COSMETICS STOCKS COLUMN ・ K-BEAUTY VALUE CHAIN
Kビューティーは買われているのか — 輸出は世界2位、株価は韓国市場に置いていかれていた
編集部・最終更新 2026年8月17日
韓国の化粧品輸出額は2025年に114億ドルへ伸び、米国を抜いて世界2位に浮上した。1位はフランス、韓国は3年前まで4位圏だったことを考えると急な浮上だ。米国では資産運用会社Guinness Atkinsonが「米国初のK-beauty特化ETF」として「KBTY」を申請し、2026年8月時点でSECの審査が進んでいる。誰の目にも分かりやすい成長物語に見える。
だが、その物語を代表企業4社の決算と株価で実際に確認すると、輪郭がだいぶ違って見えてくる。直近1年の自前実測では、4社の株価上昇率はいずれもKOSPI指数・EWY(韓国株ETF)に大きく劣後していた。輸出という「事業の実績」と、株式市場という「評価の場」の間には、今のところ大きな距離がある。
KBTYが描く4つのバリューチェーン
Guinness Atkinsonが申請したETF「KBTY」は、韓国拠点で美容・化粧品・パーソナルケア・皮膚科学製品を事業の中心とする企業の純資産の80%以上に投資する設計だ。SEC提出書類は投資対象を4つのセグメントに分けている。
| セグメント | 内容 | 本記事で扱う企業 |
| ① ブランドオーナー | 消費者向けの化粧品・スキンケアブランド | アモーレパシフィック、LG生活健康 |
| ② 受託製造・サプライヤー | ODM/OEM、原料・部材メーカー | コスマックス、韓国コルマー |
| ③ 流通・小売 | 卸売・小売チャネル | (本記事では扱わず) |
| ④ 美容医療品 | スキンブースター・注入剤・美容機器 | (本記事では扱わず) |
KBTY SEC提出書類(Form N-1A、485APOS、2026年7月10日提出)のセグメント定義に基づく。本記事では上場が古く比較データが揃う①②の代表2社ずつ、計4社を検証対象とした。
この4分類のうち、消費者の目に触れるのは①のブランドだが、実際に製品を作っているのは②のODM/OEM企業であることが多い。伊藤園の抹茶と同じ構図——ブランドと製造の主体が別だという話は、Kビューティーにもそのまま当てはまる。
ブランドオーナーの明暗 — アモーレパシフィックとLG生活健康
まず①ブランドオーナーの代表2社、アモーレパシフィック(090430)とLG生活健康(LG H&H、051900)の2025年12月期決算を見る。なお090430は持株会社「アモーレパシフィックグループ」(002790)とは別法人の事業子会社で、化粧品事業そのものを担う。
| 企業 | 売上高 | 営業利益 | 備考 |
アモーレパシフィック 090430 | +9.5% | +52.3% | 6年ぶりの高水準。海外は売上+15%・営業利益+102% |
LG生活健康 051900 | ▲6.7% | ▲62.8% | 第4四半期は営業損失に転落(ビューティー事業のみで▲814億ウォン) |
アモーレパシフィックグループ公式発表(2026年2月6日)、LG公式プレスリリースより。同じ「ブランドオーナー」でも明暗が対照的。
アモーレパシフィックは海外事業が牽引し、6年ぶりの高水準まで営業利益を伸ばした。一方のLG生活健康は売上・営業利益とも減少し、第4四半期はビューティー事業だけで814億ウォンの営業損失を計上している。同じ「Kビューティーのブランドオーナー」という括りでも、中身は正反対だ。「Kビューティー株」とひとまとめに語ること自体に無理があることが、この2社だけでも見えてくる。
受託製造(ODM/OEM)は決算では最高益だった
次に②受託製造・サプライヤーの代表2社、コスマックス(192820)と韓国コルマー(161890)を見る。両社とも他社ブランドの化粧品を製造するODM/OEM企業で、消費者が社名を直接目にすることは少ない。
| 企業 | 売上高 | 営業利益 | 備考 |
コスマックス 192820 | +10.7% | +11.6% | 売上・営業利益とも創業来最高 |
韓国コルマー 161890 | +11.0% | +23.6% | 売上2兆4,521億→2兆7,224億ウォン |
韓国化粧品専門紙(뷰티누리等)による決算報道、2026年3月公示の事業報告書ベース。
ブランドオーナー2社が明暗を分けたのに対し、ODM/OEM2社は揃って増収増益、しかも創業来最高益という結果だった。「誰が実際に儲けているか」という問いへの決算ベースの答えは、看板ブランドより裏方の製造企業の方に分がある——伊藤園の抹茶で見た構図と近い。
株価の実態 — 輸出は伸びても、市場平均には届いていない
ここまでは決算の話だった。では株価はどうか。当サイトでYahoo Financeの調整後終値(配当再投資込み)を使い、4社とKOSPI指数・EWY(iShares MSCI South Korea ETF)を実測した。
FIG. 01 — 直近1年の株価上昇率(2025-08-12〜2026-08-11)
Kビューティー関連4社(ウォン建て)
韓国市場全体(KOSPIはウォン建て、EWYはドル建て)
当サイト実測。Yahoo Financeの調整後終値(配当再投資込み)による、税・取引コスト控除前の数値。単日±60%/+150%の異常値チェックは通過(分割調整漏れ等の疑いなし)。
4社のうち最も健闘した韓国コルマーでも+36.4%で、KOSPI指数(+98.9%)の4割弱、EWY(+130.8%)の3割弱にとどまる。最も出遅れたLG生活健康・コスマックスは+8.8%で、KOSPIの1割にも届かない。
期間を2021年年初まで広げても構図は変わらない。ブランドオーナー2社の等金額バスケットは5.6年で▲54.6%(LG生活健康の下げが重い)、受託製造2社の等金額バスケットは+124.8%でKOSPI(+115.5%)とほぼ並ぶ。決算で見えた「ブランドは明暗、製造は堅調」という構図は、より長い期間の株価でも同じ形で表れている——ただし、その「堅調」も直近1年だけを切り出すとKOSPI・EWYの急騰に置いていかれる、というのが今回の実測の核心だ。
日本から買う方法はあるか
この4社に日本から投資しようとすると、選択肢はかなり限られる。
- 現地株の直接取引:主要ネット証券の中ではSBI証券のみが韓国株式(KOSPI・KOSDAQ)の直接売買に対応(2026年7月時点で約81銘柄)。売買手数料は約定代金の税込0.99%、最低手数料は税込9,900ウォン。楽天証券・マネックス証券は韓国株を取り扱っていない。
- 米国ADR(預託証券):4社の中で確認できたのはLG生活健康(ティッカーLGHHF、非スポンサーOTC)のみ。アモーレパシフィックはADRの存在自体は複数の金融データベースで示唆されるが、ティッカーの表記が資料によって割れており本記事では確定できなかった。コスマックス・韓国コルマーにADRは見当たらない。
- 既存ETF(EWY)経由:EWYのセクター構成は情報技術47.6%・資本財20.5%が中心で、化粧品が含まれうる「生活必需品」はわずか2.3%。上位25銘柄にこの4社はいずれも入っておらず、Kビューティーへの受け皿としてはほぼ機能していない。
要するに、韓国の半導体株(サムスン電子・SK hynixなど)に比べると、Kビューティー関連株に日本から間接的にアクセスする手段は薄い。KBTYのようなテーマ特化型ETFが求められる background には、こうしたアクセスの細さもありそうだ。
KBTY ETFという選択肢 — ただし未確定なことが多い
SEC EDGARに提出されたKBTYの登録書類(Form N-1A、485APOS、2026年7月10日提出)を直接確認すると、公式サイトに書かれている以上に「まだ決まっていないこと」が多いのが分かる。
- 追跡インデックスの名称・算出会社は未公表。提出書類・公式サイトともプレースホルダーのまま(本稿執筆時点の2026年8月14日)。
- 運用会社Guinness Atkinsonは2002年設立の老舗(前身は1993年設立)で、運用資産は2025年3月時点で約3.2億ドル。2019年に初のETFを出し、投信のETF転換実績もある。
- 上場目標日は2026年9月23日。これは提出日(7月10日)から75日後という、SECのルール上の登録効力発生日と一致する日付で、公式サイト自身が「変更の可能性がある」と明記している。同じ運用会社の別ファンドが実際に上場を延期した前例もある。
つまり現時点のKBTYは「間もなく確実に買える商品」ではなく、「規制上のスケジュールに沿って準備が進んでいる申請中のファンド」という段階だ。日本の証券会社で取り扱われるかどうかも、上場後の話になる。
⚠ 留意点
- 韓国の化粧品輸出額(大韓民国関税庁データ)は、関税庁自身のサイトへの直接アクセスができず、それを引用する複数の韓国業界紙の数値に基づいています(確度:中)。
- 決算数値は企業の情報源によって確度が異なります。アモーレパシフィック・LG生活健康は企業公式発表(確度:高)、コスマックス・韓国コルマーは韓国の化粧品専門紙による決算報道(確度:中〜高)に基づきます。
- 株価の自前実測は、Yahoo Financeの調整後終値(配当再投資込み)による等金額・買い持ちの数値で、税・取引コストは控除していません。韓国4社とKOSPI指数はウォン建て、EWYはドル建てのままで比較しており、為替の影響は分離していません。
- 直近1年〜2年のKOSPI・EWYの急騰そのものの要因分析(半導体セクターの動向等)は本記事の範囲外としています。
- KBTYのインデックス名・上場日・経費率などの詳細は、SECの審査状況により今後変更される可能性があります。
- 本記事は公開情報と当サイトの実測を基に整理した事実の紹介であり、特定銘柄・ファンドの売買を推奨・勧誘するものではありません。投資に関する最終判断はご自身の責任で行ってください。
FAQ
Q. Kビューティー関連株は今が買い時ですか?
本記事は輸出統計・決算・株価の実測を整理した情報提供であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。事実として、直近1年の自前実測では韓国コスメ関連4社の株価上昇率(+8.8%〜+36.4%)はKOSPI指数(+98.9%)やEWY(+130.8%)を大きく下回っており、輸出の伸びがそのまま株価に反映されているわけではありません。
Q. 輸出が伸びているのに、なぜ株価は市場平均に届いていないのですか?
直近1〜2年のKOSPI・EWYの急騰は半導体などK-beauty以外のセクターが主導しているとみられ、コスメ関連株はその波に十分乗れていません。また代表的なブランドオーナー2社の間でも明暗が分かれており(アモーレパシフィックは営業利益6年ぶり高水準、LG生活健康は営業利益62.8%減)、「Kビューティー」全体が一律に買われているわけではないことも一因です。
Q. KBTY(K-beauty特化ETF)はいつ、どこで買えますか?
2026年8月14日時点でSECの審査中です。追跡インデックスの名称や算出会社はSEC提出書類・運用会社公式サイトのいずれにも未公表で、公式サイトが示す上場目標日(2026年9月23日)も「変更の可能性がある」と明記された目標に過ぎません。上場後に日本の証券会社で取り扱われるかどうかも現時点では未定です。
本記事は大韓民国関税庁の貿易統計を引用する韓国業界紙、アモーレパシフィック・LG生活健康の決算公式発表、韓国の化粧品専門紙による決算報道、SEC EDGAR提出書類(Guinness Atkinson Funds、Form N-1A/485APOS)、iShares公式サイト、SBI証券公式サイト等の公開情報と、当サイトの自前実測(Yahoo Finance)を基に整理した一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入・売却を推奨・勧誘するものではありません。記載内容は作成時点のものであり、今後変更される場合があります。投資に関する最終判断はご自身の責任で行ってください。
出典:大韓民国関税庁貿易統計(韓国業界紙経由)、アモーレパシフィックグループ公式発表(2026年2月6日)、LG公式プレスリリース、コスマックス・韓国コルマー決算報道(뷰티누리等)、SEC EDGAR(Guinness Atkinson Funds、Form 485APOS)、gafunds.com、iShares公式(EWY商品ページ)、SBI証券公式(2026年8月時点)。株価は当サイト実測(Yahoo Finance調整後終値、2026年8月12日時点)。