのギャップ(セクション3)とは別に、買って持った後を並べます。

寄りギャップ1ヶ月超過(中央値)1年超過(中央値)1年でTOPIXに勝った割合
坂本さんの注目銘柄(207件)+0.57%▲0.12%▲6.14%38.2%
大和さんの入魂銘柄(76件)+0.29%▲1.41%▲7.69%45.1%
ゲスト資料の言及(457件)+0.08%▲1.06%▲4.53%42.1%

※当サイト実測。対TOPIX(1305)超過。1年の件数は坂本207・大和71・ゲスト428。

寄り付きを動かす力はプロの解説者が突出して大きい(+0.57%)——リスナーは肩書に反応して買っています。しかし1年持った後は、プロも芸人もゲストも、中央値でTOPIXに勝てた層は一つもありません。ここでもβ調整は効きます。坂本さんの層をβ調整して測り直すと、1週間▲0.04%・1ヶ月+0.46%・1年▲0.85%と全ての窓で信頼区間が0を含み、「TOPIXと変わらない」に落ち着きます。プロの目利きが無意味という意味ではなく(1年超過+198.8%のミダック、+342.6%の大阪チタニウムはいずれも坂本さんの紹介で、テールを当てる力は本物です)、「紹介銘柄を機械的に写す」戦略が誰の銘柄でも指数に対する優位を生まなかった、ということです。ちなみに最多紹介はサイバーエージェントの5回で、古河機械金属・三菱UFJ・商船三井などが4回で続きます。

興味深い符合もありました。ラジオ番組を「穴場」と勧めた書籍の著者JACKさん自身が、番組末期の2025年7月11日にゲスト出演し、3銘柄(オークマ・リズム・オリエントコーポレーション)を紹介しています。その1年後の対TOPIX超過は▲8.5%・▲12.3%・▲51.6%——TOPIXが+45%走った1年だったとはいえ、「勧めた側」の銘柄も、この統計の外には出られませんでした

10 · THE LITERATURE

学術研究——「注目→急騰→反転」は世界共通、効果は聴衆の規模順

メディアの銘柄推奨がどう株価に効くかは、30年以上の学術的蓄積があります。結論はどれも同じ形です:発表直後に跳ね、出来高が膨らみ、その後ゆっくり元に戻る

媒体(研究)直後の反応その後
米CNBC「Mad Money」
Engelberg他 2012・買い推奨826件
オーバーナイト+2.4%
(小型株のみだと+4.0%)
100日以内に1%未満まで縮小。跳ねた銘柄を翌日買うと50日で年率▲29.5%のアルファ
WSJ「ダーツボード」欄のプロ推奨
Barber & Loeffler 1993
2日で+4%・出来高2倍25営業日で部分的に反転(Liang 1999では15日で反転し、6ヶ月追随は▲3.8%)
会社四季報オンライン「先取りサプライズ銘柄」
辻 2024・N=1,078
翌営業日+0.99%累積超過は約2ヶ月(40営業日手前)でゼロを割る
ラジオNIKKEI「カブりつき」
本記事・830件
翌営業日の寄り+0.24%
(注目銘柄のみだと+0.57%)
β調整・プラセボを通すと反転は検出できず(1年▲0.98%・区間は0を含む)
テレビ東京「カンブリア宮殿」
当サイト第27号・308件(推奨しない番組)
翌営業日の寄り ±0.00%放送前5営業日に+0.85%上がりきり、放送後20営業日は▲1.14%

※各研究の対象・手法・市場は異なるため、数値の直接比較は「規模感の序列」としてのみ読んでください。出典はセクション12。

並べると、効果の大きさが「聴衆の規模」と「推奨の明示性」の順に並ぶことが分かります。全米のゴールデンタイムで名指し推奨するテレビ(+2.4%)→ 日本の投資家向けオンラインメディア(+0.99%)→ 平日夕方のラジオ(+0.24%)→ 推奨しない日本のテレビ番組(±0.00%)。一方で「その後は戻る・追随者は負ける」という後半は、日本のラジオでは再現されませんでした(セクション5b)。これは矛盾ではなく、同じ理屈の帰結だと読めます。反転とは「注目で押し上げられたぶんが剥がれ落ちること」なので、押し上げが+2.4%あれば大きく剥がれ、+0.24%しかなければ剥がれるものも0.2%しかない。アテンション効果は聴衆の規模に比例し、その反転も同じ比率で小さくなる——ラジオはその下限側の実例でした。追随して大負けする心配が無い代わりに、そこに取れる利益も残っていません。

アテンション効果は聴衆の規模に比例し、その反転も同じ比率で小さくなる。

— Mad Money・四季報オンライン・カンブリア宮殿との規模比較より
11 · WHERE ARE THEY NOW

番組のその後——2022年の投資本が挙げた5番組のいま

最後に、「ラジオは穴場」という情報自体の寿命を確認します。冒頭の書籍(2022年5月刊)が名前を挙げたラジオNIKKEIの5番組の、2026年8月時点の現況です。

番組書籍刊行時(2022年)2026年8月のいま
カブりつき・マーケット情報局金曜16:20〜16:50+YouTube延長2025年10月終了(レギュラー最終回は9月19日・第377回)
マーケットプレス前場・後場の2部制+YouTube Live前場のみ(9:00〜11:35)に縮小して継続。後場帯は2026年春の改編で消滅
ザ☆スマート・トレーダーPLUS木曜のリスナー質問形式継続中(木曜16:00〜16:30。2009年開始の長寿番組)
北野誠のトコトン投資やりまっせ。水曜夜のリスナー質問形式2023年3月29日終了(書籍刊行の約10ヶ月後)
夕焼けマーケッツ(過去の番組として言及)2013年3月終了(刊行時点で既に9年前。後継は「ザ・マネー」)

※ラジオNIKKEI公式サイト・radiko番組表・Wayback Machineによる当サイト確認(2026年8月1日時点)。

当時の形で残っているのは1番組だけです。カブりつきの旧枠(金曜16:30)は現在マーケット番組ですらなく、坂本さんは2026年8月時点でラジオNIKKEIのレギュラー番組を持っていません。「この番組が穴場」という情報は、書籍の賞味期限より先に切れる——情報源そのものの寿命も、カンニング投資の見えないコストです。なお番組の名誉のために付け加えると、カブりつきは最終盤の2025年9月に、自らの過去の注目銘柄を振り返る検証回を放送しています。自分の推奨を事後検証して幕を引くメディアは稀有であり、本記事はその全数版という位置づけになります。

留意点

SOURCES

出典と一次資料

FAQ

Q. ラジオの投資番組で紹介された銘柄を買えば儲かりますか?
当サイトがラジオNIKKEI「カブりつき・マーケット情報局」の紹介銘柄830件(2018〜2025年)を実測した範囲では、TOPIXを買うより有利にはなりませんでした。放送の翌営業日の寄り付きで買った場合、1年後にTOPIXを上回った銘柄は41%で、対TOPIX超過リターンの中央値は▲5.1%です。ただしこの劣後は「紹介された銘柄だから」ではありません。市場モデルでβ調整すると1年の異常収益は▲0.98%まで縮み、中央値の95%信頼区間は0を跨ぎます。さらに同じ銘柄の「何も起きていない日」を測ったプラセボ2,190件でも同程度の負けが出ており、実測と統計的に区別できません(並べ替え検定p=0.69)。劣後の正体は、β1未満の個別株を+176.7%の上げ相場で持ったという構造的なものでした。「儲からないが、損をさせられるわけでもない」というのが実測の結論です。なお強気相場だったため素のリターン自体は1年平均+17.2%・中央値+8.2%あります。

Q. 紹介された銘柄は株価にどのくらい影響しますか?
動きます。ただし小さい影響です。金曜夕方の放送の後、翌営業日(通常は月曜)の寄り付きは対TOPIXで平均+0.24%(正の割合57%・t値5.4)、レギュラー解説者の注目銘柄に限ると平均+0.57%(正の割合66%)ギャップアップしていました。これは米CNBCの株式推奨番組Mad Moneyで学術的に確認されたオーバーナイト+2.4%(Engelberg他, Management Science 2012)の約10分の1、会社四季報オンラインの注目銘柄公開後の+0.99%(辻, 2024)の約4分の1で、メディアの聴衆規模の順に効果が並びます。またこのギャップは2018〜2019年の+0.5〜0.7%から晩年は+0.2%前後へ縮小していました。

Q. 紹介銘柄には上場廃止になったものもありますか?
830件のうち90件は上場廃止などで株価データが取得できず、測定から外れています。ただしその中身は「紹介銘柄が破綻して消えた」のではありません。JPXの上場廃止銘柄一覧と突合すると90件中75件の廃止理由を特定でき、その全件がTOB(株式公開買付け)・MBO・株式併合によるスクイーズアウト(52件)と、完全子会社化・経営統合・株式移転(23件)でした。経営破綻や上場維持基準不適合による廃止は1件も確認されていません。新光電気工業、スノーピーク、ウエルシアHD、永谷園HD、トプコンなどが該当します。買収による退出は通常プレミアム付きの株価で終わるため、この90件を測定できないことは本記事の成績をむしろ控えめ(悪め)に見せる方向に働きます。

Q. 「カブりつき・マーケット情報局」はいつ終了しましたか?
レギュラー放送は2025年9月19日の第377回で終了し、特別編「特報!」2回(9月26日・10月10日)をもって完全に終了しました。2018年3月2日に金曜16:20〜16:40の20分番組として始まり、30分に拡大(〜2020年1月までに)、2022年10月からは金曜16:30〜17:00で放送されていました。radiko・ポッドキャスト・YouTube同時配信でも聴取できた番組で、2026年8月時点で番組ページとポッドキャストの過去回の一部は残っていますが、新規の放送はありません。かつての放送枠(金曜16:30)はマーケット番組以外に変わっています。

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本記事は公開情報(番組公式サイト・Wayback Machine・JPX統計・Yahoo Finance)および学術文献を基に、当サイトが計算条件を明示した上で集計・整理した一般的な情報提供を目的としており、特定の銘柄・商品・情報源の利用や売買を推奨・勧誘するものではありません。番組資料PDFの本文・解説内容は転載していません(用いたのは銘柄コード・銘柄名・放送日の事実データのみです)。過去の実績・パターンは将来の成果を保証しません。投資に関する最終判断はご自身の責任で行ってください。

出典:ラジオNIKKEI「カブりつき・マーケット情報局」公式ページ・公式ポッドキャストRSS(Wayback Machine保存分含む)、JPX(上場廃止銘柄一覧・東証上場銘柄一覧・取引時間延伸)、Yahoo Finance(各銘柄・1305.T)、Engelberg他 (2012) Management Science 58(2)、Barber & Loeffler (1993) JFQA 28(2)、Liang (1999) Journal of Business 72(1)、辻 (2024) 三田商学研究 67(4)。株価は2026年7月30日終値まで(実測・集計は当サイト算出、2026年8月1日時点・編集部構成)。