MITIMCO ・ SEC FORM 13F

MIT基金の保有銘柄一覧 — 資産の69%を占めるクーパン株は、上場前の直接共同投資だった

手法
Form 13F-HRの保有明細をそのまま集計。推定・按分・時価の再計算はしていません(N=8銘柄)
一次資料
SEC EDGAR Form 13F-HR

マサチューセッツ工科大学(MIT)の基金運用を担うMIT Investment Management Company(MITIMCo)が米SECに提出した最新のForm 13Fで、保有資産の69.1%を単一銘柄が占めていることが判明しました。韓国発のeコマース最大手クーパン(Coupang)です。この保有は「いまクーパン株を新しく買った」という話ではありません。MITIMCoでダイレクト投資(共同投資)を率いるRyan Akkina氏自身がポッドキャストで明かしたところによれば、これは2021年3月の上場より前にMITIMCoが行った約1.2億ドル規模の直接共同投資が転換されたもの——同氏いわく、7〜8倍のリターンを生んだMITIMCoの代表的な成功例の一つです。

この四半期の要点:新規に加わったのはNVIDIA($41.5万)・Intel($32.1万)・Bank of America($31.3万)の3銘柄ですが、いずれも評価額はポートフォリオの0.1%にも満たない小口です。全売却はゼロ。最大の変化はクーパンの保有株数が1,923万611株→2,913万611株へ+51.5%増加したこと(評価額は$3.63億→$5.06億)。Carvanaも株数が578,300株→2,891,500株へ急増していますが、これは2026年5月7日実施の5対1株式分割によるもので、MITが買い増したわけではありません(分割調整後の評価額の伸びは+4.7%)。純増$1.56億の97%以上はクーパンとCarvanaの評価額増加だけで説明できます。

数値はSEC EDGARの公開データ(2026年6月30日時点、8月11日提出分)に基づきます。

MIT(マサチューセッツ工科大学)のグレートドームを題材にした装飾イラスト(記事の判断材料ではなく雰囲気画像)
13F報告資産
$7.33億
前期比+27.0%
保有銘柄数
8銘柄
上位1銘柄(クーパン)で69.1%
提出日
2026/8/11
対象:2026年Q2(6/30時点)
次回更新目安
2026年11月中旬
Q3 2026分の提出後

Evidence Card

この記事の検証条件を1か所にまとめました。再検証・引用にどうぞ。

対象
Massachusetts Institute of Technology(CIK 0000351051、基金運用の実務はMIT Investment Management Company=MITIMCoが担当)の米国株保有全銘柄
期間
2026年Q2(2026年6月30日時点、8月11日提出)
手法
Form 13F-HRの保有明細をそのまま集計。推定・按分・時価の再計算はしていません(N=8銘柄)
更新トリガー
四半期ごと(提出期限は四半期末から45日)。次回目安2026年11月中旬
データ
出典:SEC EDGAR Form 13F-HR(CIK 0000351051)。米国政府著作物としてpublic domainです。
ID
IVYXON Evidence #0018
最終更新
2026年8月19日
作成者
IVYXON
レビュー状況
編集部確認
01 · THE REVEAL

なぜクーパン1銘柄で資産の69%を占めるのか

クーパンは2021年3月11日、NYSEに「CPNG」のティッカーで上場しました。公開価格は1株$35——想定レンジ$32〜34を上回る水準です。初日は寄り付きで$63.50まで買われ、終値は+40%の$49.25、時価総額は$844.7億に達しました(IPO時点の想定評価額は$621億)。韓国発のeコマース最大手として、当時全米最大級のIPOの一つでした。

MITは2026年6月30日時点で2,913万611株、評価額にして$5.06億のクーパン株を保有していたことが、8月11日の13F提出で判明しました。この比率はMITの13F開示ポートフォリオ全体($7.33億)の69.1%——単一銘柄として突出した規模です。これは「MITがクーパン社そのものの69%を握っている」という意味ではなく、あくまでMITの13F開示分の中でクーパンが占める比率である点に注意してください。

なぜここまで集中しているのか。MITIMCoでダイレクト投資(共同投資)を率いるRyan Akkina氏(Global Investment Team所属)は、2024年1月28日配信のポッドキャスト「The Twenty Minute VC」(Harry Stebbings氏の番組)で、その経緯を語っています。

MITIMCoの直接共同投資(direct co-investment)の代表例としてクーパンとRipplingの名を挙げ、クーパンについては約1.2億ドルの投資で7〜8倍のリターンを得たと説明——MITIMCoにとって成功した大型ベットの一つとして紹介しています。

— The Twenty Minute VC「How MIT Selects Venture Managers to Invest in...with Ryan Akkina @ MIT」(2024年1月28日配信)

この数字はSEC提出書類上の開示ではなく、ポッドキャストでの発言が出典です。金額・倍率とも一次資料(13F等)では裏取りできないため、確度は中程度として扱ってください。ただしSEC EDGARの13F提出履歴自体が、この「上場前からの保有」という説明と整合する動きを示しています。MITの13FにクーパンがCoupangとして初めて現れるのは2021年12月31日時点の報告(保有株数1,619万8,116株)——クーパンが同年3月11日に上場した後、最初に到来した四半期末です。13Fの開示対象は米国上場株式・ETF等に限定されるため、非公開企業の株式を保有していても四半期開示には一切現れません。IPOという「開示の扉」が開いた瞬間に、非公開時代からのポジションが姿を現した形です。

株数の推移を追うと、さらに裏付けが見えてきます。2022年12月31日時点で2,870万3,675株となって以降、2025年3月31日まで10四半期連続でこの株数は一切変化していません(評価額だけがクーパンの株価変動に応じて$4.22億〜$7.05億の間で上下)。積極的な買い増しはせず、転換された株をそのまま持ち続けていたとみられる強い状態証拠です。2025年半ばから後半にかけては株数を段階的に約3分の1圧縮(2,870万株→2,308万株→1,923万株)——含み益の一部利益確定とみられます。そして直近の2026年6月末には再び1,923万株→2,913万株へ急増していますが、この増加分の理由は公開データからは特定できません(追加の共同投資枠の現物分配、あるいは新規購入等が考えられますが未確認です)。

02 · TOP HOLDINGS

保有銘柄一覧(8銘柄・ポートフォリオ比率順)

銘柄ティッカー比率評価額
クーパンCPNG69.06%$5.06億
CarvanaCVNA25.98%$1.90億
Boston OmahaBOC4.55%$0.33億
TextronTXT0.20%$146.8万
Americas Car-MartCRMT0.06%$46.7万
NVIDIANVDA0.06%$41.5万
IntelINTC0.04%$32.1万
Bank of AmericaBAC0.04%$31.3万

上位2銘柄(クーパン・Carvana)だけでポートフォリオの95.0%を占めます。残る6銘柄はいずれも評価額$150万未満——8銘柄という開示件数の少なさもあり、MITの13F開示は「多数の銘柄に分散した株式運用」というより「数個の大型ポジション+小口の見本程度の残り」という構成です。

03 · CONCENTRATION

保有比率(円グラフ・全8銘柄)

$7.33億
13F資産
クーパン69.06%
Carvana25.98%
Boston Omaha4.55%
Textron0.20%
Americas Car-Mart0.06%
NVIDIA0.06%
Intel0.04%
Bank of America0.04%

クーパンとCarvanaの2銘柄で円グラフの95%を占め、残り6銘柄はほぼ視認できない厚みです。バフェット(Apple 22.0%)やハーバード基金(SpaceX 51.8%)のような「集中投資」とも性質が異なります——この2銘柄はいずれも、上場前の直接投資(クーパン)や大型株の株価上昇(Carvana)が結果的に押し上げた比率であり、13F上で新たに選び直された組み合わせではありません。

04 · THE TRADES

今四半期の動き

新規購入

全売却

主な増減

Carvanaの株数急増(578,300株→2,891,500株)は、2026年5月7日実施の5対1株式分割によるものです(578,300×5=2,891,500と一致)。MITが新たに買い増したわけではなく、分割調整後の実質的な評価額の伸びは+4.7%にとどまります。純増額$1.56億のうち、クーパンの評価額増加(+$1.43億)とCarvanaの株価上昇分(+$851万)だけで97%以上を説明できます。Americas Car-Martは株数不変のまま評価額が−78.1%——MITが売却したのではなく、同社株価自体が下落したことを反映しています(ポートフォリオに占める比率は0.06%と小口です)。

05 · THE FILER

MIT Investment Management Company(MITIMCo)とは

MIT Investment Management Company(MITIMCo)は1977年、マサチューセッツ工科大学の基金・退職年金資産等を一括運用するために設立された、大学出資の別組織です。現在のPresident(社長)はSeth Alexander氏——2006年就任です。同氏はイェール大学基金でDavid Swensen氏(オルタナティブ資産への広範な分散投資で知られる「イェール・モデル」の創始者)の下で運用に携わった経歴を持ちます。ハーバード大学基金(HMC)の運用哲学もしばしば「イェール・モデルに類似したアプローチ」と説明される点で、両基金は同じ源流を持つと言えます。

直近(2025年6月30日締めのFY2025)のMITIMCo運用基金は$274億——前年から+11.4%増加し、2021年度に記録した過去最高水準に並びました。同年度の投資運用リターンは+14.8%(MIT公式発表)。運用成績は長期でも安定しており、過去15年の年率リターンは11.7%——Cambridge Associatesの大学基金ユニバースの中で上位1%に入る水準です。

クーパンへの投資自体も、MITIMCoの通常のパブリックエクイティ運用(上場株の売買)とは異なるチャネルから生まれたものでした。MITIMCoでダイレクト投資を率いるRyan Akkina氏によれば、これは未上場段階の企業に直接出資する「直接共同投資(direct co-investment)」の一環——クーパンとRipplingが、その代表的な成功例として名指しされています。

06 · THE GAP

13Fで見えているのは、基金全体のごく一部

ここで強調しておきたいのは、13Fで見えているのはMITIMCoが運用する基金全体のごく一部でしかない、という点です。13Fの開示対象は米国上場株式・ETF等に限定され、MITIMCoが運用資産の大部分を振り向けているとみられるヘッジファンド・プライベートエクイティ・ベンチャーキャピタル・不動産・天然資源等のオルタナティブ資産は対象外です。

$7.33億 13Fで開示されている米国上場株式・ETF等(2026年6月30日時点)
$274億 MITIMCo運用基金総額(直近公表のFY2025・2025年6月30日時点)
約2.7% 単純に割った参考値(基準日が1年ズレている点に注意)

2026年6月30日時点(今回の13Fの基準日)の公式な基金総額はまだ公表されていません(例年10月頃公表)。基準日のズレを踏まえた上での参考値として、13F開示額$7.33億をFY2025時点の基金総額$274億で割ると約2.7%——同じ計算をハーバード大学基金(HMC)で行うと約7.5%になるため、MITの方が「13Fで見えない部分」の比率がさらに大きいことになります。MITIMCoの具体的な資産配分比率(プライベートエクイティ・ヘッジファンド等の内訳)は、同社自身が公開する一次資料では確認できませんでした。ただし同社の投資哲学と、クーパン株自体が「直接共同投資」という13F本来の想定外のチャネルから生まれた経緯を踏まえると、基金の大部分はSECの13F制度が光を当てない場所で運用されていると考えられます。

⚠ 留意点・リスク

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本記事は米SEC(証券取引委員会)に公開提出されたForm 13Fデータ、MITIMCo公式サイト、The Twenty Minute VC(ポッドキャスト)等を基に、当サイトが整理した一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入・売却を推奨・勧誘するものではありません。記載内容の正確性には万全を期していますが保証するものではなく、作成時点のものであり今後変更される場合があります。投資に関する最終判断はご自身の責任で行ってください。

出典:SEC EDGAR Form 13F-HR(CIK 0000351051、提出日2026年8月11日)、MITIMCo公式サイト(mitimco.org)、The Twenty Minute VC「How MIT Selects Venture Managers to Invest in...with Ryan Akkina @ MIT」(2024年1月28日配信)、MIT News「MIT releases financials and endowment figures for 2025」。