INVESTMENT STRATEGY ・ 投資の考え方 第9号

「バイオ株は上がらない」は本当か — 分かれ目は治験ではなく、収益だった

2019年1月29日、サンバイオの終値は11,710円でした。3カ月前の3,685円から3倍以上。買っていた人の見立ては、少なくともそこまでは完全に当たっています。その日の引け後、慢性期脳梗塞を対象としたSB623の臨床試験が主要評価項目を達成できなかったと発表され、6営業日後の株価は2,620円でした。翌日のストップ安だけを見ていると▲25.6%ですが、実際には1週間強で▲77.6%です。

「バイオは上がると思っても勝てない」という感覚は、日米どちらの投資家からもよく聞かれます。それが気のせいなのか、それとも数字に出るのか。

日米の株価を当サイトで実測し、臨床開発の成功率の一次データと突き合わせました(2026年7月24日終値まで・2026年7月27日時点・編集部構成)。

判定
当たり損

「バイオは上がらない」は誤り。ただし勝敗を分けていたのは治験の成否ではなく、収益がある会社かどうかと、いつ買ったかだった。米国の臨床段階バイオ(XBI)は設定来20年で年率11.74%、S&P500の10.98%に勝っています。一方、日本の創薬ベンチャー19銘柄は直近10年の等金額で▲61.9%・中央値▲84.9%、TOPIXを上回ったのは0銘柄でした。

7.9% Phase IからFDA承認までの到達率(BIO/Informa/QLS・2011–2020年・n=12,728)
0 / 19 日本の創薬ベンチャー19銘柄のうち、直近10年でTOPIXに勝った銘柄数
ピークの11% ARKGの純資産。2021年初の約90億ドルから2026年3月26日時点で9.92億ドルへ縮小
01 · THE REBUTTAL

まず、「バイオは上がらない」は間違いです

体感から入ると意外な結果になるので、先に否定しておきます。米国の臨床段階バイオを等金額で持つETFであるXBI(SPDR S&P Biotech ETF)は、2006年2月の設定から2026年7月24日までの20年5カ月で年率11.74%。同期間のS&P500連動ETF(SPY)の10.98%を上回っています。等金額ですから、無収益の小型創薬会社が大手と同じ比重で入っている構成です。それでも勝っています。

設定来(2006年2月〜2026年7月24日)年率累計最大下落率高値回復
XBI(臨床段階込み・等金額)+11.74%+869.4%▲63.9%未回復(65カ月)
SPY(S&P500)+10.98%+744.0%▲55.2%回復済
IBB(時価総額加重・大型中心)+10.23%+634.1%▲39.8%回復済

※当サイト実測。Yahoo Finance の調整後終値(配当再投資込み)。XBIのみ設定日の関係で起点が2006年2月6日、他は2006年1月31日。「高値回復」は最大下落の起点となった高値を2026年7月24日までに回復したかどうか。

ここで話が終われば「バイオは長期で持てば報われる」で済みます。ところが同じ表の右2列に、体感の正体が入っています。XBIの最大下落率は▲63.9%で、その起点となった2021年2月8日の高値を、5年5カ月たった今も回復していません。20年の年率が良いことと、実際に人が持ち続けられることは別の話です。

02 · THE ODDS

確率のほうから見ておく — Phase I から承認まで7.9%

株価の前に、事業そのものの確率を確認します。業界団体BIO、Informa Pharma Intelligence、QLS Advisorsの共同調査は、2011年1月から2020年11月までの1,779社・9,704の開発プログラム・12,728回の相間移行を集計しています。母集団としてはほぼ業界全体です。

移行成功率n備考
Phase I → II52.0%4,414安全性が主眼のため比較的高い
Phase II → III28.9%4,9334相で最も低い。最大の関門
Phase III → 承認申請57.8%1,928最も費用のかかる相
承認申請 → 承認90.6%1,453再申請を含めた最終的な成功率
Phase I → 承認(通算)7.9%12,728平均所要期間 10.5年

※BIO / Informa Pharma Intelligence / QLS Advisors「Clinical Development Success Rates and Contributing Factors 2011–2020」(2021年2月)Figure 1・Figure 5bより。

領域差はこの平均よりずっと大きく、Phase Iからの到達率は血液領域の23.9%が最高、泌尿器の3.6%が最低でおよそ7倍の開きがあります。日本の個人投資家がよく手を出す腫瘍領域は5.3%(n=4,179)で、全体の33%を占める最大セグメントでありながら平均を押し下げる側です。逆に希少疾患は17.0%、CAR-Tは17.3%、患者をバイオマーカーで事前選択した開発は15.9%と、平均の2倍前後になります。

ここで押さえたいのは「7.9%は低い」ではありません。これは公開情報であり、市場も知っているということです。確率が低いこと自体は、株価にすでに織り込まれていておかしくありません。にもかかわらず投資家が負けるとしたら、理由は確率の低さそのものではなく別のところにあります。

03 · JAPAN, MEASURED

日本の実測 — 19銘柄中、TOPIXに勝ったのは0

日本には現在、上場バイオベンチャーを測る公的な指数がありません。日経BP社が算出していた「日経BP・バイオINDEX」は2021年3月末で公開を終了しています。そこで当サイトで作りました。証券コード4560〜4599の帯を中心に、収益が立っていない創薬型のバイオベンチャーを群Aとし、対照として収益のある製薬会社を群Bに分けて、それぞれ等金額・買い持ち・配当再投資で計測しています。

直近10年(2016年7月25日〜2026年7月24日)累計年率中央値TOPIX超え半値以下
創薬バイオベンチャー 19銘柄▲61.9%▲9.20%▲84.9%0 / 1915 / 19
収益のある製薬 5銘柄+88.9%+6.57%+38.7%0 / 50 / 5
TOPIX(1305)+280.3%+14.30%

※当サイト実測。等金額・買い持ち(リバランスなし)・配当再投資、税・取引コストは控除していません。ベンチマークはTOPIX連動ETFの1305(iFreeETF TOPIX)。より一般的な1306は2026年3月30日に、1348は2024年8月5日に、それぞれ実際のTOPIXの動きと合わない単日変動(▲90.2%・▲18.0%)があるため採用していません。3本の10年累計は+280.3%・+280.2%・+278.9%とほぼ一致します。

創薬ベンチャー19銘柄のうち10年でプラスだったのは3銘柄のみ、15銘柄は半値以下、そしてTOPIXを上回った銘柄は1つもありません。等金額バスケット全体が▲61.9%なのに対して中央値が▲84.9%という開きは、少数の相対的な勝ち組が平均を持ち上げていることを意味します。1銘柄だけ引いたときの現実的な結果は、平均ではなく中央値のほうです。

個別の並び(10年・創薬ベンチャー群)

上位10年下位10年
オンコリスバイオファーマ+112.3%メドレックス▲93.8%
ラクオリア創薬+22.8%ブライトパス・バイオ▲93.4%
キャンバス+7.4%シンバイオ製薬▲92.3%
サンバイオ▲33.2%オンコセラピー・サイエンス▲91.7%
ペプチドリーム▲66.4%リボミック▲89.5%
ネクセラファーマ(旧そーせい)▲78.1%ナノキャリア▲89.3%

※当サイト実測。全19銘柄のうち両端を抜粋。

この表で一番示唆的なのは、実はサンバイオが▲33.2%と上位にいることです。あれだけの暴落を経てなお、10年で見れば下から数えたほうが早い位置にはいません。2016年7月という起点が暴騰前だったからです。同じ銘柄が、2019年1月の高値起点なら▲91.8%になります。銘柄の良し悪しより、いつ買ったかのほうが結果を支配している——このセクターの性質がよく出ています。

銘柄の良し悪しより、いつ買ったかのほうが結果を支配している。

— 日本の実測 — 19銘柄中、TOPIXに勝ったのは0

もうひとつ。この計測には生存者バイアスがかかっています。株価データが取得できるのは現存銘柄だけなので、上場廃止や経営破綻に至ったバイオは自動的に除外されています。つまり実際の成績は、ここに出ている数字より悪いほうに寄ります。

04 · THE US, MEASURED

米国の実測 — 銘柄選択の失敗なのか、セクターの構造なのか

日本の結果だけなら「日本のバイオが弱いだけ」で説明できます。米国側を、性格の違う4本で切り分けます。ARKGはアクティブ運用でプロの銘柄選択が入ったもの、XBIは銘柄選択を排したパッシブの等金額、IBBは時価総額加重で収益のある大型が中心、SPYがベンチマークです。

ARKG設定来
(2014/10〜・年率)
直近10年
(年率)
2021年2月8日以降
(累計)
ARKG(アクティブ・ゲノム)+6.23%+8.54%▲66.1%
XBI(パッシブ・等金額)+8.84%+9.88%▲12.9%
IBB(パッシブ・時価加重)+5.88%+7.45%+10.6%
SPY(S&P500)+13.60%+14.89%+103.8%

※当サイト実測。配当再投資込み、2026年7月24日終値まで。ARKGの経費率0.75%、XBI 0.35%、IBB 0.44%はいずれも基準価額に反映済み。

読み取れることが3つあります。

第一に、4本とも同じ方向に負けているので、プロの銘柄選択が下手だったという説明では足りません。アクティブのARKGが最も悪いのは事実ですが、銘柄選択を一切しないXBIも、大型中心のIBBも、この11年8カ月でSPYに大きく届いていません。

第二に、2021年2月以降だけ、IBBがプラスで残っています。ここが日本の群A・群Bの分岐と同じ形です。収益があり利益を出している大型バイオは生き残り、臨床段階中心のXBI・ARKGは沈みました。分かれ目は治験の成否ではなく、収益があるかどうか。この一点で日米が一致します。

第三に、起点を2006年に伸ばすとXBIはSPYに勝つ(前掲の年率11.74%対10.98%)。同じETFが、起点をどこに置くかで勝者にも敗者にもなります。「バイオは儲かるか」という問いに単一の答えがないのは、このためです。

米国が日本より良い理由 — 買収という出口

XBIが等金額でありながら長期でS&P500に勝てているのは、臨床データが良かった会社が大手製薬に買収され、プレミアムがついて指数に取り込まれるからです。等金額のインデックスにとって、この買収プレミアムは繰り返し効く上振れ要因になります。日本にはこの出口が細く、資金を増資でつなぐしかありません。次の節がその話です。

05 · FOUR LEAKS

当たっても報われない、4つの経路

1. イベントの非対称性 — 上げより下げが大きく、長い

Hwang(2013、PLoS ONE 8(8): e71966)は、大手バイオ医薬品企業の治験結果発表に対する株価反応を調べ、好材料でおよそ+3%の異常リターンが出る一方で、悪材料による下落は規模が大きく、より長く続くと報告しています。2000〜2020年の13,807試験に対象を広げた後続研究(PLoS ONE, 2022, e0272851)では、異常リターンの大きさを最もよく説明した変数が疾患でも開発相でもなく「早期バイオか大手製薬か」でした。小さい会社ほど、1本の結果で振れ幅が大きくなります。

2. 希薄化 — 株価が戻っても、取り分が戻らない

無収益で開発を続ける以上、資金は増資で賄うしかありません。発行済株式数の実測がこれです。

銘柄期間発行済株式数増加率年率
アンジェス7.4年9,088万 → 3億9,563万+335.3%+22.10%
ブライトパス・バイオ7.5年4,186万 → 1億3,889万+231.8%+17.27%
ヘリオス7.4年4,925万 → 1億3,500万+174.1%+14.65%
ナノキャリア7.6年4,661万 → 8,319万+78.5%+7.90%
サンバイオ7.4年4,972万 → 7,804万+57.0%+6.26%
ペプチドリーム7.5年1億2,337万 → 1億2,849万+4.2%+0.54%
Recursion(米)5.1年1億5,991万 → 5億3,076万+231.9%+26.81%
Intellia(米)7.5年4,342万 → 1億3,972万+221.8%+16.89%
Beam Therapeutics(米)6.3年4,532万 → 1億288万+127.0%+14.03%
CRISPR Therapeutics(米)8.2年4,698万 → 9,848万+109.7%+9.43%

※当サイト実測。Yahoo Finance が保持する発行済株式数の履歴(起点はおおむね2018年11月、米国勢は上場時期により異なる)。期間・起点が銘柄ごとに違うため、比較は年率で見てください。

アンジェスは7.4年で株数が4.35倍になりました。仮に会社の価値が横ばいでも、1株の価値は約23%に薄まります。米国のRecursionは5.1年で年率26.8%という、さらに速いペースです。「株価が高値の半分まで戻った」としても、株数が倍になっていれば持ち分の価値は戻っていません。

「株価が高値の半分まで戻った」としても、株数が倍になっていれば持ち分の価値は戻っていません。

— 当たっても報われない、4つの経路(2. 希薄化)

ただし一律ではありません。ペプチドリームは7.5年で株数の増加が+4.2%(年率+0.54%)にとどまります。創薬プラットフォームとして提携収入があり、増資に頼らずに済んでいるからです。ここでも「収益があるか」が効きます。もっともペプチドリームの10年株価は▲66.4%で、希薄化がなければ勝てるという単純な話でもありません

3. 宝くじプレミアム — 当たりくじは、高く売られている

Bali, Cakici & Whitelaw(2011、Journal of Financial Economics 99(2), 427–446)は、直近1カ月の最大日次リターン(MAX)が高い銘柄ほどその後のリターンが低いことを示しました。最高十分位と最低十分位の差は月1%を超えます。宝くじのように「たまに大きく跳ねる」性質が好まれ、その分だけ高く買われてしまうという解釈です。

臨床段階バイオはこの性質の典型で、日本の実測がそのまま実演になっています。19銘柄の等金額バスケットが▲61.9%なのに中央値は▲84.9%——分布が極端に右に歪み、少数の勝者が平均を持ち上げている形です。バスケットで持てば平均に乗れますが、1銘柄を選ぶと期待値は中央値に近づきます。「上がると思った銘柄を1本買う」という現実の行動が、最も不利な引き方になります。

4. 買う時期 — 人が集まるのは、いつも高値

ここまでの3つは銘柄側の話ですが、4つ目は投資家側の話で、おそらく最も大きく効いています。ARKGの純資産は2021年初におよそ90億ドルまで膨らみ、2026年3月26日時点では9.92億ドル、ピークのおよそ11%です。資金が最も集まったのが、まさに高値でした。

モーニングスターのエイミー・アーノットによる過去10年の集計では、ARKは運用会社単位で最大の資産毀損(143億ドル)、ARKK単体でも71億ドルの毀損で3位でした。ファンドの表示成績(時間加重リターン)と、投資家が実際に手にした成績(金額加重リターン)は別物です。前掲の表でARKGの設定来年率は+6.23%とプラスですが、大半の資金はそのプラスを受け取っていません。

純資産が11%まで縮むと、別の問題も生じます。解約に応じるため流動性の低い小型株を売らざるを得ず、自分の売りで価格を不利に動かしてしまう可能性が指摘されています。これは銘柄の中身とも治験の結果とも無関係に、残った株主の取り分を削る経路です。

06 · THE COUNTERPOINT

キャシー・ウッドは、降りていない

ここは公平に書いておくべきところです。ARKGの成績が悪いのは「テーマの見立てが外れたから」ではありません。ゲノム解析コストは崩壊し、CRISPRを用いた遺伝子治療は実際に承認され、AI創薬は動き出しました。科学の側の予想は、おおむね当たっています。

そしてARKは2026年に入っても買い続けています。2026年2月にはRecursion PharmaceuticalsとCRISPR Therapeuticsを買い増し、年初にはBeam Therapeutics、Intellia Therapeutics、Twist Bioscienceを組み入れる動きが報じられました(Twistはその後売却が続いています)。2026年7月10日時点のARKG上位3銘柄はTempus AI、10x Genomics、Twist Bioscienceです。

この事実が、この記事の主張を最もよく支えています。専属のリサーチ体制を持ち、テーマの見立ても当たっていたプロが、10年以上そのテーマに賭けて、S&P500に年率7ポイント差で負けている。個人投資家が「上がると思ったのに勝てない」と感じるのは、目利きの精度の問題ではないということです。

専属のリサーチ体制を持ち、テーマの見立ても当たっていたプロが、10年以上そのテーマに賭けて、S&P500に年率7ポイント差で負けている。

— キャシー・ウッドは、降りていない

そして前節の希薄化の表を思い出してください。ARKが2026年に買い増しているRecursion(株数の増加が年率+26.8%)、Intellia(同+16.9%)、Beam(同+14.0%)は、いずれも株数が速く増えている側です。科学が進んでも、その進歩の資金は株主が薄まる形で支払われます。

07 · JAPAN'S STRUCTURE

日本側の構造 — 出口が細く、期限が来る

日本の創薬ベンチャーが米国よりさらに厳しい結果になっている背景には、制度側の事情もあります。

東証はグロース市場の上場維持基準を引き上げます。従来の「上場10年経過後に時価総額40億円以上」から「上場5年経過後に時価総額100億円以上」へ変更され、2030年3月1日以降に最初に到来する事業年度の末日から適用されます。2025年3月末時点でグロース市場約600社のうち時価総額100億円以上は約3割にとどまり、残り約7割が基準未達のリスクを抱えているとされます。収益化まで10年超を要する創薬モデルと、上場5年で100億円という期限は、噛み合わせが良いとは言えません。

指数のほうも消えました。日経BP社が算出していた上場バイオベンチャーの株式指数「日経BP・バイオINDEX」は2021年3月末で公開を終了しています。セクターの成績を測る公開ベンチマークが存在しないため、個人投資家が「自分の負けが平均なのか、自分だけなのか」を確認する手段がありません。本記事でバスケットを自作したのは、この穴を埋めるためです。

08 · THE VERDICT

結局、何が分かれ目だったのか

よく言われる説明実測との整合
バイオはそもそも上がらない× XBIは設定来20年でS&P500に勝っている(年率11.74%対10.98%)
治験に失敗するから負ける× サンバイオは10年で見れば▲33.2%と群内では上位。起点の違いのほうが支配的
プロに任せれば違う× ARKGは設定来年率+6.23%、同期間のSPYは+13.60%
収益のある会社かどうかで分かれる○ 2021年2月以降でIBBのみプラス(+10.6%)。日本でも収益ある製薬5銘柄は+88.9%、創薬ベンチャー19銘柄は▲61.9%
いつ買ったかで決まる○ XBIは2006年起点なら勝者、2021年2月起点なら▲12.9%で5年5カ月未回復
1銘柄選ぶと分布の悪いほうを引く○ 日本の創薬ベンチャーはバスケット▲61.9%に対し中央値▲84.9%

「上がると思っても上手くいかない」という体感は、予想の精度の問題ではありませんでした。予想が当たった場合の取り分が、非対称性・希薄化・宝くじプレミアム・入り時の4つで削られるという構造の問題です。サンバイオを3,685円で買った人の見立ては当たっていて、実際に3倍になりました。それでも、多くの人はその3倍を受け取っていません。

予想が当たった場合の取り分が、非対称性・希薄化・宝くじプレミアム・入り時の4つで削られるという構造の問題です。

— 結局、何が分かれ目だったのか(本記事の結論)

⚠ 留意点

一次情報(学術文献・公式資料)

FAQ

Q. バイオ株は本当に儲からないのですか?
市場と時期によって答えが正反対になります。米国の臨床段階バイオを等金額で持つXBIは、2006年2月の設定から2026年7月24日まで年率11.74%で、同期間のS&P500連動ETF(SPY)の10.98%を上回っています。つまり「バイオは上がらない」は米国の長期では成り立ちません。一方で日本の創薬バイオベンチャー19銘柄を等金額で持った場合、直近10年(2016年7月25日〜2026年7月24日)の成績は▲61.9%、中央値は▲84.9%で、TOPIX(+280.3%)を上回った銘柄は19銘柄中0でした。さらに米国でも2021年2月のピークで買っていた場合、XBIは5年5カ月たっても▲12.9%、ARKGは▲66.1%で、同期間にS&P500は+103.8%です。儲かるかどうかを決めていたのは治験の成否ではなく、収益のある会社かどうかと、いつ買ったかでした。

Q. 日本のバイオベンチャーと米国では何が違うのですか?
最大の違いは買収されるかどうかです。米国では臨床データが良ければ大手製薬に買収されてプレミアムがつき、そこが投資家の出口になります。XBIが等金額(=小型株の比重が高い)にもかかわらず設定来でS&P500に勝っているのは、この買収プレミアムが平均を押し上げているためです。日本ではこの出口が細く、資金を増資でつなぐしかないため、株数の増加が株主の取り分を削り続けます。実測でも、アンジェスの発行済株式数は2018年11月からの7.4年で9,088万株→3億9,563万株(+335.3%、年率+22.1%)に増えました。加えて日本では日経BP・バイオINDEXが2021年3月末で公開を終了し、セクターを測る指数自体が存在しません。東証グロース市場の上場維持基準も「上場10年後に時価総額40億円」から「上場5年後に100億円」へ引き上げられ、2030年3月1日以降に到来する事業年度末から適用されます。

Q. 治験が成功すれば株は上がるのではないですか?
上がりますが、失敗したときの下げのほうが大きく、長く続きます。Hwang(2013、PLoS ONE 8(8): e71966)は大手バイオ医薬品企業の治験結果発表を分析し、好材料でおよそ+3%の異常リターンが出る一方、悪材料による下落は規模が大きく、より長く尾を引くと報告しています。2000〜2020年の13,807試験に対象を広げた研究(PLoS ONE, 2022, e0272851)でも、異常リターンの大きさを最もよく説明したのは疾患でも開発相でもなく「早期バイオか大手製薬か」でした。そもそも到達確率が低く、BIO・Informa・QLS Advisorsの共同調査(2011〜2020年、1,779社・9,704プログラム・12,728回の相間移行)によれば、Phase Iから米国FDA承認までたどり着くのは7.9%です。最大の関門はPhase II→IIIの28.9%で、腫瘍領域に限ればPhase Iからの到達率は5.3%まで下がります。

Q. ARKG のようなバイオETFを買えばよいのではないですか?
ETFにすれば個別銘柄の全損は避けられますが、当サイトの実測ではセクターの下げ自体は避けられていません。ARK Genomic Revolution ETF(ARKG)は2014年10月の設定から2026年7月24日まで年率6.23%で、同期間のSPY(13.60%)に大きく届いていません。最大下落率は▲83.6%、2021年1月20日の高値から5年半たっても回復していません。より重要なのは、投資家の平均的な入り時が高値だったことです。ARKGの純資産は2021年初におよそ90億ドルまで膨らみ、2026年3月26日時点では9.92億ドル、ピークのおよそ11%です。モーニングスターのエイミー・アーノットによる過去10年の集計では、ARKは運用会社単位で最大の資産毀損(143億ドル)となり、ARKK単体でも71億ドルの毀損で3位でした。ファンドの成績(時間加重)と投資家が実際に得た成績(金額加重)は別物で、バイオではこの差が特に大きくなります。

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本記事は学術文献・業界団体の公表レポート・日本取引所グループの公表資料および市場データ(Yahoo Finance経由)を基に、当サイトが計算条件を明示した上で集計・整理した一般的な情報提供を目的としており、特定の銘柄・商品・売買タイミングの採用を推奨・勧誘するものではありません。過去の実績は将来の成果を保証しません。投資に関する最終判断はご自身の責任で行ってください。

出典:BIO/Informa Pharma Intelligence/QLS Advisors「Clinical Development Success Rates 2011–2020」、Hwang (2013) PLoS ONE 8(8): e71966、PLoS ONE (2022) 17(8): e0272851、Bali・Cakici・Whitelaw (2011) Journal of Financial Economics 99(2)、日本取引所グループ、日経バイオテク、ARK Invest、Morningstar、株探。市場データは2026年7月24日終値まで(実測・集計は当サイト算出、2026年7月27日時点・編集部構成)。