INVESTMENT STRATEGY ・ 投資の考え方 第23号
カバードコールETFが勝てるのは「ゆっくりした下げ」と「VIXが高い横ばい」だけだった。38年続けるとS&P500の4割になる
編集部・最終更新 2026年7月31日
毎月分配・利回り10%超をうたうカバードコールETFに、世界の資金が集まっています。米国の「デリバティブ・インカム」カテゴリは約200本・約1,470億ドル(2025年9月末・Morningstar)。東証にも5本が上場し、2026年4月に上場した日次型の563Aは3ヶ月あまりで約449億円を集めました。解説記事の決まり文句は「レンジ相場に強い」「下値をプレミアムが緩和する」。では、それはどういう相場で・どのくらい本当なのか。
この問いに数字で答えるため、CBOEが算出するS&P500カバードコール指数(BXM)とS&P500(配当込み)を1988年7月〜2026年6月の456ヶ月で突き合わせ、月次リターンの帯別に勝率を全数実測しました。あわせて米国ETF4本(QYLD・XYLD・JEPI・JEPQ)と東証5本の設定来、NISAの可否、分配金の中身まで一次資料で確認しています(2026年7月31日時点・編集部構成)。
勝てる局面は実在する。ただしそれは「月▲2%を超えるゆっくりした下げ」(超過+2.0pt・勝率9割)と「VIXが高い横ばい」(+0.9pt・勝率75%)だけ。勝ち負けの境界は月+0.5%で、それより上げた月は原則負けます。上昇月は456ヶ月中194ヶ月(43%)あり、下落月92ヶ月(20%)の勝ち分を数で圧倒——38年の累積は23.6倍対60.2倍=S&P500の4割。しかも急落(2020年)は守れず、守れた年(2022年)の勝ち分は翌年に消えました。
38年の累積(配当込み)
23.6倍 / 60.2倍
BXM対S&P500TR。年率8.7%対11.4%
下落月(月▲2%以下)
+2.0pt
92ヶ月・勝率88〜92%
大幅高月(月+5%超)
▲3.2pt
69ヶ月・勝率3%
2020年(急落+V字)
▲2.8%
S&P500は+18.4%。21pt差
02 · THE SCOREBOARD
456ヶ月の帯別採点——境界は月+0.5%
「どういうときに効果的か」への答えは、S&P500の月次リターンで月を5つの帯に分け、各帯でBXMがS&P500(配当込み)をどれだけ上回った/下回ったかを数えれば出ます。1988年7月〜2026年6月の456ヶ月、全数です。
| S&P500の月次リターン帯 | 月数 | BXMの超過(月平均) | 中央値 | 勝率 |
| 大幅安(▲5%超) | 40 | +2.16pt | +2.44pt | 88% |
| 下落(▲5〜▲2%) | 52 | +2.02pt | +2.07pt | 92% |
| 横ばい(±2%) | 170 | +0.46pt | +0.52pt | 65% |
| 上昇(+2〜5%) | 125 | ▲1.31pt | ▲1.30pt | 13% |
| 大幅高(+5%超) | 69 | ▲3.20pt | ▲3.41pt | 3% |
※当サイト実測。BXMは2002年3月22日以降がCboe公式配布の日次データ、それ以前はYahoo Financeの同一系列(接合点の値は一致)。S&P500は配当込みトータルリターン指数(^SP500TR)。月末値ベース・完結した月のみ。95%信頼区間は大幅安[+1.5, +2.9]・下落[+1.7, +2.4]・横ばい[+0.3, +0.6]・上昇[▲1.5, ▲1.1]・大幅高[▲3.7, ▲2.7]。
通説の「下値をプレミアムが緩和する」は、この表では月▲2%を超える下げに限って明確に真です(+2.0pt・勝率9割)。「レンジ相場に強い」も方向としては真ですが、横ばい月の+0.46ptは下落月の4分の1しかありません。そして帯を機械的な五分位(各91ヶ月)に切り直すと、勝ち負けの境界がもっと正確に見えます——月▲2.0〜+0.5%の帯までは+0.91pt・勝率82%で勝ち、月+0.5〜+2.1%の帯で▲0.17pt・勝率42%と負けに転じる。つまりカバードコールの損益分岐は「横ばい」ではなく月+0.5%です。市場が平均的に上がる月(この38年の平均は月+0.9%)ですら、既に負ける側の帯にいます。
カバードコールの損益分岐は「横ばい」ではなく月+0.5%です。市場が平均的に上がる月(この38年の平均は月+0.9%)ですら、既に負ける側の帯にいます。
本記事の実測(BXM・456ヶ月)
この形は期間を切っても崩れません。遡及計算期(1988〜2001年)・指数公表後の実算期(2002年〜)・直近10年(2016年〜)のどの区間でも、下落月+1.9〜+2.6pt/大幅高月▲3.2〜▲3.9ptと同じ階段が出ます。むしろ直近10年は横ばい月の優位が+0.10pt・勝率54%まで痩せており、「レンジ相場に強い」の取り分は昔より薄くなっています。
03 · CRASH TEST
暴落で守れるのか——ゆっくりなら守れる。速いと守れない
「下値の緩和」を一番期待される場面、つまり暴落の実績を4回分並べます。下落局面そのものと、その後12ヶ月の戻り局面をセットで見るのがポイントです。
| 局面 | 下落局面 BXM | 同 S&P500TR | 直後12ヶ月 BXM | 同 S&P500TR |
| ドットコム崩壊(2000-08〜2002-09) | ▲30.0% | ▲44.7% | +25.4% | +24.4% |
| リーマン(2007-10〜2009-02) | ▲35.8% | ▲50.9% | +39.2% | +53.6% |
| COVID(2020-01〜2020-03) | ▲21.3% | ▲19.6% | +32.2% | +56.4% |
| 2022年利上げ(2021-12〜2022-09) | ▲17.0% | ▲23.9% | +14.6% | +21.6% |
※当サイト実測。月末値ベース。「直後12ヶ月」は下落局面の底の月末から12ヶ月。
2年かけて下げたドットコム崩壊とリーマンでは、たしかに14〜15ポイント浅く済みました。ところがCOVIDでは、カバードコールのほうが深く下げています(▲21.3%対▲19.6%)。2ヶ月で終わった急落では、受け取っている保険料は1ヶ月分しかなく、クッションになる前に底が来るからです。しかも直後の急反発はコールの上限に頭を抑えられ、12ヶ月で24ポイント置いていかれました。「守れるのはゆっくりした下げだけ。速い暴落は守れず、そのあとの戻りも取り逃す」——これがこの戦略の下方保護の実像です。
守れるのはゆっくりした下げだけ。速い暴落は守れず、そのあとの戻りも取り逃す。
本記事の結論
絶対水準でも誤解されがちです。BXM自体の最大下落率は▲35.8%(2008年5月→2009年2月、回復まで43ヶ月)。S&P500の▲50.9%よりは浅いものの、「3分の1強下がって戻りに3年半かかる」商品であって、下がらない商品ではありません。
04 · THE BEST CASE
ベストケースは「VIXが高い横ばい」
売っているのがボラティリティなら、保険料(プレミアム)が高いとき=VIXが高いときに売るほど有利なはずです。これも456ヶ月で確かめられます。月中のVIX平均で三分位に分けると:
- VIX低位(15.4未満・146ヶ月):超過▲0.67pt・勝率33%——静かな相場でのカバードコールは、安い保険料で上値だけ売る損な取引
- VIX中位(15.4〜20.7・146ヶ月):▲0.44pt・勝率49%
- VIX高位(20.7超・146ヶ月):+0.36pt・勝率56%——唯一の勝ち越し帯
さらに条件を重ねて「VIXが高く、かつ月±2%の横ばい」に絞ると、+0.86pt・勝率75%(36ヶ月)。荒れると身構えて保険料が高騰したのに、結局大きく動かなかった月——これがカバードコールの教科書的なベストケースで、実測でも最良でした。問題は、来月がその月になるかを事前に知る方法がないことです。帯別の勝率はすべて「月が終わってから分かる」条件であり、売買ルールとしては使えません。使えるのは「自分がこれから保有する期間に、どの帯が多いと考えるか」という期待の置き方だけです。
05 · THE LONG RUN
38年・暦年で見る——勝った年の翌年に取り返される
帯別の勝ち(下落・92ヶ月)と負け(上昇・194ヶ月)を38年ぶん積分すると、BXM 23.6倍・S&P500(配当込み)60.2倍。年率8.7%対11.4%で、最終資産はS&P500の39%です。Cboe自身のファクトシート(1986年起点)でも年率8.5%対11.2%と同じ差が出ています。暦年で数えるとBXMが勝った年は38年中13年——3年に1回です。
| 暦年 | BXM | S&P500TR | 何が起きたか |
| 2008 | ▲28.7% | ▲37.0% | ゆっくりした下げ→8pt浅く済む |
| 2020 | ▲2.8% | +18.4% | 急落もV字も同年に来て21pt差の最悪年 |
| 2022 | ▲11.4% | ▲18.1% | ゆっくりした下げ→7pt浅く済む |
| 2023 | +11.8% | +26.3% | 反発→前年の勝ち分が1年で帳消し |
※当サイト実測。月末値ベースの暦年リターン。
2022〜2023年をつなげると、BXMは▲0.9%、S&P500は+3.4%。「下げに強い」が効いた直近の年ですら、翌年の反発を取り逃した時点で2年通算では負けています。下げ相場がいつ来るか当てられるなら、カバードコールではなく現金化すればいい——結局この戦略の長期成績は、「上昇月のほうが多い市場で上値を売り続けるとどうなるか」の答えに収束します。
下げ相場がいつ来るか当てられるなら、カバードコールではなく現金化すればいい。
本記事の結論
06 · THE REAL ETFS
実際のETFでも同じことが起きるか(米国4本)
指数の話が実在のETFでも再現するかを、設定来・分配再投資込みで実測します。
| ETF | 設定 | 経費率 | 設定来 (分配再投資) | 比較指数ETF | 価格のみ (分配を使った場合の元本) |
| QYLD(NASDAQ100・月次ATM) | 2013-12 | 0.60% | +170%(年率8.2%) | QQQ +792%(年率18.9%) | ▲29.6% |
| XYLD(S&P500・月次ATM) | 2013-06 | 0.60% | +184%(年率8.3%) | SPY +489%(年率14.5%) | +3.1% |
| JEPI(S&P500系・アクティブ) | 2020-05 | 0.35% | +94%(年率11.3%) | SPY +174%(年率17.7%) | +14.6% |
| JEPQ(NASDAQ100系・アクティブ) | 2022-05 | 0.35% | +80%(年率14.9%) | QQQ +113%(年率19.5%) | +13.4% |
※当サイト実測(2026年7月30日終値まで・Yahoo Finance調整後終値=分配再投資込み)。経費率は各ファンドの運用報告ベース。設定日・純資産は各社公式(QYLD $80.3億・XYLD $32.2億=2026-07-30、JEPI $447.5億・JEPQ $406.6億=2026-06-30)。
4本とも設定来で原指数に大きく劣後し、QYLDの月次帯別はBXMの階段をそのまま再現します(下落月+1.9pt・勝率94%/大幅高月▲4.4pt・勝率0%)。注目すべきは「価格のみ」の列です。分配を再投資せず受け取って使う——多くの購入者の実際の使い方——を仮定すると、QYLDの元本は12.6年で▲29.6%。毎月の分配は無から生まれておらず、上値を売った代金と元本の一部を受け取っています。これは批判者の解釈ではなく発行体自身の開示で、QYLDの2024年11月分配のForm 19a-1通知は、当月分配の99.49%(見積り)が「元本の払い戻し(Return of Capital)」であり「利回りや収益と混同すべきではない」と明記しています。なおGlobal Xの分配方針は「受け取ったプレミアムの半分」か「純資産の1%」の低いほう(同社解説)です。
JEPI・JEPQは劣後幅が相対的に小さく見えますが、これは指数カバードコールとは別物だからです。目論見書によれば、低ボラティリティ株を主体に、純資産の20%を上限としてELN(株価指数連動債=指数保有とコール売りを1枚の債券に組み込んだデリバティブ)を保有するアクティブ運用で、フルカバーのATM型より上値の放棄が緩い設計です。同じ「カバコ」の棚で比較されますが、機構が違う商品として読む必要があります。
07 · BUYING IT IN TOKYO
東証で買う場合——5本の中身とNISA不可
東証には名称に「カバード・コール」を含むETFが5本上場しています(JPX銘柄一覧・2026年7月31日時点)。中身は1本ずつかなり違います。
| コード | 対象 | 上場 | 信託報酬等 | 分配 | 純資産 | 中身 |
| 2858 | 日経225 | 2022-07 | 0.3025% | 年2回 | 2.9億円 | 日経225現物+コール売り。プレミアム再投資型(日本初のカバコETF) |
| 2865 | NASDAQ100 | 2022-09 | 実質0.6275%程度 | 毎月 | 486.6億円 | QYLDを99.05%組み入れるフィーダー型 |
| 2868 | S&P500 | 2022-11 | 実質0.6385%程度 | 毎月 | 79.9億円 | XYLDを99.21%組み入れるフィーダー型(指数はBXMの円換算) |
| 563A | NASDAQ100 | 2026-04 | 実質0.2775%程度 | 毎月 | 448.9億円 | 日次型(毎日コールを売る・目標プレミアム年15%)。韓国籍ETF経由 |
| 576A | 中国テック | 2026-05 | 実質0.7775%程度 | 毎月 | 2.5億円 | アクティブ型(分配実績なし) |
※設定日・信託報酬(税込)・純資産はGlobal X Japan公式(2026年7月31日時点)。「実質〜程度」は投資先ETFの経費を含む発行体表記。2865・2868・563Aの対象指数は円換算=為替ヘッジなし。
設定来の成績も、同じ原指数の「素の」ETFとペアで測りました(分配再投資込み・円建て)。2858は+54.0%対・日経225(1321)+150.0%、2865は+86.8%対・NASDAQ100(2568)+181.8%、2868は+62.3%対・S&P500(1655)+119.6%——上場からの約3年が強い上昇相場だったため、どれも素の指数の半分前後です。563Aは上場70営業日で+5.3%対+8.4%(参考値)。なお資金の集まり方は対照的で、毎月分配の563Aが3ヶ月で449億円に対し、分配せず再投資する2858は3年たっても2.9億円。買われているのは戦略そのものより「毎月分配」だと分かる分布です。
実務上の最重要事項はNISAで買えないことです。成長投資枠は「信託期間20年未満、毎月分配型の投資信託およびデリバティブ取引を用いた一定の投資信託等」を除外しており(金融庁)、JPXの銘柄別シートで2865・2868・2858は「NISA制度成長投資枠 対象外」と明記されています。563A・576Aも発行体の一覧でNISA対象の表示がなく、発行体自身がFAQで「ヘッジ目的以外でデリバティブを活用しているため」と説明しています。分配金は常に課税口座で20.315%源泉徴収(国税庁No.1330)。なお東証ETFの制度上、分配は全額が普通分配金(元本払戻金の仕組みがない)で、米国ETFでROCと開示されるものも日本のフィーダー経由では課税対象の分配として届きます(2865・2868は米国側の源泉10%が先に掛かり、二重課税調整が証券会社側で自動適用されます)。
08 · THE RESEARCH
学術研究はどう言っているか
BXM指数自体が、2001年にCBOEがデューク大学のRobert Whaleyに委託した検証(Whaley 2002, The Journal of Derivatives)から生まれています。同論文はカバードコールが「ボラティリティを下げつつ市場並みのリスク調整後リターン」を示すと整理しました。本記事の実測でもボラティリティの低下は確認できます(Cboeファクトシートで10.7%対15.2%)。
その約束を最も体系的に解体したのが、AQRのIsraelovとNielsenによる「Covered Call Strategies: One Fact and Eight Myths」(Financial Analysts Journal, 2014)です。曰く、カバードコールを巡る通説の多くは神話であり——「下方プロテクションになる」は神話(原文: "Covered calls do not give downside protection; they provide significant downside exposure with limited upside potential."——$100の株に$10のプレミアムでも、下値リスクは$90残る)、「インカムを生む」も神話(プレミアムは収益ではなく、将来の値上がりを引き渡す債務の対価。インカムは収入から費用を引いたもの)。彼らが「事実」として残したのはただ一つ、カバードコール=株式の買い持ち+ボラティリティの売り、であり、実測でも下方β0.78対上方β0.63と「下げに厚く、上げに薄い」非対称が確認されています。本記事の帯別採点・COVIDでの逆転・ROC開示は、この2014年の指摘がETFの実データで起き続けていることの確認でもあります。
Covered calls do not give downside protection; they provide significant downside exposure with limited upside potential.
— Israelov & Nielsen, Financial Analysts Journal 70(6) (2014)
留意点
- 本記事は過去の値動きの集計であり、特定の銘柄・商品・売買タイミングを推奨するものではありません。過去の実績は将来の成果を保証しません。
- BXM指数の公表開始は2002年4月で、それ以前(本記事の1988〜2002年3月分)はCboe自身が「バックテストによる理論値」と明記する遡及計算です。本記事は実算期(2002年3月22日以降)をCboe公式配布の日次データで、遡及期をYahoo Financeの同一系列で計測し(接合点の値は一致)、帯別の結論が実算期のみでも変わらないことを確認しています(下落月+1.9pt・大幅高月▲3.2pt)。
- 帯(±2%・±5%)の切り方は説明のための事後的な区分です。機械的な五分位でも同じ単調な階段が出ますが、いずれも「月が終わってから分かる」条件であり、事前に使える売買ルールではありません。
- 実測はすべて分配・配当を再投資したトータルリターンで統一しています。分配を受け取って使う前提なら「価格のみ」の列(QYLD▲29.6%等)が元本の動きに相当します。税・取引コストは控除していません。
- JEPI・JEPQはELNを用いるアクティブ運用で、指数連動のATMカバードコール(BXM・QYLD・XYLD)とは機構が異なります。売却するコールの条件も開示ベースで異なるため、同列の優劣比較には限界があります。
- 東証3本(2865・2868・563A)は米国・韓国のETFを組み入れるフィーダー型で、成績・コストは投資先ETF由来の部分を含みます。対象指数は円換算(為替ヘッジなし)のため、円建て成績はドル円で大きく振れます。563Aは韓国側の課税の影響を受ける旨を発行体が開示しています。
- 米国のカバードコールETFには償還・上場廃止となった商品があり、本記事の4本は現存する代表銘柄です(生存者バイアス)。東証5本は2026年7月時点の現存全数です。
- 他資料と数値が異なる場合、起点・終点・配当の扱い・算出方法の違いによります。純資産・分配実績などの時点物は本文記載の基準日時点の値です。
FAQ
Q. カバードコールETFとは何ですか?
株価指数(S&P500やNASDAQ100など)を保有しながら、その指数のコールオプション(決められた価格で買う権利)を売り続けるETFです。オプションの買い手から受け取るプレミアム(権利料)が毎月の分配原資になる代わりに、指数がオプションの行使価格を超えて上昇した分の値上がりは放棄します。米国のQYLD(Global X NASDAQ 100 Covered Call・2013年12月設定・経費率0.60%)やJEPI(JPMorgan Equity Premium Income・2020年5月設定・0.35%)が代表格で、Morningstarの「デリバティブ・インカム」カテゴリは約200本・約1,470億ドル(2025年9月末)に膨らんでいます。東証にも2858(日経225)・2865(NASDAQ100)・2868(S&P500)・563A(NASDAQ100日次型)・576A(チャイナテック)の5本が上場しています。
Q. カバードコールETFはどういうときに有利ですか?
当サイトがCBOEのS&P500カバードコール指数(BXM)を1988年7月〜2026年6月の456ヶ月で帯別に実測したところ、S&P500が月▲5%を超えて下げた月は超過+2.2ポイント(勝率88%)、月▲5〜▲2%の月は+2.0ポイント(勝率92%)、月±2%の横ばい月は+0.5ポイント(勝率65%)でした。勝ち負けの境界は月+0.5%前後にあり、それより上げた月は負け越します(月+5%超の月は▲3.2ポイント・勝率3%)。またVIXが高い(20.7超)月に限れば平均+0.36ポイントと勝ち越し、「VIXが高く、かつ横ばい」の月は+0.9ポイント・勝率75%と最も有利でした。ただしどの条件も「その月が終わってみないと分からない」もので、事前に使える売買ルールではありません。
Q. 分配利回りが高いのに、なぜトータルリターンで負けるのですか?
上昇を放棄する月のほうが、下げを緩和できる月より多いからです。実測した456ヶ月の内訳は、上昇月(+2%超)が194ヶ月・43%に対し、カバードコールが明確に勝てる下落月(▲2%以下)は92ヶ月・20%しかありません。毎月の負け(上昇月に平均▲1.3〜▲3.2ポイント)が毎月の勝ち(下落月に+2.0ポイント前後)を数で圧倒し、38年の累積でBXMは23.6倍、S&P500(配当込み)は60.2倍になりました。また分配金を再投資せず受け取って使うと元本自体が削れます。QYLDは設定来12.6年で分配再投資なら+170%ですが、価格だけを見ると▲29.6%です。QYLD自身も2024年11月の分配通知(Form 19a-1)で、その月の分配の99.49%(見積り)が「元本の払い戻し(Return of Capital)」であり「利回りや収益と混同すべきではない」と開示しています。
Q. カバードコールETFはNISAで買えますか?
買えません。NISAの成長投資枠は「信託期間20年未満、毎月分配型の投資信託およびデリバティブ取引を用いた一定の投資信託等」を対象から除外しており(金融庁)、東証のカバードコールETFはJPXの銘柄別シートで2865・2868・2858が「NISA制度成長投資枠 対象外」と明記されています。563A・576Aも発行体の一覧でNISA対象の表示がなく、発行体自身がFAQで「ヘッジ目的以外でデリバティブを活用しているため」対象外と説明しています。したがって分配金は常に課税口座での受け取りとなり、20.315%が源泉徴収されます(国税庁タックスアンサーNo.1330)。「高い分配利回り」を実効ベースで考えるときは、この税引後で見る必要があります。
本記事は公開市場データ(Cboe・Yahoo Finance・JPX・各運用会社の開示資料)および学術文献を基に、当サイトが計算条件を明示した上で集計・整理した一般的な情報提供を目的としており、特定の銘柄・商品・売買タイミングの採用を推奨・勧誘するものではありません。過去の実績は将来の成果を保証しません。投資に関する最終判断はご自身の責任で行ってください。
出典:Cboe BuyWrite Indices Methodology・BXM公式日次データ、Global X/Global X Japan・JPMorgan AM各公式資料、SEC EDGAR、JPX銘柄一覧・銘柄別シート、金融庁NISA特設サイト、国税庁タックスアンサー、Morningstar、Whaley (2002) JoD 10(2)、Israelov & Nielsen (2014) FAJ 70(6)、Yahoo Finance(調整後終値)。市場データは2026年7月30日終値まで(実測・集計は当サイト算出、2026年7月31日時点・編集部構成)。