POLICY COLUMN ・ DISASTER RISK GOVERNANCE
台風「上陸ゼロ」の茨城は、備えも手薄だったのか — 建築基準・保険・防災計画を一次資料で検証
編集部・最終更新 2026年8月12日
2026年8月11日20時頃、台風15号が茨城県南部に上陸しました。気象庁によれば、1951年の統計開始以来、同県への台風上陸は今回が初めてです。「これまで一度も直撃されなかった県は、それだけ備えも手薄だったのではないか」という素朴な疑問を、建築基準法・火災保険料率・防災計画という3つの制度の一次資料で検証しました。答えは、思ったより一様ではありませんでした。
本記事は、気象庁・国土交通省・損害保険料率算出機構(GIROJ)・茨城県・岩手県・沖縄県・IPCCが公開する一次資料を基に、当サイト編集部が整理したものです。日付・数値は2026年8月12日時点。
36m/s
茨城県内の建築基準・最大風速(鹿嶋市など、今回の上陸地点を含むエリア)。上陸回数全国3位・25回の和歌山県(全域一律34m/s)を上回る
1951→2026
気象庁の上陸統計の起点から75年目、茨城県への上陸は2026年8月11日が初めて
0件
茨城県地域防災計画(令和8年3月改定、上陸のわずか5か月前の最新版)に、気象庁の「上陸」という統計用語への言及
01 · THE DEFINITION
まず整理 — 台風の「上陸」とは何か
気象庁の予報用語集は、台風に関する3つの状態を区別しています。「上陸」は台風の中心が北海道・本州・四国・九州の海岸に達した場合、「通過」は小さな島や半島を短時間で横切って再び海上に出る場合、「接近」は中心が国内の気象官署から300km以内に入った場合を指します。
ニュース解説などでは「陸地を25km以上通れば上陸、15km未満なら通過」という具体的な距離基準がしばしば語られますが、気象庁の予報用語集・予報官向け解説資料のいずれにもこの数値は見当たりませんでした。本記事では、この一次資料で確認できる定性的な定義(海岸に達したかどうか)のみを前提とします。
この定義の帰結として、日本で最も台風の被害が多い沖縄は、統計上の上陸回数が定義上ゼロになります(9番で詳述)。つまり「上陸」という統計は、台風そのものの脅威度を直接測るものではなく、あくまで気象庁が定めた技術的な区分にすぎません。
02 · WHAT HAPPENED
2026年8月11日、何が起きたか
台風15号(チャンホン)は8月11日20時頃、茨城県南部(鹿嶋市付近)に上陸しました。20時45分時点の気象庁発表では、中心気圧980hPa、中心付近の最大風速25m/s、最大瞬間風速35m/s。台風はその後も勢力を保ったまま西南西へ進み、22時時点では柏市付近、中心気圧990hPa、最大風速23m/s、進行速度は時速30kmでした。
気象庁によれば、1951年の統計開始以来、茨城県への台風上陸は今回が初めてです。北の高気圧に進路を塞がれ、その南縁を回る東風に乗って異例の西進をしたことが直接の要因とされています。
なお、本記事の執筆時点(上陸から約16時間後の2026年8月12日)では、上記の数値はすべて速報値です。気象庁の「過去の台風資料」ページで確定値として反映されているのは2026年の台風第3号までで、台風15号の確定値はまだ収録されていません。後述する都道府県別上陸数ランキング(4番)も2026年第4号までの集計にとどまり、今回の茨城上陸はまだ反映されていません。
03 · BUILDING CODE
建築基準法は「上陸回数」を根拠にしているか
最初に検証したのは、建物の風に対する強さを定める建築基準法施行令第87条の「基準風速(V0)」です。平成12年建設省告示第1454号により、V0は市町村単位で30〜46m/sの範囲で定められています。
算出根拠は、1929〜1991年の63年間の観測記録を対象にした日本風工学会強風マップ研究会の手法で、地点ごとに観測された年最大風速を極値統計により「50年に1度の確率で発生する風速(50年再現期待値)」に変換したものです。台風が何回上陸したかではなく、その地点で実際に観測された最大風速の統計的推定値が根拠になっています。
実際の数値を比較すると、直感に反する結果が出ました。
FIG. 01 — 基準風速(V0)と台風上陸回数の比較
図: 都道府県別の建築基準法・基準風速(V0)と台風の上陸回数(1951〜2026年、気象庁公式ランキング)の比較。上陸回数で全国3位(25回)の和歌山県より、今回まで上陸ゼロだった茨城県の一部エリア(鹿嶋市など)の方が基準風速は高い。出典: 平成12年建設省告示第1454号、気象庁「上陸数」ランキング。
上陸回数で全国3位(25回)の和歌山県は、全域一律34m/s。一方、今回まで上陸ゼロだった茨城県は、鹿嶋市など今回の上陸地点を含むエリアで36m/sと、和歌山県の値を上回ります。上陸回数と基準風速は、単純には比例していません。
高知県(上陸26回、全国2位)や鹿児島県(上陸45回、全国1位)がそれぞれ最大40m/s・46m/sと際立って高いのは事実ですが、これも「上陸が多いから底上げされた」というより、室戸岬(高知)や奄美(鹿児島)という特定地点の過去の観測記録の高さが、その市町村だけの数値を押し上げている構造によるものです。実際、2000年の建築基準法改正前の速度圧基準は、1961年の第2室戸台風で室戸岬において記録された、高さ15mでの推定最大瞬間風速約63m/s(観測装置が60m/sを観測後に故障したための推定値)が、そのまま基準の根拠になっていました。
つまり建築基準法は「県として何回台風が来たか」ではなく、「地点として過去にどれだけ強い風が実際に吹いたか」を見ています。上陸回数ゼロの県が、上陸回数上位の県より高い基準風速を持つことは、この設計上、十分に起こりうることでした。
04 · FLOOD INSURANCE
火災保険の「水災」料率は上陸回数と関係あるか
次に確認したのは、火災保険の参考純率を算出する損害保険料率算出機構(GIROJ)の水災料率です。GIROJは2023年6月の改定で、水災料率を市区町村単位で5段階に細分化しました。
算出の基礎データは、国土交通省が河川の氾濫シミュレーションをもとに作成する「洪水浸水想定区域図」(洪水ハザードマップ)です。内水氾濫・土砂災害には別途、水害統計や地形データを用います。台風の上陸実績・頻度は、水災料率の算出要素として明示的には使われていません。
つまり、ある地域の水災リスクが高いか低いかは、「台風が何回上陸したか」ではなく「その土地が浸水しやすい地形かどうか」で決まります。上陸ゼロだった茨城県南部も、この基準では他の地域と同列に評価されてきたことになります。
05 · WIND INSURANCE MODEL
火災保険の「風災」モデルは上陸回数をどう使っているか
水災とは対照的に、風災を担うGIROJの独自「台風リスク評価モデル」には、過去の上陸実績がより直接的な形で組み込まれています。
このモデルは2段階構成です。第1段階は「既往台風シミュレーション」で、過去に日本を襲った台風を現在の日本に再来させて被害を分析します。第2段階は「台風モンテカルロシミュレーション」で、第1段階の分析から確率分布を推定し、そこから乱数を用いて仮想的な台風を数万年分、反復発生させます。この過程で、台風の中心気圧の低下量や最大旋衡風速半径といったパラメータが「上陸エリア別」の確率分布として推定されています——つまり、過去にどこに上陸してきたかというデータは、たしかにモデルの入力になっています。
ただし、これは「上陸実績ゼロだからリスクもゼロ」という単純な扱いではありません。GIROJ自身、この技術資料の中で「自然災害は発生頻度が何十年、何百年に一度となるものがあり、これまでに観測・蓄積されたデータ量では必ずしも十分とはいえない」と説明しており、モンテカルロ法を採用する理由そのものが、「実際にはまだ起きていないが、物理的には起こりうる事象」を確率的に捕捉するためだとしています。さらに、気候変動リスク情報創生プログラムやIPCCの気候モデル6種を用いた+1.5℃・+2℃・+4℃のシナリオ分析も、すでにこのモデルに反映されています。
3つの制度を並べると、答えが割れる。水災は地形、建築基準は観測風速——どちらも上陸回数を見ていない。
GIROJ「機構の台風リスク評価モデル」等の一次資料より、当サイトの整理
風災保険だけが上陸位置をモデルの材料として使っていますが、それも「これまで無かったから今後も無い」と単純に外挿する設計にはなっていません。
06 · IBARAKI'S OWN PLAN
茨城県自身は、上陸ゼロをどう認識してきたか
制度の話から離れて、茨城県自身の防災計画がこの「上陸ゼロ」という事実をどう扱ってきたかを確認しました。参照したのは、今回の上陸のわずか5か月前、2026年3月に改定されたばかりの最新版「茨城県地域防災計画(風水害等対策計画編)」です。
計画の気候特性に関する記述は、次のように述べています。
本県は太平洋に接し、気候は温和で気象災害は他府県に比べて少ないほうである。(中略)風速は20m/sを超えることは極めて少なく、風による直接の被害はほとんどない。(中略)台風の中心が通過することは比較的少ない。(中略)本県の被害は他府県に比べて少ないほうである。
茨城県地域防災計画・風水害等対策計画編(令和8年3月改定)より
計画にはまた、昭和16年(1941年)以降の主要な台風被害を一覧化した詳細な年表がありますが、そこに記載された数十件はいずれも、千葉・東京湾・伊豆半島・静岡・神奈川・愛知・高知(室戸岬)など県外に上陸した台風が、その後本県を通過・横断した事例であり、「茨城県に上陸した」という記載は一件も確認できませんでした。
一方で、気象庁が定める「上陸」という技術的な統計区分そのものへの言及や、「本県は上陸実績がない」という事実を名指しした記述は、計画の全文を検索した限り見当たりませんでした。つまり茨城県の防災計画は、「台風の中心が来ることは少ない県」という、より緩やかな自己認識を数十年単位で持ち続けてきたとは言えますが、それはJMAの統計上の「上陸ゼロ」を直接の根拠にしたものではありません。「統計上のゼロを根拠に安全と判断していた」という強い主張は、少なくとも防災計画の記述からは裏付けられませんでした。
07 · THE IWATE PRECEDENT
先例 — 2016年、岩手県の「観測史上初」
今回の茨城のケースには、10年前に前例があります。2016年8月30日18時前頃、台風10号(Lionrock)が岩手県大船渡市付近に上陸しました。気象庁は事後、2017年7月26日発表の「気候変動監視レポート2016」で、これを「統計開始以来初めて東北地方太平洋側から上陸した台風」と公式に位置づけています。
被害は甚大でした。岩手県の集計(2016年9月30日時点)によれば、死者20名・行方不明3名、住家全壊379棟・半壊2,120棟・一部損壊509棟・床上浸水147棟・床下浸水890棟、被害総額は1,400億円を超え、うち土木施設等の被害だけで2,768箇所・876億6,798万円にのぼりました。
事後、岩手県は小本川・安家川などで堤防整備や河道掘削といった河川改修を実施しています。2024年8月、同程度の豪雨をもたらした台風5号が同地域を襲った際には、改修が終わった区間で住家浸水被害が発生しなかったという比較結果が複数の報道で確認できました。
ただし今回の調査では、確認できなかったことも2つあります。一つは、岩手県の地域防災計画が「統計開始以来初めての上陸」という事実を明示的な教訓として記述を改訂した証拠。もう一つは、東北太平洋側を対象にした火災保険の風災・水災料率が、この2016年の前例を理由に見直された、あるいはGIROJの台風リスク評価モデルの「上陸エリア区分」が2016年以降に東北太平洋側を新設・変更したという事実です。河川というハード面の実務対応は確認できましたが、制度・料率という面への明示的な反映は、今回の調査の範囲では確認できませんでした。
08 · THE OKINAWA PARADOX
対照例 — 沖縄、上陸ゼロなのに最も警戒されている理由
「上陸」という統計区分の限界を最も分かりやすく示すのが沖縄県です。2番で触れた通り、気象庁の定義上、沖縄本島は「本州・四国・九州」のいずれでもないため、台風がどれだけ直撃しても統計上の上陸回数は定義上ゼロになります。
だが沖縄県自身の防災広報(土木建築部海岸防災課)は、この「上陸」という語をそもそも使っていません。公式ページによれば、年平均27個発生する台風のうち、沖縄への平均接近数は7.6個(最多は8月)。1966年9月の「第2宮古島台風」では最大瞬間風速85.3m/s(当時の気象庁観測史上最大)を記録し、1999年の台風18号、本島を2度横断して30時間迷走した2001年の台風16号でも大きな被害が出ています。沖縄県の総括はこうです。
沖縄の災害の原因のほとんどは台風による暴風で、台風と県民の暮らしは密接につながっているといえます。(中略)決して侮らず、上手につきあわなければならない存在だといえます。
沖縄県・土木建築部海岸防災課「台風による被害」より
つまり、沖縄県自身の実務的なリスク認識は、「上陸」という定義上の空白にはそもそも依拠しておらず、「接近数」と実際の被害史で語られています。統計上の空白が、当事者の防災対応そのものにギャップを生んでいるわけではないという点は、今回の茨城のケースを考える上でも参考になります。
09 · THE CLIMATE VARIABLE
気候変動という新しい変数
最後に、この「上陸実績」という前提そのものが、気候変動によって揺らぎつつあるのかを確認しました。
気象庁が2025年5月に公表した最新の「日本の気候変動2025」によれば、台風の発生数・日本への接近数そのものに長期的な変化傾向は確認できていません。ただし、過去40年で太平洋側に接近する台風が増えているとする研究(Yamaguchi and Maeda, 2020、気象学会誌掲載の査読論文)があり、日本付近の台風が最大強度に達する緯度は北へ移動しているとIPCC(2021)は指摘しています。将来予測としては、個々の台風の強度が強まり、台風に伴う降水量も増加すると見込まれています。
IPCCの第6次評価報告書(AR6)第1作業部会・第11章はさらに踏み込み、北西太平洋において熱帯低気圧が最大強度に達する緯度が1940年代以降、極方向(北)へ移動していることは「ほぼ確実」、内部変動だけでは説明できない「検出可能」な変化だとしています。一方で、将来の台風の「進路」そのものの予測については、気候モデル間の一致度が低く、専門家の間でコンセンサスは確立していません。
これらの知見は、「これまで上陸してこなかった地域でも今後リスクが高まりうる」という方向性とは整合します。ただし「上陸実績のなかった地域が今後危険になる」と名指しで述べた気象庁・IPCCの一次資料は、今回の調査では見つかりませんでした。この推論は、あくまで「強度最大緯度の北上」「太平洋側接近の増加」という観測知見からの論理的な接続であり、気象庁・IPCC自身がそう断定しているわけではないことは区別しておきたいところです。
10 · THE PATTERN
当サイトの整理
ここまでを整理すると、「上陸したことがない県は備えも手薄だった」という直感的な仮説は、制度によって答えが割れる、というのが実像に近いと言えます。
建築基準法の基準風速は、上陸回数ではなく地点ごとの観測史上の風速統計で決まっており、上陸ゼロだった茨城県の一部エリア(36m/s)が、上陸25回の和歌山県(34m/s)を上回るという、直感に反する逆転が実際に起きています。火災保険の水災料率も同様に、上陸実績ではなくハザードマップという別の基準で決まっています。唯一、火災保険の風災を担うGIROJの独自シミュレーションモデルだけが、過去の上陸位置をモデルの入力データとして使っていますが、そこでも「上陸ゼロ=リスクゼロ」という単純な二値判断ではなく、数万年分の仮想台風を確率的に生成する設計によって、前例のない事象もあらかじめ織り込む作りになっていました。
そして茨城県自身の防災計画は、「台風の中心が来ることは少ない」という緩やかな自己認識こそ持っていましたが、それはJMAの「上陸」という統計区分を直接の根拠にしたものではなく、10年前の岩手県の前例でも、河川改修という実務対応はあったものの、防災計画や保険料率への明示的な反映までは確認できませんでした。
「上陸したことがない」という統計は、防災の設計図というより、後から振り返って驚くための数字に近かった。
本記事の結論
11 · WHAT IT MEANS FOR INVESTORS
投資家への含意
本記事は、特定の銘柄や資産配分の売買を推奨・勧誘するものではありません。その上で、間接的に参考になりそうな視点を2つ挙げておきます。
一つは、損害保険株(東京海上ホールディングス・MS&ADインシュアランスグループホールディングス・SOMPOホールディングスなど)の決算・料率改定のニュースを読む視点です。GIROJの参考純率は各社が自社の保険料率を決める際の目安になりますが、その根拠は「今年は台風が多かった・少なかった」という単年の上陸実績ではなく、ハザードマップや数万年分のモンテカルロシミュレーションという、もっと長い時間軸のモデルに基づいています。単年の台風の多寡だけで損保株の先行きを判断するのは、この記事で見た制度設計とは噛み合いません。
もう一つは、「これまで無事だった」という実績は、将来の安全を保証しないという、より一般的な教訓です。茨城県の建築基準・防災計画が示すように、「観測史上初」という前例のなさは、リスクがゼロだったことの証明ではなく、単に確率的にまだ顕在化していなかっただけ、というケースが実際に存在します。個別企業のリスク評価でも、過去に大きな事故や不祥事が無いことと、リスク管理そのものが優れていることは、必ずしもイコールではありません。
⚠ 留意点
- 「1951年以来初」という事実は複数の報道機関が気象庁発表として一致して報じていますが、気象庁自身が発信した専用のプレスリリースそのものは、本記事執筆時点(上陸から約16時間後)では確認できませんでした。2016年岩手のケースでは、気象庁自身による遡及確認レポートが事後11か月で公表されており、茨城についても今後同様の確定報告が出る可能性があります。
- 台風15号の上陸時刻・気圧・風速などの数値はすべて速報値です。気象庁の確定値としての反映はまだされていません(2026年8月12日時点で確定値は2026年台風第3号まで)。
- 気象庁の都道府県別上陸数ランキングは上位10位までの表であり、47都道府県の完全な一覧ではありません。集計期間も2026年第4号までで、今回の茨城上陸は反映されていません。
- 「陸地を25km以上で上陸、15km未満で通過」という巷でよく紹介される距離基準は、気象庁の一次資料(予報用語集等)には見当たりませんでした。
- 「これまで上陸してこなかった地域で今後リスクが高まる」という趣旨は、気象庁・IPCCの知見からの当サイトの論理的な推論であり、気象庁・IPCC自身がそう明言した一次資料ではありません。
- 2016年岩手県の先例について、地域防災計画の記述変更や保険料率への明示的な反映を裏付ける一次資料は確認できませんでした。
- 本記事は特定の保険商品・金融商品・不動産の売買を推奨・勧誘するものではありません。
FAQ
台風の「上陸」とはどう定義されているのですか。「通過」「接近」とは何が違うのですか。
気象庁の予報用語集による定義では、「上陸」は台風の中心が北海道・本州・四国・九州の海岸に達した場合、「通過」は小さな島や半島を短時間で横切って再び海上に出る場合、「接近」は中心が国内の気象官署から300km以内に入った場合を指します。ニュース解説でよく紹介される「陸地を25km以上で上陸」といった具体的な距離基準は、気象庁の一次資料には見当たりませんでした。
茨城県への台風上陸は、本当に観測史上初めてなのですか。
気象庁の発表として、複数の報道機関が「1951年の統計開始以来初めて」と一致して報じています。ただし本記事執筆時点(上陸から約16時間後)では、気象庁自身が発信した専用のプレスリリースは確認できておらず、上陸時刻・気圧などの数値もすべて速報値です。2016年の岩手県のケースでは、気象庁自身による遡及確認レポートが事後11か月で公表されており、茨城についても今後、同様の確定報告が出る可能性があります。
「上陸実績がない」ことは、保険料や建築基準に影響しているのですか。
制度によって答えが割れます。建築基準法の基準風速は上陸回数ではなく地点ごとの観測史上の風速統計が根拠で、上陸ゼロだった茨城県の一部エリア(36m/s)が上陸25回の和歌山県(34m/s)を上回るという逆転が実際に起きています。火災保険の水災料率も、上陸実績ではなく洪水ハザードマップが基準です。唯一、火災保険の風災を担う損害保険料率算出機構の独自シミュレーションモデルだけが、過去の上陸位置をモデルの入力データとして使っていますが、それも「上陸ゼロ=リスクゼロ」という単純な扱いではなく、数万年分の仮想台風を確率的に生成する設計の一部です。
沖縄の「上陸回数ゼロ」はどういうことですか。台風が来ないという意味ですか。
逆です。沖縄は日本で最も台風の影響を受ける地域ですが、気象庁の「上陸」の定義が北海道・本州・四国・九州に限定されているため、沖縄本島を台風が直撃しても統計上は「通過」扱いとなり、上陸回数は定義上ゼロになります。ただし沖縄県自身の防災広報は「上陸」という語を使わず、「接近数」(年平均7.6個)と実際の被害史でリスクを説明しており、この定義上の空白が実務上のリスク認識に影響しているわけではありません。
本記事は気象庁・国土交通省・損害保険料率算出機構(GIROJ)・茨城県・岩手県・沖縄県・IPCC等が公開する一次資料を基に当サイトが整理した一般的な情報提供を目的としており、特定の保険商品・金融商品・不動産の購入・売却を推奨・勧誘するものではありません。検証結果は公開時点の資料に基づくものであり、記載内容は作成時点のものです。台風15号に関する数値は速報値であり、気象庁の確定値公表後に変更される可能性があります。最終的な投資判断・防災判断はご自身の責任で行ってください。
出典: 気象庁、国土交通省、損害保険料率算出機構(GIROJ)、茨城県、岩手県、沖縄県、IPCC、ウェザーニュース(2026年8月12日時点)。