COSMETICS STOCKS COLUMN ・ K-BEAUTY VALUE CHAIN

Kビューティーは買われているのか — 輸出は世界2位、株価は韓国市場に置いていかれていた

韓国の化粧品輸出額は2025年に114億ドルへ伸び、米国を抜いて世界2位に浮上した。1位はフランス、韓国は3年前まで4位圏だったことを考えると急な浮上だ。米国では資産運用会社Guinness Atkinsonが「米国初のK-beauty特化ETF」として「KBTY」を申請し、2026年8月時点でSECの審査が進んでいる。誰の目にも分かりやすい成長物語に見える。

だが、その物語を代表企業4社の決算と株価で実際に確認すると、輪郭がだいぶ違って見えてくる。直近1年の自前実測では、4社の株価上昇率はいずれもKOSPI指数・EWY(韓国株ETF)に大きく劣後していた。輸出という「事業の実績」と、株式市場という「評価の場」の間には、今のところ大きな距離がある。

輸出は世界2位 — Kビューティーの実態

大韓民国関税庁の貿易統計を引用する韓国業界紙によると、韓国の化粧品輸出額は2021年92億ドル→2022年80億ドル→2023年85億ドル→2024年102〜103億ドル(+20.3%)→2025年114億ドル(+12.2%)と推移した。2022年にいったん落ち込んだあと、2024年から2年連続で二桁成長という加速局面に入っている。

世界順位で見るとさらにはっきりする。2025年、韓国は米国を抜いて化粧品輸出額で世界2位に浮上した。1位は変わらずフランス(242.8億ドル)。韓国114.2億ドル、米国107.5億ドル、ドイツ99億ドル、スペイン92億ドル、イタリア90億ドル、中国73億ドル、日本39億ドルと続く。韓国の化粧品貿易黒字が100億ドルを超えたのも初めてだ。

日本との関係で見ると、2025年の韓国コスメの輸出先は1位米国(22億ドル)、2位中国(20億ドル)、3位日本(11億ドル)という順位になる。「日本でKビューティーが流行っている」という体感は、輸出統計の上でも裏付けられる規模感だ。

KBTYが描く4つのバリューチェーン

Guinness Atkinsonが申請したETF「KBTY」は、韓国拠点で美容・化粧品・パーソナルケア・皮膚科学製品を事業の中心とする企業の純資産の80%以上に投資する設計だ。SEC提出書類は投資対象を4つのセグメントに分けている。

セグメント内容本記事で扱う企業
① ブランドオーナー消費者向けの化粧品・スキンケアブランドアモーレパシフィック、LG生活健康
② 受託製造・サプライヤーODM/OEM、原料・部材メーカーコスマックス、韓国コルマー
③ 流通・小売卸売・小売チャネル(本記事では扱わず)
④ 美容医療品スキンブースター・注入剤・美容機器(本記事では扱わず)

KBTY SEC提出書類(Form N-1A、485APOS、2026年7月10日提出)のセグメント定義に基づく。本記事では上場が古く比較データが揃う①②の代表2社ずつ、計4社を検証対象とした。

この4分類のうち、消費者の目に触れるのは①のブランドだが、実際に製品を作っているのは②のODM/OEM企業であることが多い。伊藤園の抹茶と同じ構図——ブランドと製造の主体が別だという話は、Kビューティーにもそのまま当てはまる。

ブランドオーナーの明暗 — アモーレパシフィックとLG生活健康

まず①ブランドオーナーの代表2社、アモーレパシフィック(090430)LG生活健康(LG H&H、051900)の2025年12月期決算を見る。なお090430は持株会社「アモーレパシフィックグループ」(002790)とは別法人の事業子会社で、化粧品事業そのものを担う。

企業売上高営業利益備考
アモーレパシフィック
090430
+9.5%+52.3%6年ぶりの高水準。海外は売上+15%・営業利益+102%
LG生活健康
051900
▲6.7%▲62.8%第4四半期は営業損失に転落(ビューティー事業のみで▲814億ウォン)

アモーレパシフィックグループ公式発表(2026年2月6日)、LG公式プレスリリースより。同じ「ブランドオーナー」でも明暗が対照的。

アモーレパシフィックは海外事業が牽引し、6年ぶりの高水準まで営業利益を伸ばした。一方のLG生活健康は売上・営業利益とも減少し、第4四半期はビューティー事業だけで814億ウォンの営業損失を計上している。同じ「Kビューティーのブランドオーナー」という括りでも、中身は正反対だ。「Kビューティー株」とひとまとめに語ること自体に無理があることが、この2社だけでも見えてくる。

受託製造(ODM/OEM)は決算では最高益だった

次に②受託製造・サプライヤーの代表2社、コスマックス(192820)韓国コルマー(161890)を見る。両社とも他社ブランドの化粧品を製造するODM/OEM企業で、消費者が社名を直接目にすることは少ない。

企業売上高営業利益備考
コスマックス
192820
+10.7%+11.6%売上・営業利益とも創業来最高
韓国コルマー
161890
+11.0%+23.6%売上2兆4,521億→2兆7,224億ウォン

韓国化粧品専門紙(뷰티누리等)による決算報道、2026年3月公示の事業報告書ベース。

ブランドオーナー2社が明暗を分けたのに対し、ODM/OEM2社は揃って増収増益、しかも創業来最高益という結果だった。「誰が実際に儲けているか」という問いへの決算ベースの答えは、看板ブランドより裏方の製造企業の方に分がある——伊藤園の抹茶で見た構図と近い。

株価の実態 — 輸出は伸びても、市場平均には届いていない

ここまでは決算の話だった。では株価はどうか。当サイトでYahoo Financeの調整後終値(配当再投資込み)を使い、4社とKOSPI指数・EWY(iShares MSCI South Korea ETF)を実測した。

FIG. 01 — 直近1年の株価上昇率(2025-08-12〜2026-08-11) 直近1年の株価上昇率(2025-08-12〜2026-08-11) 0% 20% 40% 60% 80% 100% 120% 140% 直近1年の株価上昇率(配当再投資込み) アモーレパシフィック +13.0% LG生活健康 +8.8% コスマックス +8.8% 韓国コルマー +36.4% KOSPI指数 +98.9% EWY(韓国株ETF) +130.8%
Kビューティー関連4社(ウォン建て) 韓国市場全体(KOSPIはウォン建て、EWYはドル建て)

当サイト実測。Yahoo Financeの調整後終値(配当再投資込み)による、税・取引コスト控除前の数値。単日±60%/+150%の異常値チェックは通過(分割調整漏れ等の疑いなし)。

4社のうち最も健闘した韓国コルマーでも+36.4%で、KOSPI指数(+98.9%)の4割弱、EWY(+130.8%)の3割弱にとどまる。最も出遅れたLG生活健康・コスマックスは+8.8%で、KOSPIの1割にも届かない。

期間を2021年年初まで広げても構図は変わらない。ブランドオーナー2社の等金額バスケットは5.6年で▲54.6%(LG生活健康の下げが重い)、受託製造2社の等金額バスケットは+124.8%でKOSPI(+115.5%)とほぼ並ぶ。決算で見えた「ブランドは明暗、製造は堅調」という構図は、より長い期間の株価でも同じ形で表れている——ただし、その「堅調」も直近1年だけを切り出すとKOSPI・EWYの急騰に置いていかれる、というのが今回の実測の核心だ。

日本から買う方法はあるか

この4社に日本から投資しようとすると、選択肢はかなり限られる。

要するに、韓国の半導体株(サムスン電子・SK hynixなど)に比べると、Kビューティー関連株に日本から間接的にアクセスする手段は薄い。KBTYのようなテーマ特化型ETFが求められる background には、こうしたアクセスの細さもありそうだ。

KBTY ETFという選択肢 — ただし未確定なことが多い

SEC EDGARに提出されたKBTYの登録書類(Form N-1A、485APOS、2026年7月10日提出)を直接確認すると、公式サイトに書かれている以上に「まだ決まっていないこと」が多いのが分かる。

つまり現時点のKBTYは「間もなく確実に買える商品」ではなく、「規制上のスケジュールに沿って準備が進んでいる申請中のファンド」という段階だ。日本の証券会社で取り扱われるかどうかも、上場後の話になる。

⚠ 留意点

FAQ

Q. Kビューティー関連株は今が買い時ですか?
本記事は輸出統計・決算・株価の実測を整理した情報提供であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。事実として、直近1年の自前実測では韓国コスメ関連4社の株価上昇率(+8.8%〜+36.4%)はKOSPI指数(+98.9%)やEWY(+130.8%)を大きく下回っており、輸出の伸びがそのまま株価に反映されているわけではありません。

Q. 輸出が伸びているのに、なぜ株価は市場平均に届いていないのですか?
直近1〜2年のKOSPI・EWYの急騰は半導体などK-beauty以外のセクターが主導しているとみられ、コスメ関連株はその波に十分乗れていません。また代表的なブランドオーナー2社の間でも明暗が分かれており(アモーレパシフィックは営業利益6年ぶり高水準、LG生活健康は営業利益62.8%減)、「Kビューティー」全体が一律に買われているわけではないことも一因です。

Q. KBTY(K-beauty特化ETF)はいつ、どこで買えますか?
2026年8月14日時点でSECの審査中です。追跡インデックスの名称や算出会社はSEC提出書類・運用会社公式サイトのいずれにも未公表で、公式サイトが示す上場目標日(2026年9月23日)も「変更の可能性がある」と明記された目標に過ぎません。上場後に日本の証券会社で取り扱われるかどうかも現時点では未定です。

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本記事は大韓民国関税庁の貿易統計を引用する韓国業界紙、アモーレパシフィック・LG生活健康の決算公式発表、韓国の化粧品専門紙による決算報道、SEC EDGAR提出書類(Guinness Atkinson Funds、Form N-1A/485APOS)、iShares公式サイト、SBI証券公式サイト等の公開情報と、当サイトの自前実測(Yahoo Finance)を基に整理した一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入・売却を推奨・勧誘するものではありません。記載内容は作成時点のものであり、今後変更される場合があります。投資に関する最終判断はご自身の責任で行ってください。

出典:大韓民国関税庁貿易統計(韓国業界紙経由)、アモーレパシフィックグループ公式発表(2026年2月6日)、LG公式プレスリリース、コスマックス・韓国コルマー決算報道(뷰티누리等)、SEC EDGAR(Guinness Atkinson Funds、Form 485APOS)、gafunds.com、iShares公式(EWY商品ページ)、SBI証券公式(2026年8月時点)。株価は当サイト実測(Yahoo Finance調整後終値、2026年8月12日時点)。