INVESTMENT STRATEGY ・ 投資の考え方 第7号

Nifty Fifty は本当に没落したのか — 生き残った20社だけを追っても、指数に負けた

1972年12月、米国の機関投資家は50ほどの大型グロース株を「ワン・ディシジョン株」と呼んでいました。買うという一度の判断だけでよく、あとは値段を見ずに持ち続ければいい銘柄という意味です。平均PERは45倍、S&P500の19.2倍の2倍以上。そして1973年から74年にかけて、S&P500が21カ月で48.2%下げるなか、ポラロイドは高値から▲91%、アボンは▲86%、ディズニーは▲87%——フォーブスの記者は「Nifty Fiftyは1銘柄ずつ、外に連れ出されて撃たれた」と書きました。

ところが1990年代、ジェレミー・シーゲルが「長期で見れば彼らは割高ではなかった」と反論し、2002年にはFesenmaier & Smithが「どの50銘柄をNifty Fiftyと呼ぶかで結論がひっくり返る」と再反論します。

この論争を一次資料で突き合わせ、さらに論文が終わった2001年末から2026年7月までの24.6年を当サイトが実測して継ぎ足しました(2026年7月27日時点・編集部構成)。

判定
値段次第

「全滅した」も「結局は正当化された」も外れ。正しくは、高いPERで買った分だけ、きっちり負けていた。1972年12月のPERが10ポイント高いごとに、その後29年の年率リターンは約2ポイント低い(r=−0.56、両側p=0.00003)。倒産組を除いた生存者だけを追ってもなお、指数に届きません。

1972年12月のPER
45.2倍 vs 19.2倍
Nifty Fifty平均 vs S&P500
29年後の資産
0.54倍
両リスト共通24銘柄・指数=1.00
PERとリターン
10pt で −2.0%
傾き−0.20・r=−0.56
生存20社の答え合わせ
4 / 20
2001年以降に指数超えした数
▲91% ポラロイドが1973〜74年の急落で高値から失った下落率。Nifty Fifty最大の下げ幅
24社 モルガン・ギャランティ版とキダー・ピーボディ版、両リストに共通する「文句なしのNifty Fifty」の銘柄数
3割超 Magnificent Seven 7銘柄がS&P500に占める比重。50銘柄に分散した1972年より集中度は高い
01 · NO OFFICIAL LIST

公式リストは、存在しなかった

まず押さえるべき事実がひとつあります。Nifty Fiftyに公式リストはありません。これは些末な但し書きではなく、後年の学術論争の核心そのものです。

広く使われている候補は2つです。ひとつはモルガン・ギャランティ・トラストが機関投資家向けに挙げていたとされる50銘柄で、1977年のフォーブス誌の脚注に載ったもの。もうひとつはキダー・ピーボディが毎月出していた「NYSEで最もPERの高い50銘柄」のリストです。フォーブス自身が1977年に「公式リストは存在しなかった。ある古参は、キダー・ピーボディの月次リストが最も近かったと考えている——キダー本人は手柄を認めたがらないが」と書いています。

2つのリストは24銘柄しか重なっていません。そして後で見るように、この重なり方こそが「Nifty Fiftyは正当化されたのか」という問いの答えを決めてしまいます。

1972年12月の値段

銘柄(モルガン・ギャランティ版の上位)1972年12月のPER
Polaroid(ポラロイド)90.7倍
McDonald's(マクドナルド)85.7倍
MGIC Investment83.3倍
Walt Disney(ディズニー)81.6倍
Baxter Travenol(バクスター)78.5倍
Avon Products(アボン)65.4倍
Digital Equipment(DEC)60.0倍
Xerox(ゼロックス)48.8倍
Eastman Kodak(コダック)48.2倍
Coca-Cola(コカ・コーラ)47.6倍
S&P50019.2倍

※Fesenmaier & Smith(2002)Table 1より抜粋。同論文はキダー・ピーボディ基準のPER(月末株価÷直近4四半期の実績EPS)で統一。モルガン・ギャランティ版50銘柄の平均は45.2倍・中央値41.0倍(当サイトが同論文の表から算出)。シーゲルはバリューラインの予想EPSベースのPERを使っており、そちらの基準では平均約42倍と紹介されることが多く、この差は算出方法の違いです。

面白いのは、このリストが必ずしも「高PER株の集まり」ではないことです。PERが50倍以上だったのは50銘柄中16銘柄にすぎず、11銘柄は30倍未満。ITTに至ってはPER16.3倍と、S&P500の19.2倍より安かったのです。後で効いてきます。

02 · THE CRASH, 1973–74

1973–74 — 「1銘柄ずつ、外に連れ出されて撃たれた」

ブレトンウッズ体制の崩壊、インフレの加速、金利上昇、そして1973年10月の第一次オイルショック。S&P500は1973年1月11日の120.24から1974年10月3日の62.28まで、21カ月かけて48.2%下落しました(当サイト実測、価格ベース)。大恐慌以来の下げです。

Nifty Fiftyはしばらく踏みとどまりました。richly pricedなNifty Fiftyと、それ以外の沈んだ市場という「二層相場」がしばらく続いたのです。そのあと、こうなりました。

銘柄1972–73年の高値 → 1974年の安値
Polaroid▲91%
Walt Disney▲87%
Avon Products▲86%
McDonald's▲72%
Xerox▲71%
Coca-Cola▲69%
S&P500(1973/1/11→1974/10/3)▲48.2%

※Xerox・Avon・PolaroidはFesenmaier & Smith(2002)本文の数値。Disney・McDonald's・Coca-Colaは同時期を扱う二次資料の広く引用される数値で、高値・安値の日付定義が論文と厳密には一致しない可能性があります。S&P500のみ当サイト実測。

この局面をフォーブスの記者はこう書きました——「Nifty Fiftyは1銘柄ずつ、外に連れ出されて撃たれた(taken out and shot one by one)」。ここで話が終わっていれば、Nifty Fiftyは単なるバブルの教訓として片付いたはずでした。

Nifty Fiftyは1銘柄ずつ、外に連れ出されて撃たれた。

— フォーブス誌の記者
03 · THE SIEGEL DEFENSE

シーゲルの反論 — 「実は、割高ではなかった」

1990年代半ば、ペンシルベニア大学ウォートン校のジェレミー・シーゲルが通説をひっくり返しにかかります。「The Nifty-Fifty Revisited: Do Growth Stocks Ultimately Justify Their Price?」(Journal of Portfolio Management, 1995年夏号, pp.8–20)と、著書『Stocks for the Long Run』(1994年初版・1998年第2版)です。

シーゲルの計測では、モルガン・ギャランティ版50銘柄を1972年12月に買って持ち続けた場合、1998年8月までの年率リターンは12.2%。同期間のS&P500は12.7%——差はわずか0.5ポイントでした。壊滅どころか、ほぼ指数並みだったのです。

シーゲルはさらに「warranted P/E(正当化されるPER)」という概念を持ち込みます。その後の実績リターンから逆算して、1972年末に「いくらまでなら払ってよかったか」を求めるものです。この基準で見ると、フィリップ・モリス・コカ・コーラ・メルクといった銘柄は1972年の高値ですら、むしろ安すぎたという結論になりました。Nifty Fiftyのその後の増益率は市場平均より年3%ほど高く、高いPERはおおむねその増益で説明できた、という主張です。

04 · THE REBUTTAL

再反論 — 「どの50銘柄を指すかで、結論がひっくり返る」

2002年、ポモナ大学のJeff FesenmaierとGary Smithが「The Nifty-Fifty Re-Revisited」で反撃します。論点は単純です——シーゲルはモルガン・ギャランティ版を使ったが、そのリストには「Nifty Fiftyの物語」の主役であるはずの高PER株が半分しか入っていない。PER16.3倍のITTが「行き過ぎたグロース株の象徴」だとは、さすがに言いにくい。

そこで両氏は、モルガン・ギャランティ版とキダー・ピーボディ版の両方に載る24銘柄——文句なしのNifty Fifty——を切り出しました。ポラロイドからメルクまでの24社で、平均PERは59.8倍です。1972年12月31日から2001年12月31日までの29年間、結果はこうなりました。

ポートフォリオ(1972/12/31→2001/12/31・29年)年率リターン29年後の資産(S&P500=1.00)
モルガン・ギャランティ版 50銘柄11.64%0.91
キダー・ピーボディ版 50銘柄13.11%1.32
キダー版から Wal-Mart 1銘柄を除く9.93%0.58
両リスト共通「文句なしの24銘柄」9.69%0.54
S&P50012.01%1.00

※Fesenmaier & Smith(2002)Table 3・Table 4より。等金額・凍結(frozen=当初等金額で以後リバランスなし)ベース。合併・買収の代金は存続会社に再投資、破綻2社(Polaroid・Standard Brands Paint)は無価値化した日で評価。

2つの数字が、この論争を決める

ひとつめ。「文句なしの24銘柄」を1972年末に等金額で買った人は、29年後にS&P500を買った人の54%の資産しか持っていません。半分です。シーゲルが正しかったのは、彼が選んだリストにおいてだけでした。

ふたつめ。キダー版が指数に勝ったのは、Wal-Mart 1銘柄のおかげです。ウォルマートの29年年率26.96%はCRSPデータベース全体で3位という怪物ぶりで、この1銘柄を抜くと年率13.11%→9.93%、資産比1.32→0.58へ反転します。キダー版50銘柄のうち指数に勝ったのはわずか10銘柄、80%が負けていました。論文はこれを「高PER株を買うのは宝くじを買うようなもの——期待値は良くないが、一発当たる可能性がある」と表現しています。

そして、価格と結果の関係

論争の本丸はここです。1972年12月のPERとその後29年の年率リターンの間には、相関係数−0.56(両側p=0.00003)、回帰の傾き−0.20という関係がありました。読み下すと——PERが10ポイント高いごとに、その後29年の年率リターンは約2ポイント低い。

1972年12月のPER帯(モルガン・ギャランティ版50銘柄)銘柄数29年 平均年率S&P500に勝った数
50倍以上164.33%3 / 16
30〜50倍239.16%7 / 23
30倍未満1113.34%8 / 11

※当サイトが同論文Table 1の全50行から集計。相関係数・回帰係数も再計算し、r=−0.557・傾き−0.204と論文記載値(−0.56・−0.20)に一致することを確認しています。

同じ50銘柄、同じ29年。違うのは1972年に払った値段だけです。50倍以上を払った16銘柄の平均年率は4.33%で、30倍未満だった11銘柄の13.34%の3分の1にとどまりました。論文の冒頭にある一文が、そのまま結論になっています——「偉大な企業が、必ずしも偉大な株であるとは限らない」。

偉大な企業が、必ずしも偉大な株であるとは限らない。

— Fesenmaier & Smith(2002)冒頭の一文
05 · OUR OWN MEASUREMENT

実測 — 論文が終わった2001年から、その先の四半世紀

Fesenmaier & Smithの検証は2001年12月31日で止まっています。そこから先はどうなったのか。当サイトで継ぎ足しました。

対象は、モルガン・ギャランティ版50銘柄のうち2026年7月時点で同一銘柄として連続上場していることが明確な20社です。2001年12月31日から2026年7月24日までの24.56年、配当込み(調整後終値)・等金額で計測し、ベンチマークはS&P500トータルリターン指数(^SP500TR)としました。

銘柄1972/12
PER
1972→2001
年率
2001→2026
年率
McDonald's85.710.50%12.68%
Walt Disney81.68.97%7.57%
Baxter78.510.10%0.76%
Intl Flavors & Fragrances75.85.66%6.20%
Johnson & Johnson61.913.35%9.17%
Schlumberger49.510.37%4.74%
Xerox48.80.89%▲6.05%
Coca-Cola47.613.15%8.29%
Texas Instruments46.311.27%12.07%
Eli Lilly46.013.14%14.83%
Merck45.914.27%7.46%
3M40.89.78%8.16%
American Express39.010.30%11.57%
Halliburton38.33.19%8.60%
IBM37.49.68%5.34%
Procter & Gamble32.011.94%8.40%
PepsiCo29.315.55%7.12%
Pfizer29.016.99%2.28%
Bristol-Myers27.615.35%4.82%
Citigroup(旧First National City)22.413.36%▲2.83%
S&P50019.212.01%9.94%
生存20社 等金額8.62%

※1972→2001年はFesenmaier & Smith(2002)Table 1。2001→2026年は当サイト実測(2001年12月31日→2026年7月24日、24.56年、Yahoo Finance調整後終値・配当再投資込み・等金額)。ベンチマークはS&P500トータルリターン指数。

結論:生存者バイアスを最大限に効かせても、負ける

生存20社を等金額で持った場合、24.56年で7.62倍・年率8.62%。同期間のS&P500トータルリターンは10.25倍・年率9.94%でした。資産比0.74、指数に勝ったのは20社中4社だけ(イーライリリー、マクドナルド、テキサス・インスツルメンツ、アメリカン・エキスプレス)。

ここが重要なところです。この20社という母集団は、倒産した銘柄も買収されて消えた銘柄も最初から入っていません。ポラロイドもKマートもシアーズもJ.C.ペニーもレブロンもアボンも、破綻する前に名簿から落としてあります。つまり生存者バイアスを最大限に効かせて、勝てる側にだけ賭けた後出しのポートフォリオです。それでも指数に届きませんでした。

生存者バイアスを最大限に効かせて、勝てる側にだけ賭けた後出しのポートフォリオ。それでも指数に届きませんでした。

— 2001→2026年、当サイト実測

なおゼロックスとシティグループは分社・スピンオフの調整方法によって数値がぶれ得るため、この2社を除いた18社でも検算しました。結果は年率9.07%・資産比0.82・指数超え4社で、結論は変わりません

06 · THE CASUALTY LIST

消えた側の名簿

残る30社の行き先です。「一度買えば売らなくていい」と言われた銘柄がどこへ行ったか。

銘柄1972年のPERその後
Polaroid90.72001年 破綻
Kresge(→Kマート)54.32002年 破綻
Sears Roebuck30.82018年 破綻(Sears Holdings)
J.C. Penney34.12020年 破綻
Revlon26.12022年 破綻
Avon Products65.42024年8月14日 Chapter 11申請(タルク訴訟)
Digital Equipment60.01998年 コンパックが買収
Burroughs48.81986年 スペリーと合併しUnisysへ
Eastman Kodak48.22012年 Chapter 11。2025年に継続企業の前提に関する重要事象を開示
Gillette25.92005年 P&Gが買収
Anheuser-Busch31.92008年 InBevが買収
Schering50.42009年 メルクに統合
Philip Morris25.929年年率17.68%(モルガン版で最高)。2008年にPMIとアルトリアへ分割

※抜粋。PERはFesenmaier & Smith(2002)Table 1、その後の経緯は各社の公表資料・SEC提出書類に基づく。破綻は米連邦破産法第11章の申請日。

並べてみると、パターンが見えます。1972年に「技術の覇者」だった銘柄ほど、無残です。ポラロイド(インスタント写真)、ゼロックス(複写機)、コダック(フィルム)、バロース(メインフレーム)、DEC(ミニコン)——この5社はどれも当時の業界で圧倒的な支配力を持ち、そして全滅と言っていい結果になりました。

逆に生き残ったのは、コカ・コーラ、P&G、マクドナルド、フィリップ・モリスといった技術ではなくブランドと価格決定力で稼ぐ企業と、特許と規制が参入障壁になる製薬(リリー・メルク・J&J)でした。1972年の投資家が「絶対に負けない」と信じた根拠——市場シェア、技術的優位、二桁成長——は、実のところ50年もつ堀ではなかったということです。もっとも、シェアを50年守ったからといって高すぎる値段が正当化されるわけでもありません。マクドナルドはPER85.7倍という、リスト2番目に高い値段からスタートしてなお、その後54年を通じて立派な成績を残しています。値段は結果を「傾ける」のであって、決めてしまうわけではない——r=−0.56という数字は、そういう意味の強さです。

07 · THE MAG 7 COMPARISON

Magnificent Seven は「新しいNifty Fifty」なのか

この比較は2023年以降、繰り返し語られてきました。数字で見るとどうなるか。

Nifty Fifty(1972年12月)Magnificent Seven(2026年7月)
当該グループのPER45.2倍(実績・平均)22.2倍(予想・時価総額加重)
S&P500のPER19.2倍(実績)20.1倍(予想12カ月)
プレミアム倍率2.35倍1.10倍
指数に占める比重50銘柄で相当部分(推計)7銘柄で3割超

※Nifty FiftyのPERはFesenmaier & Smith(2002)Table 1から当サイト算出(実績EPSベース)。Magnificent Sevenは当サイトが2026年7月24日時点の時価総額と各社の予想PER(Yahoo Finance)から加重平均して算出(合計時価総額21.9兆ドル)。S&P500の予想12カ月PERはFactSet Earnings Insight(2026年7月24日)の20.1倍。実績PERと予想PERは定義が異なるため、この比較は厳密な同一基準ではありません。

結論から言えば、「バリュエーションの過熱度」という一点だけを見るなら、いまは1972年とはまるで違います。Nifty FiftyはS&P500の2.35倍の値段で買われていましたが、Magnificent Sevenのプレミアムは1.10倍。市場全体より1割高いだけです。ちなみに巷でよく引かれる「Mag 7は予想PER28倍」という数字は、テスラ(予想PER141倍)を等金額で混ぜた場合や集計時点の違いによるもので、指数への影響を見るなら時価総額加重の22.2倍のほうが実態に近くなります。

一方で集中度は当時を上回ります。7銘柄でS&P500の3割超という比重は、50銘柄に分散していた1972年より遥かに極端です。数字が言えるのはここまでで、「割高さが低い方が安全」なのか「集中度の高い方が危険」なのかを、過去の1事例から断定することはできません。当サイトのCapExトラッカーで追っている通り、Magnificent Sevenの利益がAI設備投資という前例のない規模の支出に支えられている点も、1972年には存在しなかった変数です。

Nifty Fiftyから引き出せる教訓があるとすれば、それは「集中したら危ない」でも「グロース株を買うな」でもありません。50年後に振り返ったとき、企業の運命よりも、あなたが払った値段のほうが強く結果に効いていた——それだけです。

50年後に振り返ったとき、企業の運命よりも、あなたが払った値段のほうが強く結果に効いていた。

本記事の結論
08 · THE JAPAN ANGLE

日本からの視点 — Nifty Fifty にソニーがいた

あまり知られていませんが、キダー・ピーボディ版のリストにはソニーが入っています。1972年12月のPERは55.0倍、その後29年の年率リターンは7.83%(S&P500は12.01%)でした。

ソニーは1961年に日本企業として初めて米国でADRを組成し、1970年9月には日本企業として初めてニューヨーク証券取引所に上場しています。上場からわずか2年で、米国機関投資家の「一度買えば売らなくていい」名簿に載っていたわけです。日本企業がNifty Fiftyの一角だったという事実は、この物語が対岸の火事ではないことを示しています。

いま日本から買うなら

生存20社の大半は日本のネット証券で売買できます。当時の「集中したグロース株の塊」を今の商品で再現するなら、東証にもiFreeETF FANG+やナスダック100連動型のETFがあり、いずれも上位数銘柄への集中度は極めて高くなります。制度面では、NISAの枠が2層である点に注意が必要です。

売却したら?
非課税保有限度額(生涯1,800万円)復活する——ただし翌年以降に、簿価(取得金額)分だけ(金融庁:「翌年以降売却した商品の簿価の分だけ非課税投資枠が復活し、再利用が可能」)
年間投資枠(つみたて120万・成長240万/年)その年の中では戻らない——枠は購入額で消費され、復活の定めは総枠(翌年以降)にしかない

Nifty Fiftyの本来の思想である「買ったら売らない」は、皮肉なことにNISAの設計とは相性が良いものです。枠を回転に使わなければ非課税の複利がそのまま効きます。ただしそれは「何を、いくらで買ったか」が50年後まで効き続けることも同時に意味します。値段の話から逃げられる制度は存在しません。企業価値から逆算して値段を検算する手順はDCF計算のやり方に、集中と分散の配分の考え方はコア・サテライト投資の比率にまとめています。

⚠ 留意点

SOURCES

一次情報(学術文献・公式資料)

FAQ

Q. Nifty Fifty とは何ですか?
1960年代後半から1970年代初頭にかけて、米国の機関投資家がニューヨーク証券取引所の大型グロース株およそ50銘柄をまとめて呼んだ非公式の通称です。「値段がいくらであっても買うべきで、決して売らなくてよい」という意味で「ワン・ディシジョン株(one-decision stocks)」とも呼ばれました。ポラロイド、ゼロックス、コダック、アボン、マクドナルド、ディズニー、コカ・コーラ、IBM、メルクなどが代表格です。重要なのは公式リストが存在しなかったことで、モルガン・ギャランティ・トラスト版とキダー・ピーボディ版という2つの候補リストがあり、どちらを使うかで後年の検証結果が大きく変わりました。

Q. Nifty Fifty は結局、儲かったのですか、損したのですか?
どのリストを指すかで答えが変わります。ジェレミー・シーゲルはモルガン・ギャランティ版50銘柄で1972年12月〜1998年8月に年率12.2%(S&P500は12.7%)と、ほぼ指数並みだったと示しました。一方Fesenmaier & Smith(2002)は、2つのリスト双方に載る24銘柄こそが本来のNifty Fiftyだとして1972年末〜2001年末を実測し、年率9.69%・S&P500の12.01%に対して29年後の資産は54%にとどまったと報告しています。共通するのは価格との関係で、1972年12月のPERが10ポイント高いごとに、その後29年の年率リターンは約2ポイント低くなっていました(相関係数−0.56、両側p=0.00003)。

Q. Nifty Fifty のうち、どの銘柄が生き残り、どれが消えたのですか?
モルガン・ギャランティ版50銘柄のうち、2026年7月時点で同一銘柄として連続上場が明確なのは20社です。ポラロイドは2001年、Kマート(旧クレスゲ)は2002年、シアーズは2018年、J.C.ペニーは2020年、レブロンは2022年、アボンは2024年8月に破綻。ゼロックスは1株2.58ドル(2026年7月24日終値)まで沈み、コダックは2012年の破綻を経て2025年に継続企業の前提に関する重要事象を開示しました。一方でイーライリリー、マクドナルド、テキサス・インスツルメンツ、アメリカン・エキスプレスは2001年末以降もS&P500を上回っています。生き残った企業に共通するのはブランドと価格決定力で、1972年に「技術の覇者」だった銘柄(ポラロイド・ゼロックス・コダック・バロース・DEC)がむしろ最も無残な結果になりました。

Q. いまの Magnificent Seven は Nifty Fifty と同じ状況ですか?
バリュエーションの倍率で見る限り、同じではありません。1972年12月のNifty Fiftyは平均PER45.2倍でS&P500の19.2倍に対し2.35倍のプレミアムでしたが、2026年7月時点のMagnificent Sevenは時価総額加重の予想PERが22.2倍、S&P500の予想PER20.1倍(FactSet、2026年7月24日)に対して1.10倍にとどまります。ただし指数に占める集中度は当時を上回り、7銘柄でS&P500の3割超を占めています。「バリュエーションの過熱度は当時よりずっと低いが、集中度はより高い」というのが数字の示すところで、どちらが将来のリターンに効くかを過去の1事例から断定することはできません。

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本記事は学術文献・SEC提出書類・金融庁/FactSetの公表資料および市場データ(Yahoo Finance経由)を基に、当サイトが計算条件を明示した上で集計・整理した一般的な情報提供を目的としており、特定の銘柄・商品・売買タイミングの採用を推奨・勧誘するものではありません。過去の実績は将来の成果を保証しません。投資に関する最終判断はご自身の責任で行ってください。

出典:Fesenmaier & Smith「The Nifty-Fifty Re-Revisited」(Pomona College)、Siegel (1995) Journal of Portfolio Management 21(4)、Siegel『Stocks for the Long Run』、Forbes (1977)、FactSet Earnings Insight、金融庁NISA公式、各社SEC提出書類。市場データは2026年7月24日終値まで(実測・集計は当サイト算出、2026年7月27日時点・編集部構成)。