SEC FORM 13F ・ THE BASICS
Form 13Fとは何か — 提出義務・期限・「載らないもの」を一次資料で解説
編集部・最終更新 2026年8月18日
KUJIRA WATCHで扱う13Fは、運用資産1億ドルを超える機関投資家に義務付けられた米国の開示制度です。四半期ごとに保有銘柄を報告する義務がある一方、空売り・書いたオプション・現金・非上場株は一切載りません——「その機関の運用全体」ではなく「ロングオンリーの米国上場株ポジションの静止画」だという理解が、個別の投資家ページを読む前提になります。
このページは、SEC自身が公開する「Form 13Fに関するFAQ」を一次資料に、提出義務のライン・期限の数え方・何が載って何が載らないか・「機密扱い」という例外までを整理したものです。
出典:SEC「Frequently Asked Questions About Form 13F」(2026年8月時点)。同ページの規定・引用条文を基に編集部が日本語で整理しました。
提出義務ライン
$1億超
「13(f)証券」の時価総額
提出期限
45日以内
四半期末から(2/5/8/11月)
この記事をシェア
でシェア
01 · WHY IT EXISTS
なぜ13Fがあるのか — 1975年、透明性のための義務
Form 13Fは、米連邦議会が1975年に証券取引所法へ追加したSection 13(f)に基づく報告書です。SEC自身のFAQは、その目的を「機関投資家の証券保有状況に関する情報の公開を拡大するため」と説明しています。個人投資家ではなく、他人の資産について投資判断を下す立場(運用裁量)にある機関——投資顧問だけでなく、銀行・銀行持株会社・証券会社も対象に含まれます——に、保有内容を定期的に公にすることを義務づける制度です。
SECに登録された投資顧問である必要もありません。要件は2つだけです。①州際通商の手段(郵便等)を業務で使っていること、②運用裁量で1億ドル以上の「13(f)証券」を保有していること。この2つを満たせば、米国籍かどうかを問わず提出義務が生じます——だからこそ、日本の銀行・生命保険・トヨタ自動車から、スイスやノルウェーの中央銀行まで、世界中の機関がSECに13Fを提出しています。
02 · WHO MUST FILE
誰が出さなければいけないのか — 「四半期末」ではなく「任意の月末」
提出義務のラインは1億ドルですが、判定タイミングを四半期末だと誤解している人が少なくありません。SECの規則(Rule 13f-1(a)(1))が定めるのは、暦年中の1〜12月、どの月でもよいので最終取引日時点で1億ドルを超えたかどうかです。1月だけ一瞬超えて、その後ずっと下回っていても、その年のうちに義務は発生します。
しかも一度義務が発生すると、後戻りはできません。基準を超えた年の第4四半期分(12月末時点)の提出を皮切りに、翌年の第1〜3四半期分まで、計4回の提出が義務づけられます——その間に資産が1億ドルを割り込んでも、この4回は提出しなければなりません。四半期ごとに「今回は載せる/載せない」を選べる制度ではないということです。
03 · WHEN AND WHAT TYPE
いつ・どの様式で出すのか — 45日の内訳と3つの提出形態
提出期限は各四半期末(3月・6月・9月・12月の末日)から45日以内です。具体的には、おおむね2月中旬・5月中旬・8月中旬・11月中旬が締切に当たります。締切日が土日祝日に重なる場合は、SEC規則0-3(a)に従って翌営業日にずれます——KUJIRA WATCHの各投資家ページで提出日が年によって数日前後するのは、この調整のためです。
EDGAR上の提出様式は3種類あります。自分の保有銘柄をすべて自分の13Fに載せる場合は13F Holdings Report(13F-HR)。保有の一部を自分の13Fに、残りを別の機関の13Fに載せてもらう場合はCombination Report(提出コードは同じ13F-HR)。そして自分の保有をすべて他の機関の13Fに載せてもらい、自分は表紙だけを提出する場合は13F Notice(13F-NT)です。グループ内の複数法人が親会社の13Fにまとめて載る、といった運用が典型例です。
04 · WHAT COUNTS
13Fに載るもの・載らないもの — 「ロングオンリーの静止画」
13Fに報告できるのは、SECが四半期ごとに公表する「Section 13(f)証券の公式リスト(Official List)」に載っている銘柄だけです。リストの中心は米国取引所(NYSE・AMEX・NASDAQ)上場株ですが、クローズドエンド型投資会社の株式やETFの受益証券も含まれ、一部の転換社債・株式オプション・ワラントも対象になります。リストに無い証券は、そもそも13Fに書いてはいけません。
ここから、KUJIRA WATCHの各ページを読むうえで特に重要な「載らないもの」が導かれます。
- 空売り(ショートポジション)は報告禁止です。同一銘柄のロングポジションから空売り分を差し引くことも認められておらず、ロングの数量だけをそのまま報告します。
- 自分が売り建てた(書いた)オプションも対象外です。保有しているロングのプット・コールオプション(公式リストに載っているもの)は報告できますが、ショートのオプションポジションは株式の空売りと同様、報告されません。
- 貸し出した証券は貸し手側が報告します。証券を借りた側は、その証券を自分の13Fに載せてはいけません。
- 現金・預金、大半の債券、非上場株式、米国に上場していない外国株は、そもそも公式リストの対象外です。
13Fは「その機関の運用資産全体」の開示ではなく、「米国上場株を中心としたロングポジションだけ」を切り取った静止画です。
— SEC Form 13F FAQの規定に基づく整理
ある投資家の13Fで保有比率が急減していても、それが「弱気」なのか「別の口座に移した」のか「そもそも空売りでヘッジしている」のかは、13Fの数字だけでは分かりません。KUJIRA WATCHの各投資家ページで「保有株数の増減」を読むときは、この限界を踏まえてください。
05 · THE CONFIDENTIALITY EXCEPTION
「機密扱い」という抜け道 — 使う投資家、使わない投資家
13Fには例外もあります。SEC規則13f-1(c)に基づき、保有内容の開示によって自身に不利益(harm)が生じることを示せれば、一定期間その保有を非開示にできる「機密扱い(confidential treatment)」の申請制度です。2023年2月28日からは、この申請自体もEDGARでの電子提出が義務化されました(それ以前は紙ベースの申請も認められていました)。
この制度の使い方は投資家によってはっきり分かれます。KUJIRA WATCHで扱うスイス国立銀行は、2013年の提出開始から53四半期連続で機密扱いの申請がゼロ件——毎回全銘柄をそのまま開示しています。一方でノルウェー政府年金基金(Norges Bank)のように、四半期ごとの13Fでは機密扱いの制度を使い、全保有銘柄は自国の年次開示でのみ公表するという運用を取る投資家もあります。「同じ13Fという制度でも、開示姿勢は投資家ごとに違う」というのは、個別ページを読み比べるとよく分かるポイントです。
⚠ 留意点
- 13Fは常に過去のスナップショットです。四半期末時点の保有を最大45日遅れで開示するもので、閲覧時点では既に売買されている可能性があります。
- 「保有」の全体像ではありません。空売り・書いたオプション・現金・大半の債券・非上場株・非米国上場株は載らないため、13Fだけでその機関の運用方針や損益を判断することはできません。
- 機密扱いが承認された銘柄は、承認期間中は該当の13Fから見えません。「載っていない=保有していない」とは限らない点に注意してください。
- 本記事はSECの公開規則・FAQを基にした制度の解説であり、特定銘柄・特定投資家の評価や投資助言ではありません。投資に関する最終判断はご自身の責任で行ってください。
FAQ
Q. Form 13Fとは何ですか?
米証券取引所法13(f)条に基づき、運用裁量で1億ドルを超える「13(f)証券」(主に米国上場株・ETF等)を保有する機関投資家に義務付けられた、四半期ごとの保有報告書です。1975年に議会が機関投資家の保有状況の透明性を高める目的で導入し、SEC EDGARで誰でも無料閲覧できます。
Q. 1億ドルの基準はいつの時点で判定しますか?
四半期末ではなく「暦年中の任意の月の最終取引日」時点です。1〜12月のどこか1ヶ月でも13(f)証券の時価総額が1億ドルを超えれば、その年の第4四半期分から提出義務が発生し、その後の3四半期(翌年の第1〜3四半期)は基準を下回っても提出を続ける必要があります。
Q. 13Fに載らない情報は何ですか?
空売り(ショートポジション)は報告禁止で、ロングポジションからの相殺もできません。自分が売り建てた(書いた)オプションも対象外です。現金・大半の債券・非上場株・非米国上場株も載りません。貸し出した証券は貸し手側が報告し、借り手側は報告しません。つまり13Fは「ロングオンリーの米国上場株ポジション」の静止画で、その機関の運用全体を表すものではありません。
Q. いつ提出されますか?
各四半期末(3月・6月・9月・12月の末日)から45日以内です。おおむね2月中旬・5月中旬・8月中旬・11月中旬が締切に当たり、土日祝日と重なる場合は翌営業日にずれます。
Q. 「機密扱い」とは何ですか?
SEC規則13f-1(c)に基づき、開示によって不利益(harm)が生じることを示せれば、一定期間その保有を非開示にできる制度です。2023年2月28日からはこの申請もEDGARでの電子提出が義務化されました。利用するかどうかは機関ごとの判断で、たとえばスイス国立銀行は50四半期以上この制度を一度も使っていません。