INVESTMENT STRATEGY ・ 投資の考え方 第45号
「節分天井、彼岸底」は62年間、一度も起きていなかった——高値が集中したのは4月と1月、2月ではない
編集部・最終更新 2026年8月14日
「相場は節分(2月上旬)ごろに天井をつけ、春の彼岸(3月20日ごろ)ごろに底を打つ」——証券会社のコラムに繰り返し登場する相場格言です。①節分=その年の高値という主張と、②彼岸=そこからの安値という主張、2つがセットになっています。当サイトの別記事(セルインメイの検証)では月次平均だけを見て「2月+0.32%・3月▲0.10%で月次平均には現れなかった」と一度触れましたが、格言が言っているのは月平均の話ではなく特定の「日付」の話です。今回は節分・彼岸の実際の日付まで特定し、正面から検証しました。
日経平均(^N225)の日次終値62年分(1965年1月〜2026年8月)を使用。節分・春分の日(彼岸の中日)は年によって1〜2日ずれるため、太陽の視黄経が315度(立春)・0度(春分)を通過する瞬間を天文暦(JPL DE440sエフェメリス)から日本時間で計算し、年ごとに特定しました(2021年・2025年の節分が2月2日になる、という近年の実例と一致することを検証済み)。すべて当サイトの実測です(2026年8月10日時点・編集部構成)。
「節分に天井、彼岸に底」という現象は、1965年からの62年間で一度も起きていません。日経平均の1〜4月の高値がついた月は4月(46.8%)・1月(27.4%)が中心で、2月はわずか6.5%——季節の中でむしろ最も高値になりにくい月でした。節分から彼岸にかけての株価は31勝31敗の五分五分で、平均はむしろ+1.15%のプラス。下落する「確率」だけはプラセボ検定で統計的な偏りが確認できましたが、実際に「節分に売って彼岸に買い戻す」を62年続けても、複利では買い持ちの61%の資産にしかなりません。
節分が1-4月の最高値だった年
0/62年
ランダム日付の平均10.4%も大きく下回る
節分→彼岸のリターン
31勝31敗
平均+1.15%・中央値+0.68%とむしろプラス
窓内高値の月別集中
4月46.8%
2月はわずか6.5%(1月27.4%・3月19.4%)
「節分売り・彼岸買い戻し」62年複利
6.03倍
買い持ち9.86倍に対し届かず(年別勝率50.0%)
02 · THE 62-YEAR TEST
節分は「天井」なのか——62年、日次データで直接検証
節分は立春(二十四節気の一つ)の前日で、年によって2月2〜4日の間でずれます。春分の日(彼岸の中日)も年によって3月20〜21日でずれます。どちらも1年ごとに天文学的に決まる日付で、暦の慣習ではなく太陽の位置(黄経315度=立春、黄経0度=春分)で厳密に決まります。本記事ではこれをJPLの天文暦から日本時間で計算し、1965〜2026年の62年分の日付を確定しました(近年の実例——2021年・2025年の節分が124年ぶり・4年ぶりに2月2日になったこと——と計算結果が一致することを確認済みです)。
この日付と日経平均の日次終値を突き合わせ、各年の1〜4月の最高値がついた日を特定しました。
0/62年節分当日がその年の1〜4月の最高値だった年
3.2%高値が節分の前後10日以内に収まった年の割合(2/62年)
17.7%前後21日まで広げても、これが上限(11/62年)
62年間で節分当日そのものが「その年の1〜4月の最高値」だった年は、一度もありません。前後5日まで許容しても1/62年(1.6%)、前後10日でも2/62年(3.2%)、前後21日まで広げてようやく11/62年(17.7%)です。「節分ごろに天井」という表現をかなり緩く解釈しても、6回に1回程度しか近づきません。
62年のうち、節分当日がその年の高値だった年は一度もありませんでした。
^N225日次終値、1965〜2026年の実測より
03 · WHERE HIGHS ACTUALLY CLUSTER
高値はどこに集中しているか——4月・1月、そして最も少ないのが2月
「節分では的中しない」だけでは、たまたま日付がずれているだけかもしれません。そこで62年分の「1〜4月の最高値」がついた月を集計しました。
| 月 | 1〜4月の窓内高値がついた回数 | 割合 |
| 1月 | 17回 | 27.4% |
| 2月(節分がある月) | 4回 | 6.5%(最少) |
| 3月 | 12回 | 19.4% |
| 4月 | 29回 | 46.8%(最多) |
※当サイト実測。^N225の日次終値(1965〜2026年)、各年1月1日〜4月30日の窓内の最高値がついた月を集計(n=62年)。
4つの月の中で、2月は窓内高値が最も少ない月でした。最も多いのは4月(46.8%)、次いで1月(27.4%)。これは偶然ではなく、月別平均リターン(1965〜2026年、62年)そのものが1月+1.35%・4月+1.36%と強く、2月は+0.76%とその半分近くしかないことの反映です。節分(2月上旬)を含む月は、1〜4月の中でむしろ最も「天井になりにくい」月——これは格言の向きとちょうど逆です。
念のため4月を除いた1〜3月だけの窓でも同じ検証をしましたが、結論は変わりません。この窓でも節分当日が最高値だった年は0/62年、前後10日以内でも5/62年(8.1%)にとどまり、高値が集中するのは3月(59.7%)でした。どの窓の切り方でも、2月に高値が偏る傾向は確認できませんでした。
04 · A COIN FLIP, NOT A CLIFF
節分→彼岸のリターンを62年集計——五分五分、平均はむしろプラス
「節分そのものが高値」でなくても、節分から彼岸にかけて相場が下げ基調に入るなら、格言の実質的な中身は生きています。そこで節分の終値から彼岸(春分の日の直前営業日)の終値までのリターンを62年分集計しました。
31勝31敗節分→彼岸で下落した年 / 上昇した年(五分五分)
+1.15%62年間の平均リターン(中央値+0.68%)
約46日節分から彼岸までの平均日数
結果は31勝31敗のちょうど五分五分。平均リターンは+1.15%、中央値+0.68%で、いずれもマイナスではなくプラスでした。日経平均の日次リターンの通期平均を単純に46日分複利換算すると+1.60%になるので、節分→彼岸の実際のリターン(+1.15%)はこれよりやや弱い程度で、「相場が崩れる期間」と呼べるほどの落ち込みではありません。
05 · THE PLACEBO TEST
それでも「確率の偏り」だけは本物だった——プラセボ検定
平均がプラスでも、「下がる確率」自体がこの時期に高いなら、格言には一理あることになります。これを確かめるため、節分・彼岸のペアをランダムな日数(±30日、ペアの間隔=約46日は維持)でずらして同じ指標を2,000回シミュレーションし、実際の値と比較しました(乱数シードは固定・再現可能)。
| 指標 | 実際の値 | プラセボ平均 | プラセボ[5%,95%] | 実際が上回った試行 |
| 高値が節分±10日以内 | 3.2% | 10.4% | [4.8%, 16.1%] | 0.3%(下振れ) |
| 節分→彼岸で下落した年の割合 | 50.0% | 40.3% | [32.3%, 48.4%] | 97.9%(上振れ) |
※当サイト実測。乱数シード固定(2,000回試行)。「実際が上回った試行」は2,000回のプラセボ試行のうち実際の値を下回った割合。
2つの指標で、結果の向きが正反対に出ました。「節分=高値」はランダムな日付よりもさらに当てはまりにくく(実際3.2% vs ランダム平均10.4%、2,000回中99.7%のランダム試行に負ける)、逆に「節分→彼岸で下落する確率」はランダムな窓よりも統計的に高い(実際50.0% vs ランダム平均40.3%、2,000回中97.9%のランダム試行を上回る)という結果です。後者は偶然とは考えにくい水準で、この約46日間だけを見れば、同じ1〜4月の季節の中でも下がりやすいという「確率の偏り」自体は統計的に本物でした。
ただし平均リターンは前セクションの通り+1.15%とプラスのままです。つまり実態は「下がる年の方がわずかに多いが、上がる年は大きく上がるので平均では帳尻が合う」という、右に裾が長い分布——ここが格言の言う「天井から底へ下げる」という単純な下落局面のイメージとは異なります。
06 · THE REAL BOTTOM CAME LATER
「底」の後の方が強かった——彼岸から4月末までの逆転
視点を変えて、元日から4月末までを「元日→節分」「節分→彼岸」「彼岸→4月末」の3区間に割って比べます。
| 区間 | 平均リターン | 中央値 | プラスの年 |
| 元日→節分 | +1.04% | +1.56% | 36/62(58.1%) |
| 節分→彼岸 | +1.15% | +0.68% | 31/62(50.0%) |
| 彼岸→4月末 | +2.25% | +2.90% | 41/62(66.1%) |
※当サイト実測。^N225日次終値、1965〜2026年、62年平均。
3区間の中で最も勝率・平均リターンともに高いのは、格言が「底を打った後」と位置づける彼岸〜4月末です。逆に最も勝率が低い(五分五分の)区間は、格言が「天井から下げる」と位置づける節分〜彼岸でした。つまりデータが実際に示す形は、「節分に天井、彼岸に底」ではなく「節分〜彼岸は方向感が薄く、彼岸から先に強く上がる」に近いものです。彼岸を「その後の上昇が始まる転換点」と捉えるなら格言の後半とはうっすら重なりますが、前提となるはずの「彼岸までの下げ」自体が五分五分でしかない以上、「底を打った」という表現は実態より強すぎます。
データが示す形は「節分に天井、彼岸に底」ではなく、「節分〜彼岸は方向感が薄く、彼岸から先に強く上がる」でした。
3区間比較の実測より
07 · THE BACKTEST
実際に「節分で売って彼岸で買い戻す」とどうなるか
格言を字義通り信じて実際に売買したら、という検証です。「元日から節分まで保有→節分で売却(現金化)→彼岸で買い戻し→4月末まで保有」という戦略と、同じ期間をただ持ち続ける単純buy&holdを62年分比較しました(税・売買コストは考慮せず、各年独立の単年比較および62年の単純複利)。
| 単年の平均リターン | 中央値 | 戦略が買い持ちに勝った年 | 62年複利(各年独立の単純合成) |
| 節分売り・彼岸買い戻し | +3.34% | +4.55% | 31/62(50.0%) | 6.03倍 |
| 単純buy&hold(元日〜4月末) | +4.49% | +5.71% | 9.86倍 |
※当サイト実測。^N225日次終値、1965〜2026年、62年。「62年複利」は各年のリターンを単純に掛け合わせた合成値で、税・売買コスト・スリッページは含みません。
節分に売って彼岸に買い戻す戦略が、その年の買い持ちを上回った年はちょうど31/62年(50.0%)——勝率上の優位はありません。62年分を単純に複利で積み上げると、買い持ちの9.86倍に対し戦略は6.03倍と、約61%の資産にとどまります。理由はセクション4・6で見た通りで、格言に従って手放す節分〜彼岸の期間自体が平均プラス(+1.15%)であるため、そこを避けるほど機会損失が積み重なるためです。
08 · ACROSS ERAS AND BENCHMARKS
時代とベンチマークで割れるか——1965-95 vs 1996-2026、1305クロス検証
62年間を前半・後半で分けると、様子が変わります。
| 期間 | 節分→彼岸で下落 | 平均 | 中央値 |
| 1965〜1995年(前半31年) | 14/31(45.2%) | +1.42% | +2.74% |
| 1996〜2026年(後半31年) | 17/31(54.8%) | +0.89% | ▲1.02% |
※当サイト実測。^N225日次終値。
前半31年はむしろ格言と逆で、節分→彼岸は平均+1.42%・中央値+2.74%と明確なプラスでした。後半31年は下落した年がやや増え(54.8%)、中央値も▲1.02%とマイナスに転じています。ただし平均は依然+0.89%とプラスで、下落年の増加は「稀に大きく上がる年に相殺されている」形です。プラセボ検定(セクション5)で見た「下落確率の偏り」は、主にこの直近31年で強まっている可能性がありますが、母数が31年では時代区分自体の統計的な確からしさは高くありません。
直近期間については、日経平均(価格指数のみ・配当なし)ではなく配当込みTOPIXでも同じ傾向か、1305(iFreeETF TOPIX、配当再投資込み)でクロス検証しました。1305のyfinanceデータは2008年1月4日以降のみ存在するため、2008〜2026年の19年で比較します。
| 2008〜2026年(19年) | 下落した年 | 平均 | 中央値 |
| 日経平均(価格指数) | 10/19(52.6%) | ▲0.25% | ▲1.52% |
| 1305(配当込みTOPIX) | 10/19(52.6%) | +0.06% | ▲0.37% |
※当サイト実測。年次リターンの相関係数r=0.976(n=19)。1305は配当再投資込み・日経平均は価格指数のみのため厳密な水準は異なりますが、方向は高い相関で一致します。
直近19年に限れば、下落した年の割合は日経・1305とも52.6%で完全に一致し、日経平均は平均・中央値ともマイナスに転じます(配当込みの1305は平均がわずかにプラスにとどまるものの、中央値はマイナス)。62年通しでは「平均プラス」という結論でも、直近だけを切り出せば格言に近い年が増えている——ただし52.6%は五分五分からわずかに離れた程度で、19年という母数で断定できる強さではありません。
09 · WHERE THE PROVERB CAME FROM
なぜこの格言が生まれたのか——由来には矛盾があり、理由づけは使い回されていた
格言そのものの初出や命名者を特定できる一次資料は見つかりませんでした。証券会社の用語集はいずれも「古くから言われる」「経験則」といった表現に留まり、具体的な年代や文献を示していません。
由来説1:米相場起源説——ただし内部矛盾あり
複数の証券会社の用語集に「もともとは江戸期の米相場の格言で、新米が出る頃に相場はピークとなり、その後は下落傾向という需給バランスに由来する」という趣旨の説明が、ほぼ同一の文言で載っています。ただしこの説明はソースによって食い違いがあります。東海東京証券の用語集は「彼岸天井・彼岸底」という対になる格言について「秋の彼岸の頃に天井をつけ、春の彼岸頃、底をつけることが多かった」と説明する一方、別の情報源では「稲刈り前の9月に天井をつけ、新米供給とともに秋彼岸に底を打つ」という正反対の説明も見られます。米相場由来説自体、伝聞の中で内容が変質している可能性が高く、本記事では由来の確定的な説明としては採用していません。
由来説2:3月期末要因——学術的な裏付けあり
もう一つの説明は、日本企業の多くが3月期末を迎えるため、決算対策・益出しの売りが彼岸ごろの上値を重くするというものです(SMBC日興証券・東海東京証券の用語集)。こちらは学術研究とも整合します。Kato & Loewenstein (1995, The Review of Financial Studies) は日本株の配当落ち日周辺の株価行動を分析し、期末(fiscal year-end)に近いほど売り圧力が強く、新年度入り直後に買い圧力が強まることを実証しています。本記事のセクション6で見た「彼岸から4月末(=新年度入り)にかけて最も強い」という実測は、この学術的な知見と方向性が一致します。
ただし、証券会社の用語集を横断すると「新春相場が節分ごろに高値をつけ、3月期末に向けた調整で彼岸ごろに底を打つ」という説明文がほぼ一字一句同一で複数サイトに登場します。独立した複数の検証結果ではなく、同一の原典(用語集ベンダー等)を各社がコピーしている可能性が高いと考えられます。「複数の証券会社が同じ理由を挙げている」こと自体は、独立した裏付けの根拠にはなりません。
類似の格言ファミリー
同じ発想の季節格言は他にもあります。夏の土用(7月下旬〜8月上旬)に安値をつけるとされる「土用底」(夏枯れの検証・第26号と同じ季節)、関西では大阪天満宮の天神祭(7月)にちなむ「天神底」、干支に基づく「辰巳天井」など。「節分底(天井)」という逆向きの語もあるとされますが、詳細な使用例は確認できませんでした。季節・干支・祭事にちなんだ相場格言は日本市場に数多く存在し、節分天井・彼岸底はその一つという位置づけです。
10 · WHAT OTHERS FOUND
他の検証との比較——証券会社自身も「当てはまらない」と言っていた
この格言を数値で検証しているのは当サイトだけではありません。調べた範囲で見つかった先行検証を並べます。
| 発信元 | 検証期間・方法 | 結論 |
| 東海東京証券(用語集) | 記載なし | 「実際の検証結果では規則性も推移されないため、有効ではない格言」と用語集内で明記 |
| kabu.com(三菱UFJ eスマート証券) | 2010〜2019年、10年 | 6勝4敗・平均騰落+2.97%。「現代の株式相場ではあまり当てはまらず、迷信に近い格言」 |
| マネックス証券(吉野貴晶氏) | 1950〜2025年、76年 | 「大きく下落するのではなく、上昇しにくい局面に移行する」傾向と分析(指数化した推移による定性評価) |
| 当サイト(本記事) | 1965〜2026年、62年+プラセボ検定+バックテスト | 節分=高値は0/62年。下落確率の偏りのみプラセボ検定を通過するが平均はプラス、実戦略は買い持ちに敗北 |
※各社の記述は当該ページの公開情報に基づく要約です。検証条件(対象指数・期間の定義・勝敗のカウント方法)はソースごとに異なります。
証券会社の用語集を出している東海東京証券自身が、自社の用語集の中で「有効ではない格言」と明記しているのは注目に値します。kabu.comの10年検証(6勝4敗)、マネックス証券の76年検証(「上昇しにくい局面」という穏当な表現)も含め、格言の発信源に近い金融機関ほど、この格言に懐疑的という構図が見えます。ただしいずれも単純な勝敗カウントや指数の推移を見る定性的な検証にとどまり、「節分という日付がランダムな日付と比べて統計的に特別か」というプラセボ検定や、「実際に売買したら買い持ちに勝てるか」というバックテストまで行った例は見当たりませんでした。本記事はこの2点を追加することで、先行検証よりも踏み込んだ判定を示しています。
留意点
- 本記事は過去データの集計・検証であり、特定の時期の売買や特定の銘柄・商品の取引を推奨するものではありません。過去のパターンは将来の再現を保証しません。
- 彼岸は本来、春分の日を中日とする前後3日間・計7日間の期間ですが、東京証券取引所は春分の日(国民の祝日)を休場するため「彼岸底」を直接観測できる単一の取引日はありません。本記事では春分の日の直前営業日の終値を「彼岸」の代表点として扱っています。
- 節分・春分の日の日付は天文計算(太陽黄経315度/0度の通過、JPL DE440sエフェメリス)で算出したもので、日本国内で正式に発表される暦要項の日付と定義上は同じ基準ですが、本記事独自の再計算です。既知の実例(2021年・2025年の節分=2月2日)と一致することは確認済みです。
- プラセボ検定はペア間の日数差(約46日)を保ったまま±30日の範囲でランダムにずらす方式です。ずらし幅や制約の設定を変えると数値は変動しますが、「節分=高値」がランダム以下、「節分→彼岸の下落確率」がランダム超という2つの向きの結果は、セクション3・6の月別集中・区間比較とも整合しています。
- バックテスト(セクション7)は税・売買コスト・スリッページを考慮していません。実際に売買すればこの差はさらに拡大する方向に働きます。
- 1305とのクロス検証は2008年以降のデータに限られます(yfinanceの1305.T収録期間の制約)。それ以前の期間は日経平均(価格指数のみ、配当を含まない)の実測のみです。
- 時代分割(1965-95/1996-2026)は各31年・19年と母数が小さく、統計的な確からしさは62年通しの結果より低くなります。
- 単日変動▲60%超/+150%超の異常値チェックを日経平均・1305の両方で実施し、データ異常は検出されませんでした。
- 他資料と数値が異なる場合は、対象指数(価格指数か配当込みか)・窓の定義・節分/彼岸の日付特定方法の違いによります。
FAQ
Q. 「節分天井、彼岸底」とはどんな相場格言ですか?
「相場は節分(2月上旬)ごろに天井をつけ、春の彼岸(3月20日ごろ)ごろに底を打つ」とされる日本の相場格言です。証券会社のコラム等でアノマリー(経験則)の一つとして紹介されますが、根拠の説明が付いていないことが多く、当サイトが確認した松井証券のコラムでも「節分頃に相場がピークを迎え、その後調整に入ることが多い」「春の彼岸時期に底を打ちやすく、反発に転じる傾向がある」という記述のみで、なぜそうなるかは書かれていません。初出や命名者を特定できる一次資料も見つかりませんでした。
Q. 節分に本当に株価はピークをつけるのですか?
実測では一度も確認できませんでした。日経平均の日次データ62年分(1965〜2026年、節分の日付は天文計算で年ごとに特定)で、その年の1〜4月の最高値がついた日を調べると、節分当日が最高値だった年は0/62年。前後10日まで範囲を広げても一致率はわずか3.2%で、これはランダムに選んだ日付でシミュレーションした場合の平均10.4%を下回ります(2,000回のシミュレーションのうち、実際の的中率を下回ったのはわずか0.3%)。高値が実際に集中するのは4月(46.8%)と1月(27.4%)で、2月(6.5%)は最も高値になりにくい月でした。
Q. 彼岸にかけて株価は下がりやすいのですか?
「確率」だけは統計的に本物でした。節分から彼岸までの62年間のリターンは31勝31敗の五分五分で、平均は+1.15%とむしろプラスです。ただし下落した年の割合(50.0%)をランダムな46日間の窓と比較するプラセボ検定にかけると、実際の下落率はランダムな窓の平均(40.3%)を上回り、2,000回のシミュレーションの97.9%を上回りました。つまり「下がる確率」はこの時期にわずかに偏っている一方、下がるとしても浅く、稀に大きく上がる年があるため平均では帳尻が合っている、というのが実態です。
Q. この格言を信じて「節分に売って彼岸に買い戻す」とどうなりますか?
単純な買い持ちに負けます。1965〜2026年の62年間、毎年「元日から節分まで保有→節分で売却→彼岸で買い戻し→4月末まで保有」を繰り返した場合の複利は6.03倍。同じ62年を元日から4月末までただ持ち続けた場合は9.86倍で、売買を挟んだ方が62年後の資産は約61%にとどまります。年ごとの勝敗もちょうど31勝31敗で、格言通りに動いても勝率上の優位はありませんでした(税・売買コストは考慮していません)。
本記事は公開市場データ(Yahoo Finance)・天文暦(JPL DE440s)・学術文献を基に、当サイトが計算条件を明示した上で集計・整理した一般的な情報提供を目的としており、特定の時期・銘柄・商品の売買を推奨・勧誘するものではありません。過去の実績・パターンは将来の成果を保証しません。投資に関する最終判断はご自身の責任で行ってください。
出典:松井証券「代表的な株式投資のアノマリー一覧」、野村證券・東海東京証券・SMBC日興証券の証券用語解説集、kabu.com、マネックス証券、Kato & Loewenstein (1995) The Review of Financial Studies 8(3)、Kato & Schallheim (1985) Journal of Financial and Quantitative Analysis 20(2)、Ziemba (1991) Japan and the World Economy 3(2)、Yahoo Finance(^N225・1305.T)、JPL DE440s惑星暦。市場データは2026年8月7日終値まで(実測・集計は当サイト算出、2026年8月10日時点・編集部構成)。